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作戦会議

 見るからに落ち込んでいるシャーロットにウトは優しく声をかける。


「諦めるのは早いぞ」

「え?」

「奴隷の売買記録がどこかにある」

「でも、見せられないって、」

「忍び込むんだよ」


 自信に満ちたウトの声に、シャーロットは怪訝に目を細める。


「なんでそんなに楽しそうなの」

「面白そうなことは、やってみないと損だろ」

「オグマは、今を楽しむ人なんだね」

「理解できないか?」

「いや、僕も同じタイプ!」


 アリエであれば呆れるところ、まさか肯定されると思わなかったウトは思わず笑い声を上げた。


「それじゃあ、準備を始めるぞ」


 シャーロットが決意を固めるのを見届け、ウトは悪戯好きな童のように邪悪に口角を歪めた。



 それからウトは宿泊施設にてシャーロットの近くに部屋を借りた。そのままウトの部屋にて、作戦会議が開かれる。


「まずは内部の地図が必要だ。壁にある案内を基準に、従業員専用の通路や通気口に至るまで。詳細に把握する必要がある」

「どうやってやる? こう見えても僕はかなり魔法が使えるんだけど」

「考えがある」


 ウトは自身の部屋で一枚の紙を広げた。かなり大きめのもので、両手をわずかに広げて机に置く。


「闇コガネ、この施設を隅から隅まで調べ上げろ」


 ウトはいつものように闇色のコガネムシを足元から呼び出した。無数の闇コガネがウトの部屋から音もなく飛び出し方々に散っていく。


「それって、闇魔法!?」


 ウトの魔法を眺めていたシャーロットは、目をまん丸にして輝かせ、身を乗り出してウトに詰め寄る。


「文献で読んだことはあったけど、実際に見るのは初めてだよ! 本当に使える人がいたんだ」


 感動した様子のシャーロットは「もっと見せて」とせがむが、闇コガネからの情報を処理しているウトは、「ちょっと待て」と片手で制する。

 ウトの目となり耳となる闇コガネが、施設のあらゆるところに入り込む。その景色、距離をウトは頭の中で見取り図に変換する。そして、その見取り図を目の前の紙に闇魔法で転写していく。


「すご……なにこれ」


 その様子を瞬きせずに凝視していたシャーロットは、既存の魔法とは毛色が違う闇魔法に驚嘆する。


「広すぎて、一筋縄じゃいかないな」


 闇コガネを走らせ十分程経った頃、ウトは闇魔法は止めずに呟いた。


「ちょっと時間がかかりそうだから、怪しまれない程度に遊びつつ、並行して地図を作る」

「なるほど」

「地図ができるまでの間は、この施設を見つつ手掛かりを探そう」

「ごめんね、任せっぱなしで」

「俺が言い出したことだから気にするな」


 話しながらも徐々に地図が広げられていく。それを一瞥して、ウトはシャーロットを部屋から連れ出す。

 サンレイブの夜は意外にも早い。日中の間に十分楽しみ、夜は翌日の準備が行われる。そのため、地図作りに夢中になっているとあっという間にその日が終わってしまう。全ての施設が閉まるわけではないが、目玉の奴隷売り場などは早々に閉鎖されてしまう。


「こういう目的のないリンチは好きじゃないんだが、今はこの場に溶け込もう。シャルは大丈夫か?」

「僕も苦手。奴隷に酷い扱いをするのは見ていて気持ちがいいものじゃないけど、それは覚悟して来てるから!」

「そうか」


 胸の前で両の拳を握るシャーロットは、強く決心した目でウトを見つめた。それを受けたウトも必要以上に干渉することはなく、意思を尊重し奴隷市へと戻ることにした。


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