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瓦礫の章
さて。
時計に限らず、吹っ飛んで壊れる物は全て壊れていた。
軽いモノは壁に何度も叩きつけられたようになっていた。
重い冷蔵庫やテレビも全て倒れて違う場所にあった。
棚の食器や引き出しの中にあったモノまで例外なく全て飛んだ。
小さな棚の戸と、引き出しごと飛び去ってるから当然だ。
「理不尽、非日常」が「当たり前、当然」に変わっていく。
どの部屋も洗濯機の中のように回転が加わってシャッフルされたようだった。
勢いよく助走をつけて3〜5メートル先の壁に叩きつけても壊れない物以外はすべて瓦礫の一部だ。
その「モノ」が元は何であったかは、もはや不必要な情報になる。
等しく「ゴミ」と分類しなければならない。
そして、これらの「モノ」だけではなかった。
日常生活や生命活動を維持するために必要な命綱。
生命線を意味する「ライフライン」も全て失った。
「ライフライン」は1995年のこの時に産まれた言葉だ。
戦後未曾有の震災による惨状が失わせたモノ、それがこの概念を産み出した。