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第一章−8

8


 あたしは裁判官の前に立っている気分になった。


 あまりに大きな人たち、いいえ、神々の前に立っていたから、言葉も出なかった。


「メサイア。ようやく見つけた。これで戦況も好転する」


「オーディン、そう焦るな。まだメサイアは混乱している。学園の力は明らかに上昇しているが、それでも奴らにはまだ及ぶまい」


「ゼウスの言うとおり、戦場で力を発揮してこそ、心の救世主とよべよう」


 あまりに大きすぎて、顔の見えない巨人たちが話し合っているのは、あたしのことなのはわかっているけど、どうしても自分のこととは思えなかった。


 顎を撫でて巨人たちの話し合いを聞いていても、埒が明かないと思ったあたしは、思い切って声を出してみた。


「あの、すみませ〜ん。あたしのこと、なんだろうけど、救世主って言われても、ピンと来ないんだよね」


 すると真ん中に座っているゼウス、ギリシャ神話の最高神があたしを見下ろして、優しく言ってきた。


「これからだ。時間も空間も次元すらも超越した救世主になるのはな」


 そう言われても実感がなかった。


 神々との謁見を終えたあたしは、ジャンヌ率いる護衛隊に囲まれて、学園内を移動した。


 西洋風の学園内の装飾は綺麗で、いちいち見入っちゃいそうになるのを、ジャンヌに止められた。


 そういえばお兄ちゃんはどうしてるんだろう?


 ふとお兄ちゃんのことが頭をよぎった。引きこもりのおにいちゃんのハナビことだから、まだ学校のどこかで途方に暮れてるのかな?


 心配だなぁ。


 そんなことを思っていたときだ、廊下をかな切り超えが走っていった。


「お姉様〜〜〜〜」


 護衛の女の子たちが、頭を抱えるような仕草をしたのを見て、声の方を見ると、すごい勢いでこっちにかけてくるおんなの子が見えた。


 茶色い髪のツインテールで、私と同じ学生服を着用していた。


 するとあれだけ凛としていたジャンヌがあたしの後ろに隠れてしまった。


 小さい女の子はすごい勢いのままジャンプする、あたしの頭上を飛び越え、背後に着地するなり、ジャンヌの体に抱きついた。


「こ、こらやめろ。いつもの慎みを持てと言っているだろう」


 困った顔と赤くなった恥ずかしさなのか、ジャンヌはあたしを気にした。


「メサイア様の前だぞ、いい加減離れろ」


 そう言われても、小柄な女の子は離れる様子もなく、正面な回り込み、ジャンヌの大きな胸に顔をうずめた。


 あたしと同じ制服だけど、ワイシャツのボタンがはちきれそうなジャンヌの胸は、柔らかそうだった。


「いい加減にしろ」


 と怒ってジャンヌは見事な一本背負で、小柄な女の子を投げ飛ばした。


 赤い絨毯の敷かれた廊下に大の字に打ち付けられた女の子は、目を回していた。


 身だしなみを整えるジャンヌを見ていると、恥ずかしげにジャンヌは、あたしから目をそらした。


「こ、この子は護衛隊見習いの、お市と申しまして、その、なんといいますか、教育係をしているのですが、妙に懐いてくるというか」


 しどろもどろになるジャンヌの後ろでもう立ち上がり、敬礼をしたておどけるお市は、あたしを見ていった。


「見習いではありますが、メサイア様を全力でお守りいたします。そしてお姉様を全力で抱きしめます」


「な、なにを言ってるんですか」


 このやり取りには、さすがに笑ってしまった。


 こんな生活もありかなって思った。


第一章−9へ続く

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