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第一章−5

5


 そこは大学の教室のように階段状になっていた。


 ジェフにエクスカリバーと言われたが、俺の知っているエクスカリバーとはまるで違う、日本刀の形をしたずっしりとした剣と、久しぶりに着た学ランに違和感があるまま連れてこられたのは、大学の講義を受けるような広い部屋で、机と椅子が階段状に並び、人はいなかった。


 外にはさっき歩いていた別館と洋館が並び、構内の2階に位置するこの部屋からは、敷地を囲む鋼鉄の壁の向こう側が見えていた。


 七色の光がずっと輝く不思議な空が広がっていた。そこに地上はなく建物も見えない。七色の世界がずっと広がるばかりだった。


 一体何なんだ!


 俺は口にはしなかったがもう、これ以上の不思議なことは勘弁してほしかった。


 それに1時間程度しかたっていないのに、横に座る妹が急に大人びた雰囲気になったのも気になる。


 こいつの話だと、洋館の中は外見と違って中はすごく広く、ギリシャの建物みたいな柱が並ぶ泉みたいなところに入れられて、女の人たちに身体を洗われという。


 確かに妹の匂いがいつもの匂いと違う気がした。


「防衛隊長、ここは神聖なる学園内だ。なぜこの人間がまだここにいる!」


 俺の隣に座る妹の横で、不機嫌に叫んだのは、学園に来たときに美紗紀を連れて行った、羽の生えた女子高生のリーダーのようだったあの女だ。


 その手には俺の首元に切っ先を突き立てた剣が握られている。


 俺も抜けはしないけど、さっき手に入れたばかりの刀を握った。正直、怖かった。


 俺たちは最前列の椅子に座っていた。


 その目の前にはジェフが立って、俺を指差す女に苦笑いを浮かべた。


「メサイアの血族なんだ、むやみに放り出すわけにもいかないだろ。それにお前も知ってるだろ? ここは入ったらどこへ出るか分からない世界だって」


「そんなことはわかっている! だからこいつをどこでもいいからつまみ出せと言っている! 神聖なるエデンに人間を入れてはならないのだ!」


 俺を激しく拒絶する女の声が教室に響いた。


「ちょっと待ってよジャンヌ! お兄ちゃんが出ていくなら、あたしもここから出ていく! なんでお兄ちゃんをそんなに嫌うのよ」


 と、美紗紀が女をジャンヌと呼んで、俺を養護してくれた。


 いつもはうるさいだけの妹だと思ってたけど、それが俺にはすごく嬉しかった。


「メサイア様、さっきも申し上げたように、この学園都市エデンには、神聖なる者、選ばれた者以外は入れぬのです。たとえ肉体がメサイア様と血縁にあろうとも、人間をここへ入れるわけには行かぬのです。これは神々のお決めになったこと。何人も変えることのできぬ法律なのです」


 すぐに俺はジェフに目をやった。どういうことか説明を求めた。


 俺を見てジェフは頷くと、教卓に設置されたタッチパネルを操作した。


 すると目の前に立体映像が出てきた。


 横で妹は喜んで拍手するが、俺にはここが本当にあの世ではないのかという疑いしか出てこなかった。


 俺たちの驚きには目もくれず、ジェフは学園都市エデンについて話し始めた。


「これは全部本当の話だ。嘘は1つもない。それを分かった上で聞いてほしい。

 神と悪魔の戦いは宇宙が誕生するずっと前から始まっていた。人間が考えるよりずっと昔から。しかも神々と悪魔たちの戦いに場所は関係ない。時代も関係ない。あらゆる時代、あらゆる空間、あらゆる次元で戦いは続いた。

 しかしある時、神々が生み出した預言者が告げた。


『いつの日かこの戦争を終わらせる救世主が誕生日するだろう』


 その預言を元に神々はここに要塞を築いた。あらゆる時代、空間、次元と繋がった要塞を。それがエデンだ。そしてさっきの街はエデンに繋がる門。あそこで生活している者たちは、魂の修行を終えた者、つまり人間が住む3次元よりももっと高い高次元にいる存在だ。だからエデンに人間は1人もいない。

お前以外はな」


 ジェフの言っていることの半分も俺には理解できなかった。


 それを俺の顔に見たのだろう。彼なりにもっと噛み砕いた言い方をした。


「つまりエデンは交差点に建てられた要塞なんだよ。時間と空間と次元の交差点の上なんだ。目に見えるもの、形に意味なんかない。ここではすべてが形のまま捉えることはできない。

 お前が見てる俺も、人の形はしてるが人じゃない。ジャンヌも同じだ」


 そう言われても、俺は美紗紀と顔を見合わせた。


「お兄ちゃん、分かった?」


 首を降振ることしかできない。


 立体映像に線や図形、数字が表示されるが俺たちには分からない。


「神々の探していた救世主こそがあなた様なのです、メサイア様」


 と、ジャンヌが大きめの声で叫ぶ。


「そう。じきに神々が降臨される。そうすればメサイア様は謁見なされる」


 神々。ますますこの世界の現実味が遠のき、俺は頭は混乱した。


 その時、どこかで鐘の音が大きく学園中に響いたのが、俺の耳に届いてきた。


「神々が降臨なされた」


 ジャンヌが喜びの笑みを浮かべて言った。


 神々って?


第一章−6へ続く

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