ガールズスタンドインスペース
しかし、地球からロウテリアに、どうやって行くんだ?2つの星に何光年の距離があるのかは知らないが。
「というか、私なんかを先輩の母星に連れてっていいんですか?」
「わりとオープンやで、そういうのに。永住権の獲得とかはそれなりに難しいけど、旅行に来た客人はみんな歓迎する」
「いい星ですね」
「まあな」
「次に不安なのは、お金について…そして言語ですが」
「金は私が出す。なるべく私のそばを離れんかったら大丈夫。で、言語やけど……心配ナシ!当日に教えてあげる」
「は、はあ」
それから、帰り道は完全に別なので分かれた。泊まりで遊ぶ予定だ。家族に教えた方がいいだろう。家では、母がリビングで洋ドラを見ていた。
「あ、ママン、今度の土曜日さ、友達と遊びに行ってくるね。泊まりだけどいい?」
「へー、どこ行ってくるの?」
「遊園地」
「どこの?」
どこの遊園地だと説明すればいいんだ?
「(ロウテリア星の遊園地だよ)。…ま、聞こえるわけないか」
「なに?」
「いや、ユニバ」
「あ、そう。いってらっしゃい。お金あげようか?」
「いや大丈夫。ありがとう」
6月17日土曜日午前4時。起床。電車で1時間と30分かけて、いつもウニ先輩が朝食と夕食をとっているマクドナルドにやってくる。先輩が来るまでまだ30分以上ある。…軽めに朝食を取ることにする。
「朝マックって何があるのかな…」
そういえば朝マックは、午前10時30分までやっているらしい。ロウテリア人の朝食時間がスタートするころだ。ロウテリア人が10時30分に朝食を注文すると、ギリギリ朝マックが食べれる訳である。さすがマクドナルド、世界にグローバルにとどまらず、宇宙にまでグローバルだとは。
とりあえず軽めのものを頼む。たぶん、あっちの星でも “朝食” を食べるだろうから。
…ホットケーキでいいか。
しばらくしていると、ウニ先輩が姿を見せた。
「それ朝食?」
ほぼ同時に、最後の一欠片を口へ放り込む。
「ふぁい、ほぉです。……ごちそうさま」
「じゃ行こーか」
「行くためにはどこに行くんです?」
「私の家〜」
15分。家と大学が近くて羨ましい。
なるほど、たまげた。ウニ先輩が一戸建てに住んでいることもそうだが…
「地下室なんてあるんですね…家に」
「ロウテリア人はみんな持ってるって」
「私の家にもほしいな」
「いや、星間移動しないんならいらんって」
先輩は笑いながら言った。
星間移動。すごい言葉だ。西暦20XX年現在…まあ2023年なんだけど、現在、星間移動という言葉を地球人が使うのは “地球-月” にだけだろう。そんな中、 “地球-ロウテリア” の星間移動が今、始まる。
「これで私も宇宙の旅を経験してしまうってことですね…」
「怖い?」
「別に」
「まあいずれ地球人も “思い付く” であろう技術やしな…」
地下へ続く階段は普通に木製のやつだった。こういうのってコンクリートとか鉄筋とかじゃなくていいんだ。たん、たん、と階段を降りてゆくと扉がある。これも木製。
「!」
地下室…そこには、ウニ先輩のLINEのアイコンのようなアダムスキータイプのUFOが…!…なかった。代わりにあったものは、
「じゃあこの中に入って〜」
「なんですかこれ。個室トイレ?」
個室トイレ…正確には、工事現場とかにある仮設トイレの大きい版みたいなのがあった。
「いろんな外見・いろんなタイプのワープマシンが販売されてきたんやけど、結局このタイプのが一番合理的で安全やねんね〜」
「安全なんですか?これ」
仮設トイレが如く、外の素材はプラスチックっぽかったが…安全なのか?これ。
「地球の最新型の飛行機よりも事故率はずっと低い!死者数は近2万年間でゼロ!ハイジャックの恐れナシ!」
