第一章-2話
2話
周りの白い制服の女子高生たちはみんな、人間離れした美しさだった。
俺は言葉が出なかった。
もちろん俺の背中に隠れている美沙希もそうだった。
すると一番最初にこの場所で待っていた女性が俺の前に立つと、急に腕を伸ばした。
俺は身動きできなくなった。彼女が伸ばした手が掴む剣の先が、顎のすぐ下にあったからだ。
「どけ! 貴様に用はない。我らが迎えたのは崇高なる目的のある『救世主・メサイア』様ただ御一人。お前ごとき人間にようなどない。立ち去れ!」
体中に鳥肌が立った。まるでムチ打たれるような言葉に、俺は何も言えなかった。
「さあ、メサイア様、こちらでございます」
後ろで声がして妹が連れて行かれようとしていたのに、俺はなにもできなかった。なにもさせても耐えなかったのだ。
きっと動いていたら俺は首を斬られていただろう。
「ちょ、お兄ちゃん。お兄ちゃん!」
大勢の女性が妹を取り囲み連れて行く。危害を加えるつもりがないのは見れば分かった。でも、ただ1人の肉親を奪われようとしているのに、俺は足を動かすことすら、指先を動かすことすらできなかった。
周りに居た女性たちが妹を連れて、少し離れた場所にある茶色のレンガで作られた洋館に入っていくと、ようやく金色の神の女性を大きな胸を揺さぶって、剣を払うと、緑色に青い宝石と銀色の細工をした鞘に剣を入れた。
「どこへなりとも消えるがいい。メサイア様は我々がお世話する。心配はいらぬ。だが二度と近づくことは許さない。それだけは覚えておけ」
赤い瞳の女は俺を睨むと、ヒールを鳴らして洋館の方へ向かっていった。
気づくと俺は額に何年かぶりの汗をかいていて、それを拭うと、妹が入って行った洋館へ急いで向かおうとした。
「やめときな。お前さんが行ったところで、次元の間に落っこちて、消えちまうだけだぞ」
後ろから今度は男の声がした。
振り返ると、黒髪に黒い学生服を着た、俺と同じくらいの男が立っていた。
「でも、妹が」
誰ともしらない男に俺はすがるように言った。
男は笑顔で答えた。
「もしあんたの妹さんが本当にメサイア様なら大丈夫。あいつらに任せておけば心配ない。それより問題はお前だ。ここで妹を待ち続けるのもいいが、ここは『学園都市エデン』何が起こっても不思議じゃないところだ。死んでおかしくない」
死ぬ。学校で死ぬ。俺は意味が分からなかった。
「その顔じゃさっぱり分かってない感じだな。俺の名前は『ジェフ・アーガー』一応、お前と同じ人だ。ここに居る時間はお前より少し長いから、とりあえずエデンについて説明してやるよ。それと服もなんとかしないとな。ここで何をするにせよ、その格好じゃなんにもできない」
スエットにトレーナー。家にいるままで俺はここに来た。だから当然のことだった。
説明してくれるというジェフ。悪いやつではなさそうだから、俺はついていくことにした。
俺は美沙希が心配だったけど、ここはどうやら俺の知る世界じゃない。夢なのかあるいはあの世なのか。とにかく下手に動くと危険だ。それだけはさっき、剣を突きつけられて理解していた。
第一章-3話へ続く




