屋根裏部屋の亡霊
――屋根裏部屋には絶対行っちゃいけないよ。あそこには恐ろしい亡霊がいるからねぇ。
そう言っていたのは今は亡き祖母だった。
当時の俺は震えて怖がったものだ。その夜トイレに行けなかったのを覚えている。
だが無論、大学生になった今、それは祖母の冗談か何かだったのだろうとわかる。
確かに実家は築五十年以上の古い家ではあるが、うちに亡霊なんているはずがない。
でもそもそも屋根裏部屋なんてあったっけか?
久々に都会から帰省した際、俺はふと首を傾げた。そういえば祖母に屋根裏部屋の話をされたが、俺はこの目で見たことがない。
父や母に聞いても「なんだそれ」と首を傾げられるばかりだった。
やはり祖母の戯言だったのだろうかと考えつつ、俺は二階へと上がる。屋根裏部屋を探してみたくなったのだ。
父母の寝室へ行く。だが怪しいものはない。
続いて祖母の部屋だった物置に行ったがここも同じ。
やはり屋根裏部屋なんて嘘だったのかも知れないな、と思いながら俺はため息を吐く。そして「ああそうだ」と思い出し、最後に俺の部屋だったところへ向かった。
……屋根裏部屋はあった。
ここで十八年以上暮らしていたはずなのに、どうして気づかなかったのだろう。
よくよく見ると天井板に少し不自然な部分がある。ベッドに乗っかって手を伸ばし、羽目板をスゥーっと横にずらすとそこにポッカリと穴ができた。
梯子を使えば屋根裏部屋に行けるんじゃないか?
そこで俺は父母に見つからぬよう階下へ行き、こっそり園芸用の梯子を取って来た。そして再び俺の部屋に戻り、梯子をかける。
この先一体何が待っているのか。俺はドキドキしながら梯子を登って行った。屋根裏部屋が実在したくらいだ、もしかすると本当に亡霊もいるかも知れないぞ。
そして真っ暗な屋根裏部屋へ到着する。予め持って来ていた懐中電灯のスイッチを入れ、眩い光で周囲を照らし――。
「あっ」
俺は思わず息を呑んだ。
そこには確かに亡霊がいたのだ。
すっかり全身が腐り、目玉が溶け、こちらを空洞の目で見つめる無数の人影――骸骨が。
そして地面に飛び散るのは赤黒い血液。
俺はわけがわからなくなった。家の屋根裏部屋に死体がある? まさか。だが目の前にいるではないか、無数の亡霊が。
逃げようにも体が硬直して一歩も動けない。冷や汗を垂らし、ガクガクと膝を震わせる俺の耳に、どこからともなく声が、した。
『だから、来るなって言ったのに』
それは祖母の楽しげな声だった――。