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第一章‐9


 スサノウの訓練は厳しかった。配下の八咫が事実上は訓練するのだが、体が動かなくなるまで訓練は続いた。


 この街にも時間の経過はあるらしく、訓練が終わるころには、日が暮れ部活帰りを思い出した。


「今日からここが君の部屋だ」


 ジェフ・アーガーが用意してくれた部屋は、紺色の壁紙、木目調の床、ベッドには真っ白なシーツが敷かれ、机が1つ置かれた、1人には十分な大きさの部屋だった。


 部屋に戻った俺はベッドに崩れ落ちた。このまま眠ってしまいたいとも思ったっが、今の時間までの出来事が頭から離れず、目がさえて眠れなかった。


 すると部屋の壁、机のすぐ近くに木刀が立てかけてあるのが見え、俺は思わずそれを手に取っていた。


 部屋を出て宿舎の庭に降りると、月明かりと星空が輝き、明かりがなくても一本の巨木のある庭の全体が見渡せた。


 正眼の構えをした俺は、今日おそわったこと、自分がここに来てから、明らかに身体能力が上がっているのに、ついていけていないことを自覚しながら、素振りをした。


 木刀は凄まじい音を立て、衝撃で巨木が揺れるほどだった。


 無心で木刀を振、今日の復習をしていると、声が聞こえてきた。


「お兄ちゃんの素振りなんて、久しぶりに見た」


 制服のままの妹が月明かりに照らされて、そこに立っていた。


「部屋に行ったら、窓からここにいるのが見えたから」


 少し汗ばんだ俺は妹のいつもと変わらない様子に安心した。急に救世主と言われて、謎の学園都市に放り出された俺たち。妹はいつも強気なところしか見せてこなかった。でも子供の頃は泣き虫だったのを、俺は覚えている。転んでは泣き、嫌いなものを食べさせられては泣き、俺が学校に行く時期になると、1人で家に居るのが嫌だと泣いていた。


 それがいつのまにか、俺は部屋に閉じこもり、妹は友達に部活に忙しくしていた。


「父さん、母さんは無事かな」


「無事だってみんなが言ってるんだから、大丈夫じゃないかな」


 案外さばさばしていることに、妹も強がっているのだと、なんとなく兄貴として感じた。


「ここに人間が来るのは、大変なことなんだってね」


 宿舎を見上げながら、妹は巨木に近づいていった。そこには俺が抜くことができない、エクスカリバーがかけたてていた。


 妹もそれを見つけ、面白そうに握っていた。


「刀って案外、軽いんだね」


 そういうと鞘から刀を抜いてしまった。


「なに!」


 俺は驚き、妹のところへ駆け寄り、エクスカリバーに触ろうとした。


 するとまるで刀の刀身を鞘が吸い込むように、妹の意に反して、納刀した。


 俺は妹からエクスカリバーを奪い、抜こうとするが、やはりびくともしなかった。


「あれあれお兄さん、抜けないんですか?」


 少し小ばかにした言い方に、俺はかっとなり、睨みつけた。


「稽古の邪魔だ、救世主様はさっさと寝ろ」


 エクスカリバーを立てかけ、俺は素振りに戻った。


 それをクスクス笑いながら、妹はその場を後にした。


 妹の後ろ姿を見て、俺も本当に妹は救世主なのかもしれないと思って、見つめた。


第一章‐10へ続く

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