ううむ。打率10割のプロ野球選手てな感じの究極さだ。私の家にも一台欲しいな、これ。“私の家-大学” 間の移動だけできればいいので、こういうの欲しい。
「疑って申し訳ありませんでした。では行きますか…!」
「待って待って、これ」
ウニ先輩はピンクのショルダーバッグから飴を取り出した。
「酔うんですか?」
「いや酔い止めじゃなくって!簡単に言うと…ほんやくコンニャク」
「あ、ああ!」
そういえばそうだった。言語の問題は当日に解決してくれると言っていたが、こういうことであったのか。
「じゃあいただきます」
ほんやくコンニャクというものを実現化・実用化しようと考えたら、飴の形態をとるのか。なるほど。
「まあ、ドラえもんのほんやくコンニャクほど万能じゃないけどな。それは服用者にロウテリア語を覚えさせる、という効果しかない。けど一度服用すれば永続的にロウテリア語は覚えられる。他の星の言葉バージョンもあり!」
「へえ…どういう原理なんだろ…」
呟くように言ったつもりだが、ウニ先輩はその声まで拾って、すかさず説明してくれた。
「普通の料理にも甘い辛い苦いっていう、味っていう情報があるやろ?その延長で、料理には知識も味付けさせることができるの。そんで、意識できないと思うけど、その飴を口の中で転がすとき、特定の転がし方で舐めてしまう。つい、な。その飴の転がった道筋が、発音方法・口の動かし方をも教えてくれるってワケ!」
「すご……」
つまりロウテリア語味の飴というわけだ。ぜひ、英語味の飴も作ってほしい。
「じゃ、行きますか!」
ウニ先輩が、仮設トイレ型ワープマシンの扉をあける。そこにトイレはなく、床には未知なる感触のマットレスが敷いてあり、中央にカラオケに置いてあるやつみたいなタブレットがポツリとあった。
「シンプルですね」
「ムダがないって言え。荷物はオッケー?」
「あ、はい」
一応、2ヶ月分くらいのお小遣いの入った財布と、学生証、スケッチブックと文房具、ペットボトルで水、あとプロテインバー…らを通学に使っているリュックに入れてきた。ただ服装はイモな女中学生みたいな地味なやつだ。ウニ先輩は半袖のチェックシャツ、紺のスカートっぽいズボンに、ピンクのショルダーバッグ。ずいぶん差がある。というか、普段こんなにオシャレじゃなかった気がする。
「じゃ、ポチッと」
先輩はそのカラオケにあるやつみたいなタブレットの電源をつけ、一回タッチした。
「…」
かろころと飴を転がす。星間移動というのは、どれくらい時間がかかるのだろうか。ワープマシンって言ってたくらいだし、一瞬か。というかワープマシンってどういう原理なのだ。今舐めてるこの飴ですらウルトラなテクノロジーが詰め込まれているのだ、ワープマシンともなるときっとウニ先輩に原理を説明してもらっても理解はできないだろう。
「着いた〜!行こ」
「一瞬…か。これもうそこの扉を開けるだけなんですか?」
「正解〜」
なんと、あっけない。ピテカントロプスになった気分だ。
扉を開けると、それはまた、部屋の中であった。ウニ先輩の、ロウテリアでの家…本来の家ということだ。ここもまた地下室だったので、階段で一階に出る。リビングには、用途の計り知れない変なものがちょこちょこ置いてあった。それらを脇目に、玄関にたどり着く。扉は(外見は少なくとも)木製であった。
先輩がドアノブに手をかける。
扉が、
今、
開く…。
太陽(の役割をここで担っている恒星)が眩しく輝いていた。逆光で、笑顔のウニ先輩は黒く染め上げられる。目がやられてちょっとの間、何も見えない。
「ようこそ!ロウテリアへ!」
それはロウテリア語だった。
ガリ、ゴリ、ボリ。
「…あっ、やばっ、先輩ごめんなさい。飴、噛み砕いちゃいました」
「いや大丈夫。飴を噛み砕くことで、ロウテリア語の学習は完了するから!」
