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最終話 あなたの幸せの中に  

 静かな夕暮れのリビングで、母が愛用していた座椅子に腰を下ろしています。薄暗くなり始めた部屋には、暖かいオレンジ色の夕日が差し込み、長い影を作り出しています。彼女の目の前には、長年の人生の証が詰まった棚があり、その中には愛する父・翔一と母・春子の写真が並んでいます。病弱だった二人ですが、母が95歳まで、父が90歳まで人生を全うしました。その笑顔が、まるで遠い昔の暖かい日々を思い出させます。


 靖子は定年退職後、都心にある高級マンションを売却し、両親が「終の住処」として気に入っていたアパートに引っ越しました。このアパートには、両親が晩年を過ごした多くの思い出があります。


 アパートは静かな住宅街にあり、四季折々の自然が感じられる環境に恵まれていました。朝は、小学校に通う子どもたちの「おはようございます」という元気な挨拶の声が響きます。目の前の広々とした公園では、朝はラジオ体操が行われ、10時になるとゲートボールが始まり、おばあちゃんやおじいちゃんたちが仲良くお互いを労い合いながら楽しんでいます。夕方になると、ちびっ子たちが野球やサッカーに興じ、カラスが夕焼けに染まると静かな公園へと戻ります。


季節ごとの変化も、このアパートの魅力の一つです。秋にはポプラ並木が美しく色づき、冬の朝には雪がしんしんと降り積もり、一面が銀世界になります。雪だるまを作る子どもたちの笑い声が響き、暖かな陽射しが雪をキラキラと輝かせます。夜には、街灯の光が雪に反射し、幻想的な光景が広がります。


春には桜が咲き誇り、淡いピンク色の花びらが風に舞い踊ります。梅の木や夏みかんの木には実がなり、それを近所の人々が集まって収穫します。収穫の時期になると、近所の人たちは籠を持ち寄り、和気あいあいとした雰囲気の中で実を摘み取ります。子どもたちは小さな手で一生懸命に実を収穫し、お年寄りたちはその様子を微笑ましく見守ります。


収穫された梅は広げられた網の上に並べられ、太陽の光をいっぱいに浴びて乾かされます。礼文島の海辺に広がる昆布の天日干しと同じように、軒下や庭先には梅の実が隙間なく並べられ、風に揺れる様子がどこか懐かしい光景を作り出しています。


 靖子は棚の中から、父の翔一が丹精込めて作った一冊の古びたアルバムを引っ張り出しました。表紙は擦り切れており、ページの隅々には時の流れを感じさせる黄ばみがあります。ページをめくると、ルート66、グランドキャニオン、北海道一周、四国、広島、九州、鳥取砂丘など、旅先での若かりし日の春子と翔一の笑顔溢れる写真が、まるで昨日の出来事のように感じられます。


「本当にお父さんとお母さんは愛する人と楽しい人生を過ごしたわね。それが私の誇り、それが私の幸せよ」と呟きながら、自分の真新しい秘密のアルバムを手に取りました。そこには、若い頃に親しくしていた優作の写真が収められていました。


 優作は彼女にとって特別な存在であり、画家としての才能を持ち、情熱的で自由な彼は、まるで春の風のように靖子の心に暖かさをもたらしていました。彼の目はいつも何かを探し求めるように輝き、彼の笑顔は心の奥深くまで届くものでした。


アートギャラリーを巡り、カフェで絵について語り合い、互いの夢や希望を共有する日々を送っていました。優作がキャンバスに向かって筆を走らせる姿は、靖子にとって至福のひとときの光景でした。


そんな中、他の女性と親密な関係になり、優作は一気に全てを失いました。そんな姿になっても、献身的に支えていましたが、支えれば支えるほど優作は無気力に陥っていきます。このまま一緒に暮らしていては、お互いが不幸になるのではないかという思いが強まり、心に深い痛みを抱えながらも、彼の幸せを願って別れを選びました。その後、靖子は事務を主な業務とする一般職から、男女で扱いに差のない業務範囲が同じの女性がなりにくい総合職へと昇進、昇格していきました。


