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シャーロットは今
惚れ惚れするほど綺麗な満月が、高校と部屋に灯りを運んでいる。夜風に当たりあの日を思い出しながらワインを味わうシャーロットは、黒い短剣を手に取った。
吸い込まれそうなほどの漆黒。光沢を放つそれは、初めてできた友人との繋がりの証だ。
この剣は闇でできているため錆もしないが、シャーロットは毎晩丁寧に手入れをしていた。今もハンカチで優しく包み込み誇りを祓うように磨いている。
そんなお気に入りの短剣が、突如音もなく形を崩した。
「え……」
光沢は艶を失いスライムのようにドロドロに溶け、机に染み込むようにして消えた。短剣が置かれていた場所には何一つ残っていない。
「行かなきゃ」
「お嬢様?」
「リリー、僕の服を用意して」
こんな夜更けに一人娘がどこに出かけるというのか。人攫いに遭い奴隷となったリリーは一言かけようとしたが、シャーロットの真剣な眼差しを受け即座に身を引いた。
「かしこまりました」
シャーロットの頼みを承ったリリーは粛々と着替えの用意をする。薄手のネグリジェから象徴的な金縁の白い騎士服へ。皺一つないよく整えられた衣装を着こなしたシャーロットは、ピシリと背を伸ばしリリーと目を合わせた。
「行ってきます」
「どうかご無事で」
準備を終えたシャーロットは一言だけ残し、転移の魔法を発動した。