私は、普段飴は最後まで舐め切るタイプの人間だったが、今回は無意識に噛み砕いていた。気付かぬうちに、噛み砕くように仕向けられていたのだ。あの飴玉の方が、人類の心理よりも何枚も上手だったということか…。
「…おはようございます、ウニ先輩」
「うん、おはよう、カネモ!流暢なロウテリア語やなあ!」
ウニ先輩の向こうには、ロウテリアという星の風景が広がっていた。
「いい景色ですね…」
「うん。地球に負けず劣らずな」
先輩はそういってくれてるが、地球人代表として、こう思う。ロウテリアは地球のそれよりずっといい景色だ。地球の負け、だ。
「変な形のビルが乱立してギラギラしてると思ってましたけど…」
「意外と緑が豊かやろ?ちなみに、ここが田舎やからってことじゃないで!」
すごい。文明の中に 自然があるのではない。自然の中に 文明が存在させてもらっている。そんな感じだ。ウニ先輩の家の他にも、誰かの家は立っている。ここが住宅街であることは間違いない。なのに自然はこうも豊かである。目線を落とすと、自分は芝生の上に立っているのだと気づく。芝生の上に街があるのか?
「…で、どうやって遊園地まで行くんですか?」
「空飛ぶ車で」
マジか。
「うはは…最高ですね、それ…!」
数秒すると、ゆっくりと天空から “それ” は現れた。ウニ先輩の家の2階ベランダあたりから静かにやって来たように思う。ステップカットの施されたトパーズのような、それ。間違いなく “空飛ぶ車” だ。
先輩は嬉しそうだ。
「空飛ぶ車…ガロカロ。ここよりも更に文明の進んでる遠い星の言葉に由来してる。その意味は…」
「長方形の宝石、ですか?」
「おおっ、さすが文系大学生!よー分かったなあ!」
文系大学生じゃなくたって思い付く。その姿を見ればだれでも思うことだ。それは…ガロカロは…まさしく、長方形の宝石だった。
「じゃ、乗るか〜!朝食はあっちで食べよ」
ガロカロの側面に、ウニ先輩が右の手の甲を近づける。すると鍵がアンロックされたような音がして、自動ドアよりもずっと滑らかに入口が生まれた。そこから中へ乗り込む。中はワゴン車みないな構造で、広さもワゴン車ほどある。キャンピングカーとしても使えそうな感じだった。
「マジックミラーみたいになってるんですね」
「んー、そうやな。じゃ、浮上するで」
そして浮上が開始した。エスカレーターよりもずっと早く上昇するのに、エスカレーターとは比べものにならないくらいにズンという感じの負荷は少ない。なめらかな動きだ。
「あ……。ああ」
やっと理解した。なぜこの星は緑が多いのか。道路がないからだ。車は空を飛ぶのだから、びっしりと道路を地面に敷く必要はない。環境を破壊する科学の先には、共存があったのか。変に感動してしまう。芝生を踏んで歩き、どっかに外出したければ空から緑を見下ろす。なんて美しい人々だろう。
「どうかしたか?」
「いえ…。あ、ところで…道路がなければ、空を飛ぶ車たちはどこを走ればいいか分からず、事故が起こっちゃうんじゃないですか?」
「ああ…。それは大丈夫。ホラ、」
ウニ先輩はガロカロの進行方向の壁を指差す。柑橘系の宝石のような透き通った壁は、一面が巨大のカーナビのようになっていた。自分たちの載っているガロカロがどう進むのかを示しているだけではなく、加えて、向こうからくるガロカロがどのくらいの高度でどのくらいの速度でどの方へ進もうとしているのかも表示されている。…バーチャルな道路を空に作ったのだ。
「すごい…」
当然のように自動運転らしく、ウニ先輩は乗客である自分と同じようにくつろいでいた。
「ちょっと空の旅でも楽しもうか。30分くらいで着くけどな」
驚くことばかりだ。