 時が経ち、あの時のことを振り返ると、それは単なる綺麗事だったのではないか、自分の心を誤魔化していたのではないか、自分が傷つくのを恐れていたのではないか、自分にはない「華やかさ」や「華々しさ」を持つ魅力的な女性に夢中になった優作を許せなかったのではないか、嫉妬や怒りが沸き起こっていたのではないか、「あなたの幸せの中に」という一番大切にしていた心が崩壊していくのを感じたからではないか、素直でない自分が嫌になったのではないか、そんなことを感じるようになっています。優作が今、どこで何をしているのか、どんな人生を送っているのか、全くわからないことが、今でも彼女の心に漠然とした不安をもたらしています。



 優作の帰りを待ち侘びていた父の一茂は、85歳でこの世を去りました。窓辺に座り、遠くを見つめながら、秋子との思い出が詰まったこの家で季節の移ろいを感じ、亡くなる日まで希望に満ちていました。しかし、希望と共にあった家は次第に空き家から廃墟へと変わり果て、秋子と一茂、そして優作との思い出のアルバムや記憶も廃墟の中に埋もれてしまいました。庭先の柿の木と桜の木も、一茂が亡くなると後を追うかのように枯れてしまいました。


所有者の一茂が亡くなると、管理が行き届かなくなり屋根や床は崩れ、近隣住民からの対処要望が相次ぐようになってしまいました。

市は相続人調査を行いましたが、相続人を見つけることができず、略式代執行が決定され、家は解体されることになりました。解体された家は、単なる建物ではなく、多くの思い出が詰まった場所でした。この解体は、一茂と秋子の生活の終わりを象徴し、彼らの人生と記憶が消え去る瞬間でもありました。家が提供していた温もりや愛情の痕跡が失われ、その消失には深い悲しみと虚しさが漂っています。

解体された家の跡地には、過去の温かい記憶が消え去った空虚さが残っています。家がもたらしていた愛情や暖かさはもはや存在せず、ただの空き地となってしまいました。しかし、この跡地には新たな建物が建ち、新しい何かが生まれることで、消えた過去の一部が新たな形で生まれ変わり、未来へと繋がる可能性があります。古い家の跡地には、未来に向けた新たな希望が広がっています。

 靖子はゆっくりと立ち上がり、アルバムを棚に戻しました。静かなリビングの中で、過去の思い出が心に温かく響いています。彼女はこれからの時間をどう過ごすかを決めるわけではなく、ただ優作との思い出に感謝しながら、穏やかな微笑みを浮かべて夕暮れの中に溶け込んでいきました。



 ある日のこと、特別番組「ポツリとした山奥!誰が住んでいる一軒家」が放送されていました。レポーターが人里離れた場所を駆け巡り、野を越え、山を登り、ついにある一軒家にたどり着きました。その家は周囲の自然に溶け込むように静かに佇んでいて、風に揺れる木々の音が画面越しに心地よく響きました。


「どうしてここで暮らしているのですか?」とインタビュアーが尋ねました。カメラのレンズ越しに、住人の姿が映し出されました。彼の頭の毛は風になびくままに自然に伸びていましたが、髭だけはきちんと剃られていました。

「好きだからです」

「頭の毛はすごいことになっていますが、髭だけは綺麗に剃っているのですね」とインタビュアーが言いながら、住人の顔に目を凝らしました。

「昔の話なんだけど、髭を剃らないでいると、鏡の前にそっと剃刀を置いてくれた人がいてね。その名残で剃らないではいられなくなって」その言葉には、過去の思い出が柔らかく滲んでいました。

「どこかでお目にかかったような気がするんですが」

「私と?」

「はい、そうです」

「会っていないよ。だってその頃あなたは生まれていないと思うから」

「他人の空似ですかね」

「そうだと思いますよ」


 なんということでしょう、そのインタビューに応えているのが、靖子が探し続けていた優作だったのです。いや、靖子だけではありませんでした。「あなたの幸せの中に」の絵画がオークションで信じられない値段がついていましたので、画廊のオーナーたちも必死で優作を探していたのです。


 優作の姿はどこから見ても山男そのもので、画家時代の面影はほとんどありませんでした。彼の服装は古びたジャケットにボロボロのズボン、顔は日焼けしていて、自然と一体化しているかのようでした。放送終了後、テレビ局には電話が殺到しました。受話器を持つスタッフは驚きの表情を浮かべ、急いでメモを取っていました。「今の人は画家で有名になった尾崎優作だ。その山はどこだ?」と、次々に問い合わせが寄せられたのです。電話のベルが鳴り止まず、画面越しに映る優作の姿が、まるで謎の山の神のように神秘的に映っていました。



