最終章 年金3万でも、猫と畑とネットがあれば世界は広がる件
最終話は、
猫が主役……かもしれません。
村も、私も、少しだけ未来に向かいます。
ある朝。
玄関に貼り紙があった。
【お知らせ】NHKの取材が来ます。
日時:あさって午前10時
内容:猫と人が共生する“田舎の奇跡”について
「……えっ?」
佐藤くんが走ってきた。
「まさこさん!
猫と畑と千里さんのことが、バズりました!」
「なんで!?
畑でじゃがいも掘ってるだけよ!?」
「“猫と老女が黙って畑で共生してるだけの動画”が、音無しで50万回再生されました!」
「なんで音無し!?」
「“無音で心が癒される”って評判なんです!」
そして、当日。
「こんにちは〜!
NHKの〇〇です。
本日は“猫が地域をつなぐ”というテーマで……」
「え、猫が主役なのね」
「はい、“まさこさんは脇役”として扱わせていただきます」
「堂々と言うんじゃないわよ!」
インタビュー中──
「このコウメちゃんという猫が、地域にどんな影響を?」
「そうですね……。
一匹の猫に生活乗っ取られて、気づけばSNSの“顔”になってましたね」
「まさこさんご自身は、今の生活に満足してますか?」
「満足っていうか、“諦めの美学”に達しましたね。
年金3万しかないし」
「それは大変ですね」
「でも、畑で芽が出たとき、“まだ生きてていいんだ”って思ったのよ」
カメラマンが少しだけ泣いた。
数日後──
放送されたNHKの特集は、思わぬ形で拡散された。
【SNS上のコメント】
「これが、令和の理想郷だと思った」
「課金じゃなくて“土”に癒されてるの最高」
「猫が人間を導いてるって設定がファンタジーすぎる」
「“年金3万から人生再構築”って、逆に夢ある」
「なんか涙出た」
「あのまさこさんに会いに行きたい」
「推しに疲れたら、まさこの村行こうかな」
「“Wi-Fiは風向き次第”で吹いた」
フォロワー数0だった村の観光協会アカウントは、1週間で10万人を超えた。
千里さんは言った。
「まさか……“猫と推しの墓場”で人生バズるとは……」
「ねぇ、それタイトルにしようか」
ある日。
知らない若者が、畑に立っていた。
「……ここが、あの猫のいる畑ですか?」
「ええ、入場無料よ。
でもじゃがいもには触らないでね」
「SNSで見て、何か希望が湧いたんです。
俺、都会で心病んでて……。
でも、猫が耕してる動画で、何か救われて……」
「コウメ、あんたそんな力あったの?」
コウメは、さも当然とばかりに爪を研いだ。
その後、まさこの村には、ぽつぽつと若い人が移住してきた。
“癒されたい”
“働きすぎた”
“なんかもう疲れた”
──理由は様々だ。
そして彼らは、猫のいる畑で黙々と土をいじり、
まさこと千里と一緒に、じゃがいもを掘るようになった。
「ねぇ、私たち……。
今、けっこう主役じゃない?」
「いや、主役は猫よ」
「うん、それでいい」
日が暮れる。
畑の影が長く伸びる。
年金は相変わらず3万ちょっと。
猫は相変わらずしゃべらない。
でも、誰かの心を動かした“静かな奇跡”が、確かにここにはある。
そして今日も、どこかで誰かが言う。
「コウメのいる村、行ってみたい」
==完==
誰にも期待されていなかった私が、
ちょっとだけ誰かの役に立てた気がします。
そして猫は、今日も好き勝手に生きてます。
読んでくださって本当にありがとうございました。
第二章があるとしたら……
その時はまた、お会いしましょう!
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ここまで読んでくださってありがとうございました。
ご感想はありがたく拝読しますが、個別の返信は控えさせていただきます。




