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ホラー小説『悪口ばかり言っていると、呪われるよ』

作者: 虫松
掲載日:2026/09/15

挿絵(By みてみん)

人を呪わば穴二つ。


昔の人は、よく言ったものだ。


誰かを傷つけるために吐いた言葉は、その人だけに届くわけじゃない。


その言葉を最初に聞いているのは、自分自身だから。


「キモい」


「消えろ」


「才能ない」


「辞めれば」


匿名だから大丈夫。


顔も名前も知られない。


そう思って、今日もスマホに悪口を書き込む。


一つ


二つ


三つ


本人が傷ついたかどうかなんて知らない。


でも、確実に傷ついているものがあった。


自分の心だ。


悪口を一つ書くたび、心に小さな黒い点ができる。


最初は見えない。


本人にも気づかない。


けれど毎日、誰かを馬鹿にして、笑って、怒って、憎んでいるうちに


黒い心の点は増えていく。


やがてそれは、


心のカビになる。


カビは静かに広がる。


楽しいものを見ても、欠点を探すようになる。


誰かが成功すれば、妬むようになる。


誰かが幸せなら、壊したくなる。


誰かが笑っていれば、


「どうせ裏がある」


と思うようになる。


いつの間にか世界中が、嫌いな人間だらけになる。


でも、本当に世界が汚れたのだろうか。


違う。


汚れてしまったのは


世界を見る、自分の心だった。


そして、ある日気づく。


スマホの画面に映っている自分の顔が、


知らない人間のようになっていることに。


その顔が笑って言う。


「次は誰の悪口を書く?」


怖くなってスマホを伏せる。


それでも聞こえる。


「もっと書こうよ」


「もっと嫌いになろうよ」


「もっと怒ろうよ」


それは誰かの呪いではない。


自分が何年もかけて育てた、


自分自身の声だった。


人を呪わば穴二つ。


誰かを落とそうとして掘った穴の隣には、

最初からもう一つ、


自分のための穴がある。


だから


匿名で悪口を書こうとしているあなたへ。


送信ボタンを押す前に、


一度だけ、自分の言葉を読み返してほしい。


その言葉は、


相手の心に入る前に、


あなたの心を通っている。


悪口ばかり言っていると、


呪われるよ。


誰かにではなく


自分の言葉に。


ホラー小説『悪口ばかり言っていると、呪われるよ』


完結

漫画化しました。

https://rookie.shonenjump.com/series/TWpXKpYG8xU/TWpXKpYs_hM

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