「靖子、テレビ観てる?」

「観てないわ」

「すぐ観て。優作さんが出てるの。どこかの山奥にいるらしいわ。今、世間は大騒ぎよ」


靖子が急いでテレビをつけると、そこには懐かしい優作の姿が映っていました。年老いてはいましたが、間違いなく優作でした。


「あら、あの山は宮城山だわ。家族でキャンプに行った山だから、間違いないわ」と靖子は驚きながらも感慨深げにつぶやきました。灯台下暗しだったのです。



 靖子は70歳、優作は73歳になっていました。長い年月が流れていたのです。優作は一人で暮らしていましたが、その生活には愛が溢れていました。人里離れた山奥で、靖子以外誰も愛せないような環境を自ら作り上げていたのでした。


優作は自分の弱さ、特に誘惑に対する脆さを自覚していました。涙目で訴えられるとつい心を動かされ、抱きしめてしまう優しい性格の持ち主です。その優しさが誤解を招くこともありましたが、山奥にいると誘惑が少なく、その影響を受けることもありませんでした。


 優作が山奥でテレビに映ったことがきっかけで、靖子は彼を再び見つけました。優作の山奥の生活を知った靖子は、昔の思い出を胸に、山に向かいました。


山道を進む靖子の胸は高鳴っていました。父と母と一緒に幾度も通った宮城山の道でしたが、今回は違っていました。目的地には、かつて愛した人がいる。その思いだけが彼女を突き動かし、野を越え、山を登り、向かいました。


 愛する人が目の前に立っていました。毛髪は乱れていますが、髭は綺麗に剃り上げている優作です。


「優作!」靖子は声を張り上げました。


優作はその声に驚き、振り返りました。目を見開き、信じられない表情で靖子を見つめました。彼の顔に浮かぶ驚きと混乱が、長い間の空白を物語っていました。


「靖子…?」


二人の間に長い沈黙が流れました。まるで時が止まったかのように、静寂の中で時間が一瞬止まったかのようでした。


「こんなところで何をしているの?」靖子は涙を浮かべながら、震える声で問いかけました。彼女の声には、切望と哀しみが入り混じっていました。


「靖子…お前に会えるとは思ってもみなかった。どうしてここに?」優作は感情を押し殺しながらも、驚きと喜びの入り混じった声で答えました。


「あなたを探していたの。ずっと。あなたがいなくなってから、何もかもが空虚だった。もう一度会いたかった。あなたと一緒にいたかった」と靖子は言葉を詰まらせながら、彼の顔を見つめました。


優作はゆっくりと靖子に歩み寄り、その手を優しく握りました。「私も靖子を愛している。ずっと。それだけが私の支えだった」と彼は言い、深い愛情を込めた眼差しで彼女を見つめました。


二人はその場で抱き合い、長い間の別れがようやく終わりを迎えた瞬間、心が再び一つになりました。周囲の自然が、二人の再会を祝福するかのように、穏やかな風が吹き抜けていました。


 山にいる間、優作は自然の美しさや鹿、熊、猪の優しい一面を描き続けていました。その数は何百枚にも上ります。山で描いた優作の絵画はどれも数億円の価値があると称され、個展は各地で盛大に開催されました。瞬く間に再び一世風靡を果たしますが、その会場には優作の姿はありませんでした。もう「人気」という「人の気」に溺れることはありませんでした。


幸せな再出発を果たした優作と靖子は、再び一緒に生活を始めます。二人は翔一と春子が「終の住処」としたアパートで静かに暮らしています。朝は散歩に出かけ、ラジオ体操をし、健康ランドの温泉でリフレッシュし、その日に食べる食材の買い物をします。そして、週に一度は日高屋で、醤油ラーメンセットの半チャーハンと3個の餃子が付いたセットメニューを楽しみます。昔ながらの味が二人の絆をさらに深めていました。


 今日は小春日和です。優作と靖子は、春には桜が咲き、秋にはポプラが舞う墓地公園のお墓の前にブルーシートを敷き、靖子の手作り弁当を食べています。ここには優作の父、一茂と母の秋子が眠っているのです。


実は優作は何度か、一茂と秋子が夢を膨らませて建てた新居を訪れたことがあります。しかし、幸せそうな両親の姿を目の当たりにすると、どうしても「ただいま」と声をかけることができませんでした。自分の落ちぶれた姿を見せればどんなことをしてでも助けてくれると思ったからです。そんなことはさせたくありませんでした。今の二人の幸せを壊したくなかったからです。


