表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/34

第11話「変化の予兆」

 風が、吹いていた。


 そのただ中で、男がひとり立ち尽くしている。


 黄みを帯びた不思議な色合いの白髪は後ろで束ねられ、同じ色合いの瞳が、風の吹いてくるはるか先を見透かすように見つめていた。



 服装だけを見れば、彼は農民にしか見えなかった。しかし、眼差しには外見にそぐわぬ老成した雰囲気を漂わせ、その容姿も、とても農民とは思えないほど整っている。





 そんな一種独特な雰囲気の男のもとへ、畑から歩いてきた女が声をかけた。


「ハク、もう中に戻りましょう?」

「……ああ」


 だが、男は何かに気を取られているようで、相変わらず茫洋としたまま空を見つめ続ける。


「どうかしたの?」


 傍らに近づいてきた女に問われ、男が初めて視線をそちらに向ける。


「……()()()が、変わった気がしてな」


 その返答に、女は瞬時に顔を顰めて言った。


「あらやだ。嵐でも来るの?麓にも知らせに行く?」


 そうして俄かに浮足立つ女に向かい、男は首を静かに振る。


「そうではない。……その嵐ではない」


 そんな判然としない男の言に、女は苛立つでもなく言葉を返す。


「そう……。でも“嵐”はくるのね」

「ああ。きっと」


 思わせぶりな言葉に女は一瞬にして顔を曇らせたが、しかし男の気づかわしげな視線に、すぐに笑みを浮かべてみせる。


「大丈夫。……その時が来たとしても、私たちには貴方がいるから心配ないわ。そうでしょう?」

「そうだな」


 男は気負った様子もなく、頷く。


「その命、私が必ず守ってやる」


 そう言って男は再び、何かを見晴るかすような視線を空へと向けた。




第11話「変化の予兆」







次話より新章「白の章」開幕です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