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五感
ラムネを味わっていた。
甘く酸っぱい味が口の中に広がった。あなたとの思い出の味がした。
線香花火を見ていた。
淡く、弾けてしまった様子があなたの姿に似ていた。
風の匂いがした。
野原を駆け巡るあなたのように、一瞬として走り去っていった。
チェロの音を聞いていた。
セロ弾きのゴーシュに憧れ始めたあなたの、どこか拙い音を。
ただ一つ、あなたを触れられなかった。
実感は無くても後ろに憑いているのは知っていた。
その五感は胸へしまい、私はあなたの元へと目指す。
午前3:27 空き部屋となったマンションの一角。
星になった人。




