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知らない2人と識る二人  作者: 甘井ようかん
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1年生 -入部-

読書研究会に仮入部申請を出してから、1週間が経とうとしていた。 と言っても、研究会特権の2つ以外は、今まで通りと言った形である。唯一違うところは、一緒に本を読む相手ができ、その相手が遠坂だということだ。

1週間同じ空間で本を読んでいた訳だが、本を読んでいるだけで様になるというのは、なんともまあすごいものだと感じた。俺も別に見た目はそこまで酷い訳では無い(友人談)のだが、さすがに1動作で人を惹きつけるような見た目はしていない。

そんなことを考えていると、研究部屋の扉が空いた。この研究部屋というのは、俺が勝手につけた奥の小部屋の名前である。

閑話休題。

空いた扉の先には、菊岡先生が立っていた。

「こんにちは2人とも。調子の程はどうですか?」

「場所が変わるだけで、色々落ち着けるなあって感じます。ありがとうございます。」

「それは良かったです。遠坂さんはどうですか?」

「私も、落ち着いていてとてもいい空間だと思います。より話に没頭できるのもポイント高いです。」

俺と遠坂の話を聞いて、先生は嬉しそうに微笑み、

「そうですか。2人とも気に入ってくれたようで何よりです。一応の確認なんですけど、このまま入部しますか?」

「そうですね、俺はぜひ入部したいです。」

「私も。」

俺たちがそう答えると、先生は安心した顔で

「わかりました。では、仮入部届をそのまま本入部届として受け取っておきます。いや、今年は2人が入部してくれて、とても嬉しいです。ありがとうございます。」

と言った。

「なんか思い入れあるんですね、最初の方から思ってましたけど。」

「ええ、まあ。隠すほどのことでもないので、いずれまた話しますね。」

そう言うと先生は、会議に行くと言って部屋を後にした。

その後、特に何かを話すわけでもなく本を読んでいると、

「神崎くんは、なんでこの部活を見ようと思ったんですか?」

と聞かれた。

「んー、いや、まあ本読むの好きだし、タダで読めればいっかな〜って感じかな。遠坂さんは ?」

「遠坂、でいいですよ。もし呼びづらければ。」

心の中では遠坂だったので、これは少しありがたい。

「ん、サンキュ。」

「私も似たような理由です。ただ私の場合、神崎くんに教えて貰わなければそもそも知らなかった事だったので。ありがとうございます、教えてくれて。」

「いえいえ、遠坂なら別に部員になってもまあ面白いかなって。面倒な人は面倒だけど、あんまりそんな感じしなかったし。」

そう言うと、遠坂は少し驚いた顔をして

「近寄り難い印象を持たれていると思っていたので、そう言って頂けて嬉しいです。」

と言った。見た目がいいこともおそらく自覚していて、どういうふうに立ち回るのが正解か、本人もあまりわかっていないのだろう。見た目が良い人は良いなりに、とても想像できないような苦労があるのだろうと、そう感じた。

「まあなんにせよ、よろしくな。」

「はい、よろしくお願いします。」

少しだけ、けれど確実に、相手のことを知りたいと思った自分がいた。


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