ガロカロは空をゆく。ものすごいスピードで風景が後ろへ流れてゆく。たまに、輝く宝石の弾丸のようなものとすれ違うが、それは他の人の乗っているガロカロなのだ。下を見ると一面が緑で、清々しい。
「理想郷みたいなとこですね…。なんでこんなところから、わざわざ地球とかいう辺境の地に来たんですか?」
「さあ…母さんがそうしてたから。私もいつの間にか、憧れるようになってたかんかなあ」
「へぇ、お母さんも地球に行ってたんですね」
「うん。ちなみに私たちの大学のOGにあたるよ」
「じゃ、ウニ先輩と同じ、医学部医学科の出身なんですか?」
「いや…カネモと同じところ」
「ええ!?それは意外な…。それじゃウニ先輩はなんで医学関係の道を進もうもうと思ったんですか?」
「それは……医者は年収高いから!どこも一緒や、それは!」
「ああ〜なるほど。ま、立派な理由だと思いますよ。…ん?というか医者なんですか?もう。まだ大学生じゃないんですか?」
「んん。簡単に言うと、ロウテリアで医者になるための研修まで終えてて、そこから現段階の地球に教えられる技術を教えるために、また地球の大学に入り直したわけやな」
ってことは、ウニ先輩は何歳なのだろう?というかロウテリア人の平均寿命は何歳くらいなのだ?10000歳とかいくのかな。大学(?)を終えたあとにまた大学に入り直すくらいには、時間・寿命に余裕があるのだろうか。
「まわりくどいんですね、ずいぶん」
「そういう規則やからね。…着いたで」
「お、おお…!ここが!」
大きなお店らしき建物がちらほらと草原の上に立っており、その中央に一際でかいところがある。それが遊園地であった。
駐車場らしきところにガロカロはゆっくりと降下してゆく。
「…って、人少ないですね。いや、多いけど、なんていうか平日の遊園地って感じだ」
「うん。当然だけど、地球とロウテリアでは、暦のシステムは違うからな〜。1日がほぼ24時間で1年が基本365日ってとこまでは同じやねんけど、1週間っていう単位がない。2日の平日のあと1日の休日。国によって前後するけど、そこに1年間に80日分くらいの祝日が休みの日としてプラスされる…って感じかな」
「つくづく理想郷みたいなところだ…」
受付みたいなところには人が立っていた。ロウテリア人ということになるのだろう。
「人なんだ……」
ボソッとつぶやく。
文明が進むと、テーマパークの受付などはロボットとかAIとかがやるようになるのかと思ったが。と思っていたことは、ウニ先輩にはお見通しだったらしい。
「ふふん。テーマパークの受付…ね。あるいはそれを含むサービス業全般。ずっと昔は一時期ロボットがやってたんやけど、やっぱ人の笑顔がいいねってことになって、また人がやるようになってんて」
「へ〜。そんな経緯が」
「学校で習ったんやけど、これを私が人に教える側に回るときがくるとはなあ」
なんかしみじみしてる。
受付のお姉さんがこちらを見て、にっこりと笑う。髪の毛は水色で、しかし派手ではない。天然モノの色素による水色髪なのだろうか。ウニ先輩の赤い髪を見る。
「本日はようこそお越しくださいました」
「あ、大人2人で」
「はい。本日、サービスデーで、
「そうやなあ、お願いします。」
なんだか遮るようにウニ先輩は言った。
サービスデー。何のサービスデー?…と思ったら、受付の近くの超文明的な電子看板に、ロウテリア語ででかでかと書いてある。
『本日、カップルデー』
チケットを受付のお姉さんからもらい、入場する。しばらく歩く。1分くらい黙って。
「…ウニ先輩、まさか私を連れてきたのは…」
「うぐ…そりゃそうか。もうロウテリア語読めるもんなあ。…正直すまんかった。遊園地側も平日は客少なくて儲からんって分かってるから、こうやってイベントデーにして客集めるんやけど、ここのカップルデーは料金めちゃくちゃ安いねん。その安さ、1組分2枚で、休日大人1枚よりも遥かに安い…!」
