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一話・日本の天才と異世界転移

粗いプロットしかございませんが楽しんでいただけたら幸いです。


  

 「ぐあー!今日も勝ったー!」

 「「「yeah!!」」」


 試合後、クラブのシャトルバスの中で俺こと小野建英(おのたけふさ)はぐっと伸びをしてそう叫んだ。


 周りのチームメイト達も肯定するように、叫び声をあげている。日本語で喋っていた筈なのになんでこいつらがそれを理解しているかは放っておく。


 俺がスペイン語を習得するのに精一杯な中、みんながあっさりと日本語をマスターしたとかでは無い筈だ。たぶん。


 『タケ!最高のゴールだったぜ!これで得点王確定だな!』

 『おう、ありがとな!ウスも最高のクロスだったぜ!』


 隣に座ったウスマフ・デンベレが声を掛けてきた。俺も応えてがっちりと手を組み交わす。

 よかった。ちゃんとスペイン語だ。


 デンベレはフランス人で陽気なクロサーで、歳が近いこともあって、俺がバレセロナにきたときからの親友だ。

 スペイン語を話せなかった俺に根気強く教え続けてくれた恩人でもある。


 今日は彼のクロスで今シーズン36得点目となるゴールを決めた。残り試合数6で得点ランキング二位と8点差。

 

 もし得点王をとれればラ・リーグ一年目の選手としては初めての獲得で、いうまでもなく日本人としても初めてのタイトル獲得になる。


 日本人、ラ・リーグ一年目の18歳、次期得点王。

 

 そう、これらを見て分かる通り、俺はサッカーの天才だ。自惚れ屋ではないが、それくらいは分かる。

 

 卓越したドリブルスキル、どんな体勢からでもゴールを決める決定力とフィジカルの強さ、バカみたいに曲がるコントロールカーブ。

 今、日本サッカーの期待を一身に背負った人間と言っても過言ではない。


 正直、腐敗に腐敗を重ねた日本サッカー協会やメディアの連中なんてどうでも良い。人を担ぎ上げることしかできないやつらだ。

 が、応援してくれているファンにはそれなりの姿を見せたいと思っている。


 調子の悪い時は激励してくれて、ゴールを決めれば自分のことのように喜んでくれる。そんな人達に感謝の形としていい姿を見せたいのだ。


 俺はふう、と一つ息をついて気を引き締め直した。

 次の試合は三日後だ。この試合はチームのリーグ優勝をかけた試合にもなっている。

 さらに言えばその相手はクラブの宿敵、リアル・マドリーだ。エル・クラシコ(伝統の一戦)で優勝を決める。


 周りの面々を見ても、今日の勝利を喜ぶと共にその表情に小さな緊張が見える。

 一年目の俺と違い、歴戦を戦い抜いてきた猛者達さえもこれだ。嫌でも気合いが入る。


 「っし!この調子で次も勝つぞ!」

 「「「Yeah!!!」」」


 俺が自分の浮ついた心を律するように声を上げると、またさっきのようにチームメイト達が合いの手をうってくれた。

 やはり日本語に的確に合わせられているのが不思議だ。


 

 ───────────────────────────


『じゃあおやすみー。また明日な』

 『おう、おやすみ』


 他の選手とホテルで別れる。

 今は遠征だから自分の家には戻れない。

 それに戻るといっても若い選手はみんな寮だから、意外とホテルの方がよかったりする。


 「うあー疲れたー。さっさと風呂入って寝よ」


 ガチャリと部屋の扉をあけて時計を確認すれば、もう夜の十二時。18歳の俺にはおねむの時間だ。

 

 プロサッカーは客商売だから沢山の人が観られる時間に試合がある。つまりは普通のサラリーマンの定時に合わせる訳だから、試合は夜になってしまう。

 育ち盛りにはなかなかこれがキツいのだ。


 「文句言ってもしょうがないけどなー」


 俺はスポーツバッグをどさりと床に置きながら、誰に言うでもなく呟いた。


 着替えを入れた袋はそのバッグの中だ。替えのユニフォームとスパイク、レガース(すね当て)なんかが一緒に入っている。

 スパイクは蒸れるから一緒に入れたくないんだけどなぁ。アウェイのスタジアムに置いとくわけにもいかないから仕方なくバッグの中だ。


 「バっスと風っ呂とシャワーは同じ♪文化の違いと好みの違い♪」

 

 そんな作詞、作曲俺のお風呂の歌を歌っていた時だった。

 

 なんの前触れもなく、煌々とカーペットが光りはじめたのだ。


 「は?」

 

 俺は間抜けな声をあげて合成繊維のカーペットを見つめた。

 光りはどんどん強く、俺を中心に円く円を描いている。さらには幾何学模様まで浮かび上がる始末だ。


 「あ、これ魔方陣ってやつだ」


 俺も年齢でいえば健全な高校生だ。今(?)流行りの異世界転移ものあるあるなのが、取り敢えず分かった。


 「えっと、これヤバいやつ?」


 今思えばここで逃げていればなにも起きなかったのだろう。


 けれど俺の一試合走り続けて疲れきった身体と、いまいち現実に追いついて頭が俺をその場に縫い付けていた。


 「うおっ!」


 光りが更に眩しくきらめき、俺の身体がカーペットに沈んだ。……気がした。

 

 「俺の大記録どうしてくれんの!?」


 ファンのみんなになんて言い訳するんだ!

 そんなことを考えながら俺は意識を手放し、その神々しい光りに包まれていった。



実在の個人、団体には一切関係無いですからね?


それと、ぜひ高評価、ブクマお願いします!

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