虫の知らせというべきか、母の危篤を知り、再び家を訪れました。その時、襖越しに母の願いの言葉を聞いてしまいました。「お父さんと二人だけで過ごしたい。誰にも邪魔されずに。」その母の願いを尊重し、家を後にしました。それ以来、二人の世界を邪魔してはいけないと思い、訪れることはありませんでした。



 優作は深い決意を胸に抱いていました。「山に恩返しをしたい。」靖子が答えました。「それはいい考えだわ。私も大賛成よ。あなたの命を繋ぎ止めてくれた鹿や猪、熊たちに感謝の気持ちを込めて、その山を救ってあげましょう。」


二人はその山を買い取り、動物たちが自然のままに自由に生きていけるようにと、山をそのままの姿で、優作の手によって自然公園として生まれ変わらせました。木々は昔のままの姿でそびえ立ち、風が葉を揺らす音が心地よく響きます。清らかな川が流れ、山の中腹には野生の鹿や猪、熊たちが豊かな自然の中でのびのびと生きることができるようになりました。


そして、心からの感謝の気持ちを込めて、この自然公園を市に寄付しました。この山は自然と共生する場所となり、優作の誠実な恩返しの証となりました。山の息吹と共に生きる動物たちの幸せな姿が、優作の心に深い満足感をもたらしています。



 道の先に広がる山並みや川の流れ、緑豊かな田園風景がすべて新しい発見となり、心に深く残ります。車内のラジオからはジャズが流れ、時間がゆっくりと過ぎていく様子は、目の前の景色と同じくらい美しく穏やかです。


白いワンボックスのレンタカーが法定速度を守りながら静かに道路を進んでいます。リアウィンドウには高齢者ステッカーが貼られていて、その慎重な運転ぶりからも、ステッカーが示す通りのドライバーが乗っていることがわかります。車内には優作と靖子が座っており、穏やかなドライブを楽しんでいます。


優作はハンドルを握り、穏やかな表情を浮かべています。靖子は助手席に座り、窓の外を流れる風景を楽しんでいます。彼らの旅は、靖子の両親が行ったアメリカ大陸横断のような壮大なものではありませんが、日本国内を車中泊しながら、自分たちなりの冒険を楽しんでいます。朝4時に起きて布団をたたみ、車内を清掃した後、コンビニで弁当と味噌汁を買い、靖子はパンとコーヒーを楽しみながら、美味しい朝食をいただき、そして1日が始まります。


日本には道の駅に隣接している天然温泉がたくさんあります。温泉好きの優作と靖子は、旅先で温泉を見つけると、のんびりと過ごすのが楽しみです。


「夏は稚内、春は九州へ行こうね」

「うん、楽しみだね」


竜飛岬を後にして国道101号線を南下していると、「どう?あそこに『不老不死の温泉』の看板があるけど、行ってみる?」

「いいねえ、行ってみよう」

「あら、バスから降りてくる人たち、私たちより年上みたいね。不老不死って本当にいいのかしら。私は不老不死は嫌いよ。延々と生き続けるのは疲れるわ。生も歓喜、死も歓喜がいいわ。限りがあるから人生にメリハリがあると思うわ」

「そうだね、私も同感だよ。でも、とにかく早く受付を済ませようよ。」


 今日は朝から雨です。男鹿半島の道の駅で待機していましたが、この雨では半島巡りができません。諦めて国道7号線を日本海を眺めながら南下し、由利本荘へと向かいました。「あら、海沿いに温泉があるわ」と靖子が言いました。


温泉にゆっくりと浸かり、心地よい湯気とともに体を温め、サウナで汗を流し、ジャクジーで筋肉を和らげ、露天風呂からは日本海の景色を眺めてリラックスします。靖子は3時間も出てきません。その間、優作は休憩室で冷たいビールを飲んで待っています。「ああ、いい湯だったわ」と言ってすっきりした顔で靖子がやってきました。

「ずるい、一人で飲んでたのね」それからまたビールで「乾杯!」です。心地よい酔いです。畳の上で横になり、本を読んでいると眠くなり、昼寝をしました。温泉の後のリラックスしたひとときは、二人にとって最高の贅沢です。


