夜襲
ルイスがユーバンクの館にやってきた日の夜、警戒し館の周囲に意識を向けていたルイスは、異変を感じ飛び跳ねるように立ち上がった。ユーバンクにかけた魔法は発動していない。しかし、何か悍ましく強大な力が屋敷を囲んでいるように感じ、咄嗟にユーバンクの寝室に駆け入る。
「光よ!」
ルイスは魔法で光の玉を作り出した。スイカほどの大きさを持つ光球は、部屋の中を隅々まで照らす。寝台の影や机の影ができるが、部屋に充満していた闇は強い光によって隅に追いやられた。
「ど、どうしました。殿下」
「嫌な予感がする。伯爵、しっかりと起きてください」
「は、はい!」
ルイスに起こされたユーバンクは屋敷を取り囲む異変に気づかず、寝ぼけ眼で応対したが、言葉に若干の剣が宿るルイスの気に当てられ、一瞬で意識を起こされたようで、寝台から飛び降りルイスの近くに身を寄せる。
「襲撃ですか?」
「まだわからない。だけど、とても嫌な予感がするんだ──っ!?」
ルイスが答えた直後、寝台の下から闇色の影が飛び出した。先端が尖った影はユーバンクの背中目掛け一直線に進んでいる。
「はぁっ!」
影が刺さる直前。ルイスは剣を抜き、ユーバンクの体を手前に引きながら影を弾いた。剣によって防がれた闇は、役目を失い溶けるように消えていく。
「伯爵、影には近づかないように」
ルイスは言いながら、自身とユーバンクに魔法をかける。光の魔法が二人の体を包み、人間電灯とでも呼ぶべきか、二人の体が淡く発光する。
「これで足元に影はできません」
「なんて繊細な魔力操作。それに魔力量も尋常じゃない……」
ルイスの力量に慄くユーバンクだが、傍にいるルイスはそれどころではない。第二、第三の刃が連続で二人を襲う。
「ここは狭すぎる。外に出ます!」
「のわぁっ!?」
部屋の中には物が多く、物の数だけ影が生まれている。距離も近く素早い影の動きにいずれついていけなくなる。
部屋の中で剣を振り回すルイスは、不利な状況を打開するため、ユーバンクを抱え窓から飛び出した。ガラスと共に屋敷の前庭に着地しユーバンクを地面に降ろす。
庭に遮蔽物はなく、ルイスの光球が周囲を広く照らし半径三〇メートルの空間を強い光が支配する。いかに素早い影の刃といえど、これだけ距離が開けばルイスに対処できないはずがない。
「姿を現せ、闇魔法の使い手よ! 貴様の手は封じた!」
戦闘の中で敵の位置を見つけ出したルイスは、屋敷の上を睨みながら声を発する。ルイスが小さな光球を屋根上目掛けて飛ばすと、襲撃者の姿が二人の前に晒された。
吸い込まれそうなほどに暗い闇色の外套を羽織った襲撃者。光がなければ夜の闇に完全に紛れてしまうほどに黒い。




