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第一章‐4

4


俺は逃げ出すようにその街を飛び出していた。


 さっき入った自動ドアを抜けて、並木道が見える学園の敷地に、学ラン姿で走り出た。


 自分が夢の世界か、死んだのだと思った。


「死んだわけでもないし、夢でもない。ここは『学園都市エデン』紛れもない現実だ。ただお前が居た現実とはちょっと違うけどな」


 同じく建物から、いつものことなのだろう、ポケットに手を突っ込み、俺の心を読んでいるかのような喋り方をして、ジェフは俺に笑いかけていた。


「だからこの世界は、ここは一体――」


 言いかけた俺の言葉を半分も聞いたか聞かないかでジェフは振り返り、


「っと、次は武器だな」


 そう言って先に歩いていく。


「武器って、俺の質問に先に答えてくれ!」


 ジェフを追いかけて行くと、すぐにまた別の建物がすぐに現れた。


 今度はコンクリートの四角い、校舎らしい校舎だ。


「ほら行くぞ」


 ジェフはまた、ガラスの向こう側が見えない建物の中に入っていく。


 先が霧のようなもので見えない。あんな世界にまた行くのか。


 ためらう俺の手を今度は霧の中から手が伸びてきて、俺の手首を掴み、凄い勢いで無理矢理俺の身体を何引きずり込んだ。


 また摩天楼が。


 そう思って目を開けたとき、別の意味で俺は唖然とした。


 石畳の街道。その両側に並ぶ露天。その天幕に何かの革が使われている。


 並ぶ店は石や木でできている。


 そしてこの街を歩いているのは、甲冑を着た人間、耳の尖った色の白いエルフ、耳から口、鼻の下まで毛むくじゃらで小さいが筋肉質のドワーフ、それより筋肉のない小人族、逆に5、6メートルはある巨人族などが歩いていた。


 空を見上げると大量のドラゴンの群れがちょうど、街の上を回遊していくところだった。


 今度はファンタジーの世界に俺はもう、頭がクラクラしそうになりながら、無理矢理腕を引っ張るジェフに歩かされた。


 そうして街の中に入っていくと、爬虫類のような生物、蝶々やトンボの羽がはえた妖精が街中で買い物をしていた。


 妖精にみとれていると、俺はある店に連れてこられていた。


 明らかにそこは物騒な店だった。ところ狭しと銃、剣、爆弾、ダイナマイトが並んでいる店だった。


 しかも銃は西部劇や西洋の海賊が持っているような古いものから、エアガンなどで売られたいる見知ったもの、SF映画に出てくるような奇抜な形のもまでが並ぶ。


 剣もそうだ。西洋の騎士が持っていそうなものから、日本刀、機械仕掛けのおもちゃのような剣まで揃っている。


 広い店内には中央に大砲や戦車まで展示されていた。


 ゲームではよく見る武器屋なのだが、実際に見ると身体が震えた。


 そんなのお構いなしにジェフは店の奥のカウンターに俺を連れていき、金網越しにこっちを睨む、片目にに眼帯をつけた、いかにもこういう店の店主といった様子のドワーフに声をかけた。


「また納品ミスですかい?」


 ジェフとの間になにかあったのだろう、ドワーフは厳しい顔をしていた。


「いや、今日は違うんだ。新しい武器が欲しくてね」


 そういうと俺を金網の近くまで引っ張った。そこでようやくジェフは腕を離してくれた。


 初めて間近で見るドワーフに、俺はそうとう好奇心が出ていたのだろ、ドワーフは不機嫌そうに腕組みして、片目をジェフに向けた。


「人間に扱える武器なんぞ、ここにはありませんぜ」


 それは分かっていたのだろう、ジェフは俺の横で頷いていた。


「彼は《メサイア》の血族のんだ。もしかするとなにか反応してないか?」


 それを聞いた途端、ドワーフは片目を見開いて驚いた様子で俺を見てから、


「ちょっとお待ちを」


 と言って金網の奥に置かれた大量の武器の山の中に消えていった。


「やっぱり夢だ。じゃなきゃ俺は死んでるんだ」


 思わず呟いた俺。  


 それをどう見てたのだろうか、ジェフはただ微笑んでいただけだった。


「こいつは驚きですぁ」


 ドワーフがそう言って奥から慌てて戻ってくると、手には一本の刀が握られていた。


 柄、鍔、鞘までも真っ黒の刀だ。


 金網の下の隙間からドワーフは刀を差し出す。


 その風貌に似つかわしくなく、手が震えていた。


 ジェフを見ると彼は目線で俺に取れと言っていた。


 本物の刀なんて手にしたこともなく、木刀すら触ったことのない俺は、持てるはずがなかった。


 それなのに手が自然と、本当に無意識に刀を手に取っていた。


「抜いてみな」


 ジェフが言い、俺は柄を握って一気に引き抜こうとした。


 しかし刀はすごい力で鞘の中から引っ張られているように、抜けなかった。


「まだ認められてないってわけか」


「まあ、触ることができたってことは、間違いなく《エクスカリバー》は彼を選んだわけだ。形もここまで変わってることだし、きっとわけがあるんだろう」


 淡々とジェフが言ったが今、俺の手元にある刀を彼はエクスカリバーと呼んだ。あの伝説のゲームでしか名前を聞いたことのないあの有名な剣。


 やはりこれは夢だ。絶対に夢なんだ。


 この時、俺はそう思い込もうとした。


「さて、服も武器も揃ったし、学園に戻って説明しますか」


 俺の背中を叩き、ジェフ・アーガーはポケットに手を入れて、鼻歌交じりに出入り口に向かう。


 それを見ていたドワーフは、


「それを抜けるようになった時、お前さんの戦いは始まる。それまでに鍛錬をしろ」


 厳しい声で俺に言ってきた。


第一章‐5へ続く


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