飲酒運転は禁物です。何もかも破壊してしまいます。一滴でも飲んだらハンドルは握りません。飲酒運転で人生を棒に振りたくはありません。何よりも他人に怪我を負わせたら一生後悔します。


温泉疲れも出てきました。それにお腹も減っています。今日はここで車中泊することにしました。


 海鮮丼でも食べようと外に出ると、「なんだこれ?」と驚きました。駐車場は満車になっています。島式漁港公園にも人だかりができ、屋台が並んでいました。「これから日本海をバックに、道川漁港から花火が打ち上げられるのよ」と、浴衣姿の若いカップルが教えてくれました。何も知らずに温泉に浸かり、何も知らずに悠々と駐車し、何も知らずに外に出ると、花火大会が始まるとはなんとラッキーなことでしょう。それにしてもすごい光景です。まだまだ人が集まってきています。


 周囲が暗くなり、主催者の挨拶も終わりました。これから、花火が夜空に打ち上げられます。


どどーんと胸に響く音とともに、大輪の花火が一瞬で空一面に広がります。その光景は壮大で圧倒的な迫力を持っています。花火が打ち上がるたびに、夜空が鮮やかに染まり、赤、青、緑、金色の色合いが炎のように広がります。まるで生きた絵画のように次々と変化する色彩のパレットが、見る者を圧倒します。


それぞれの花火は、夜空をキャンバスに見立てた芸術作品のようです。大きな花火が咲き誇り、その鮮やかな色彩が空に広がると、歓声とともに人々の心が震えます。音と光が一体となり、感動の波が押し寄せるような体験です。花火が次々に打ち上げられるたびに、その迫力と美しさに圧倒され、全身が震えるほどの感動を覚えます。


夜空に浮かぶ花火に心を奪われた優作と靖子は、肩を寄せ合いながら目を輝かせて見つめていました。花火の明かりが二人の顔を柔らかく照らし、彼らの目には感動と幸福が溢れています。二人は肩を寄せ合いながら、その美しい光景を見つめ続けました。


「綺麗で迫力満点だったわね。」

「そうだなあ。それもこれも、男鹿半島が大雨だったからだ。」

「何言ってるのよ。大雨を嘆いていたくせに。はい、冷たいビールをどうぞ。」

「乾杯!」


 寝るのも早いが起きるのも早い。外が薄く明るくなるのに合わせ二人は目を覚ます。日本海の波の音だけが聞こえている。昨夜の慌ただしさが嘘のようです。


 海に延びる橋を渡り、ワイングラス型の漁港へ海風を頬に受けて散歩します。こんなに朝が早いというのに、もう釣り人が竿を海に向けていました。


「気持ちいい朝だ」

「そうね、本当に気持ちがいいわ。今日も暑くなるのでしょうね」

「もうエアコンなしでは寝れないね。その点、稚内は良かった。涼しくて」

「涼しさを通り越して肌寒かったわね」

「靖子、悔いのない人生を送ろうな」

「そうね、優作さん。これからは素直な私で生きていくからね」


 人生の道のりには様々な試練や曲折がありますが、それらを受け入れ、自然の美しさと共に歩むことの大切さを実感しています。優作と靖子は過去の出来事や経験を美化することなく、ありのままの自分たちを受け入れながら、心からの幸せを見つけることができました。


 二人は新たなスタートを切ろうとしています。優作は一時的に画家として成功を収め、憧れの女優との関係がきっかけで靖子と別れましたが、その後の空虚さに気付き、靖子の存在の大きさを改めて理解しました。一方、靖子も優作との過去を乗り越え、自分の道を歩む決意を固めています。


 優作の両親、一茂と秋子、そして靖子の両親、翔一と春子は既に他界していますが、その教えや思い出は二人の心に深く根付いています。両親たちが残した教訓は、過去の痛みを乗り越え、新たな人生を歩むための自己発見と成長を助けました。


その姿こそが「あなたの幸せの中に」あると感じています。そして、そんな日々を迎えられたことに深く感謝し、新たな心の旅へと向かう決意を新たにしています。これからも自然体で過ごしながら、優作と靖子は人生の美しい瞬間を楽しんでいくことでしょう。

読者の皆さまへ


最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。この物語を通じて、優作と靖子の旅や冒険にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


皆さまの応援と支えがあってこそ、この物語を完結することができました。物語の中で彼らと共に過ごした時間が、皆さまにとっても心温まるひとときとなったことを願っています。


今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。


感謝の気持ちを込めて、

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