第一章-3話
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学園の敷地はとてつもなく広かった。どこまで続くのか、俺の目が見渡す限り、学園は広がっていた。
校舎は西洋風、ところどころに学校らしい体育館や別館が見えるが、なぜか洋館がいくつも建っている。
俺はアスファルトからいつのまにか石畳になった敷地をジェフ・アーガーの後ろについて歩いていく。
敷地を覆う壁は、普通の学園とは違い、鋼鉄でできていた。高さはまるで要塞をイメージさせるほど高く、その上には光るカーテンのようなものが続いていた。
「お前にとっては違和感しかないだろうがしばらくすればなれてくるさ」
ジェフはまるで友達と話すように俺に笑顔で言ってきた。
人と話す機会が数年間なかった俺にとって、ジェフとの会話はぎこちないものだったと自分でもお思う。
「ああ」
しか言い返せなかったのだから。
「まずは服だな」
俺の格好を何度も見てジェフはいうと、学園の別館の1つに入っていった。
別館もコンクリートと鋼鉄で作られて、やはりどこか要塞みたいに俺には見えた。まるでゲームの中に入った気分で俺は別館の中に入った。
入り口はガラスの自動ドアだった。でも不思議なことに中が見えない。すりガラスでもないのに、中がまったく見えない。白い霧で曇っているように見える。
ジェフが先に入り、俺も中に入っていく。怖さなんてなかった。ジェフが入るんだから、きっと安全なんだろうと思って入った。
しかし入った瞬間に目の前の光景に驚いてしまった。建物の中に入ったはずなのに、そこは広大な都市のど真ん中だったのだ。
雲の上まで伸びるビル群。空を飛ぶ車の群れ。それはまさしくSFの未来都市そのものだ。
「何してる、行くぞ。驚いてないでとりあえずついてこい」
驚くな、という方が無理だ。なにも聞かずに行くことができない状況だったけど、周囲に宇宙人が現れたので、俺は慌てて逃げるようにジェフのそばに駆け寄った。
NASAの宇宙服のような大きな服の中に水をいっぱいにして、タコのような軟体生物がヘルメットのガラス面から姿を見せていた。
その他にも昆虫をそのまま大きくした二足歩行の宇宙人や、四足歩行で頭が7つある牛のような生き物まで歩いている。
中には人間も歩いているが、分厚い鋼鉄のアーマーを着用した、間違いなく俺の居た世界の人間ではない姿であった。
人より宇宙人の方が多い光景に、俺は喉が急激に乾くのを感じた。
宇宙人の行き交う街の上空には、立体映像の広告や人間、食べ物らしい青い球体自体が飛び、広告が下にくっついていた。
ジェフは当たり前のように進むと、ビルとビルの間にある、小さい店に入っていった。
大きさは見た目どおりアパレル店だ。
今度は自動ドアの中が見えていた。外観はアパレル店なのに、中には服以外にも西洋の鎧、日本の甲冑、さっき街を歩いていた人間がつけているアーマーやほとんど機械のパワードスーツらしきものまで飾ってあるのが見えた。
ここは何なんだ?
戸惑う俺はでも頼りになるジェフを今は信じるしかなく、店の中に入っていった。
店は思ったよりも狭く、そこにさっき外から見えた衣服と鎧とアーマーが並んでいる。
店の奥には石のカウンターがあり、1人の宇宙人が建っていた。
全身鱗で口と鼻が前へ突き出している。あまの下には太い髭がドジョウのように泳いでいた。
ドラゴンを人間の形にしたような人物である。
「人間の匂いだ。珍しいね、人間がエデンに来るなんて」
宇宙人は女性のような喋り方をするが声は男のものだった。しかも日本語を喋っている。
「彼に合う服がほしい。学ランで構わない」
それを聞いたドラゴン人はニヤリと笑ったのが不気味だった。
しかもドラゴン人は俺のサイズがすぐに分かったのか、後ろに並ぶ衣服の山の中から学ランを1つ選び、ハンガーのままジェフに渡した。
ジェフはそれを俺の服の上から重ねた。
「着替えはどこで」
試着室で着てサイズを合わせるものだと思っていた俺が聞くと、ジェフは首を振った。
すると一瞬、体に風が当たる感覚がしたと思ったら、体にトレーナーとは別の生地がひっついた感覚がした。
俺はもう学ランを着ていたのだ。
「こいつはこっちで始末しておくよ。いらないだろうからね」
ドラゴン人の伸びた爪と六本の指の手には、俺がさっきまで着ていたトレーナーとスウェットがあった。
頷く。それがドラゴン人にできる俺からの精一杯の返事だった。
「この学ランはただの学ランじゃない。繊維が鋼鉄よりも硬く、どんな攻撃にも耐える。しかも魔術が繊維に織り込まれているから、体を守るシールドもついてる。強壮素材で身体能力も向上する。これで戦える」
「戦う?」
ジェフの言っている言葉の半分も分からないまま、俺は何と戦うのかそれだけを疑問に思った。
「学園都市エデンはすべての中心地。そこには神々と精霊が住み、高次元の魂が生活する。そして要塞でもある。すべての時間、空間、次元を『悪魔』から守る砦だ」
『悪魔』
ジェフがさっきまで見せていた顔が急に険しくなったのに、心臓がドキッとするのを感じた。
第一章-4話へ続く