「まあ、いいですけど」
「そう?よかった〜」
というより、なんていうか、ウニ先輩と私は女同士なのに、なんなくカップル割の恩恵をもらえた。ジェンダー観も地球よりずっと進んでいるってことだろうか。でもこういう傾向は地球でも見られる。
「太陽がそれなりに昇ってきましたね」
「そうやな。朝飯行こ」
「何がありますか?」
「地球から輸入した料理も多いで。フレンチトーストとかハヤシライスとか」
「うーん、せっかくなのでロウテリアの料理を食べてみたいですね。地球人でも大丈夫なやつ」
「基本大丈夫。ロウテリア人も地球人も、毒は同じやからな。でもまあ慣れない料理をガッツリいくってわけにもいかんし、普通に地球の料理食べ。私のでよければロウテリア料理を頼んで味見させるから」
「それでお願いします」
今日の分の朝食はもう済ませてあるが、といってもマックのパンケーキだけなので、まだ腹には入る。余裕で。
おしゃれなファミリーレストランみたいなところに入る。テーマパーク内のレストランは安いのでも高いが、どうだろうか。
形容しがたいくらい見やすいデジタルメニュー表がある。なんと分かりやすい。
「うわっ…寿司からナポリタンまである。料理のジャンルが中華とかイタリアンとかじゃなくて地球で一括りにされてるのか」
「よりどりみどりやなあ。他の星から伝えられた料理だけで飽和しそうなくらいのラインナップがあるな」
確かに、聞きなれない(というか聞いたことのない)固有名詞がずらっと並んでいる。他の星の名前と、そこの料理というわけか。今日は食べるべきではないだろうし、地球料理に目を戻す。気づくことがある。
「…ハンバーガーはないんですね」
「!よくぞ気づいた!そう!ハンバーガーはないねん!!」
「うわびっくりした、どうしたんですか急に」
「いやな、ロウテリアは他の星の美味い料理をパクることに能動的なんやが、これがどうしてハンバーガーがない…!昔お母さんが地球からもって帰ったマクドを食べたときから私はもうずっと……」
「まさかそれで地球に…」
「いや!それが理由で地球に来たんではない!少なくとも、それが全ての理由ではない!…ただ、ロウテリアではハンバーガーが食えず、地球に行く他ないのも事実…」
「そんなストーリーが……ってまあどうでもいいですね。私このオムライスで。先輩決まりました?」
「え〜…ハンバーガーないから何を頼めばいいのか…」
「私に味見させるんですから、ロウテリアの名物料理にしてくださいよ」
「いやう〜ん…仕方ないなあ」
私は、ロウテリアの料理人が作ったオムライスを注文した。ウニ先輩は、ロウテリアで最もポピュラーな料理・ウルムクの鉄ウォート蒸しを注文。ウルムクはロウテリアの普遍的な魚で、鯛に似た感じの白身魚だった。ウォートは釜の一種らしく、中でも鉄製のはいいやつらしい。お互い口をつける前に、一口分ずつ交換しあった。
「うまっ…。き、極みだ……」
ウルムクの鉄ウォート蒸しは、ばかみたいに美味しかった。白身魚を使った料理の極致みたいな美味さだ。上にかかってる、世界一美味しい果物を使ったフルーツジャム、みたいなのは何なのだろう。辛さと酸っぱさが最も美しい割合で同居している。…この料理を注文すればよかった、と少し後悔した。
「このオムライスもなかなかいけるなあ。まあ基本、どれ食っても美味しいと思うけど」
「もっとこういう、美味しくてかつ健康によさそうなもの食べた方がいいですよ。ハンバーガーばっかじゃなくて」
「いや、マクドのバーガーはレタス入ってるから!」
レタス1枚分で保証される健康など、程度が知れていると思うが…。
ウニ先輩がスプーン一杯分の穴を開けていったオムライスに、今度は自分のスプーンを突き刺す。ふわふわの卵の中はケチャップライスで、地球のオムライスと変わらない。
「…おいしい」
「そうやなあ。私もそれ注文すればよかったかも」
それから遊園地の本格的なアトラクションに行った。空いていて、快適だった。表現の思い浮かばないようなアトラクションばかりであった。最後にやった、小型戦闘機に乗って宇宙指名手配の犯罪者を追いかけ回すっていうやつとか、多分もう一生忘れない。前方から振る小惑星群をウルトロニック亜粒子砲で薙ぎ払ったときなど、もう間違いなく人生で一番興奮したと思う。VRというのはあそこまで進化できるものなのか。
「はーっ、楽しかった」
「ふう…。疲れたー!割と激しいの好きなんやな」
「超興奮しました。通信機みたいなので先輩と協力しながら敵と闘う感じ、すごい没入感でしたよ」
「ふははっ、すごい形相してたで。けっこうゲームのスコア、いったんちゃうかな」
「ああ、あれってスコアあったんですね」
「うん。プレイ中のビデオとかも貰えるで」
「え゛っ!?…撮ってたんですか?」
「あ、マズかったか?」
「いや…いいですケド」
小型戦闘機の中でしていたすごい形相ってやつがどれほどのものなのか、自分で見たくはない。そう思った。
もう昼ごはんも食べないまま、時刻は(地球の測定方法で)午後6時近かった。お腹が空いた。
「ありがとう」
ウニ先輩が、さっきのアトラクションのスタッフにお礼を言っている。どうやら、プレイ中のビデオってやつを貰ってきたらしい。左手には私とウニ先輩が預かっていた荷物を、右手にはオレンジ色の包装の何かを持って、帰ってきた。
「ビデオ貰ってきたんですか?」
問いに、ウニ先輩はこくりと頷き、それから私のカバンを渡してきた。
「うん。ばっちり撮れてる。あと、ゲームのスコアは今日の中で3位らしくて、景品も貰ったで」
オレンジ色の包装の中身は、ロウテリアのお菓子だった。
「そういえばお腹空きましたね」
「あ、そうやなあ。何か食って、もう今日泊まるホテル行こうか」
「いいですね。う〜、ドッと疲れが…」
ロウテリアにやってきたときに朝食を食べたところと同じところへ行く。今度は私がウルムクの鉄ウォート蒸しを、そしてウニ先輩がオムライスを頼んだ。隣の芝生は青いものだ。
「そういえば、ビデオってどうやって貰ったんですか?まさかスマホで?」
「ん〜、」
ウニ先輩は左手の腕の付け根あたりのところをぐりぐりといじる。よく見ると、ミサンガみたいなものがついてあるのだった。すると、空間に映像が現れる。SFモノとかでよく見る空中モニターだ。おお、実物を見るとやっぱすげえや。
「うわ…こんな超文明な高画質で、こんな私の顔を残さないでくださいよ…」
「いい映像やけどなあ。でもま、この映像はさすがにカネモのスマホに共有できへんな」
「いりませんよ…」
いつの間にか、ウニ先輩は私を「カネモ」と呼ぶようになってくれた。前まで「カネモちゃん」呼びだったが、今の呼び方のが好きだ、と思った。別にどっちでもいいのだけど。
「見て見て、亜粒子砲を発射してるときの顔!楽しそうやな〜」
「…そういえば、ロウテリアって動画投稿サイトみたいなのはないんですか?YouTubeみたいな」
「あ〜、あるけど。どうしたん?」
「いや、ハンバーガーの食レポを動画投稿サイトにアップとか、どうだろうと思って。ほら、先輩、ロウテリアにハンバーガーが無いって嘆いてたじゃないですか。その動画投稿サイトでハンバーガーの食レポがバズれば、ロウテリアでもハンバーガーが食べられるようになるかも…って」
全くの思いつきで言っただけだけど。
「…いや、」
「…ん?」
「それ、最高やな…………」
どんなつまらない提案が、だれの琴線に触れるか、分からないものだ。