第一章‐15話
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お兄ちゃんを助けるために、あたしは必死。
気づいたら泣いてた。
悪魔に向かって攻撃した時、通用しないのは分かってた。それでも殴られ続けるお兄ちゃんを見てられなかった。
あたしの攻撃が全部、命中した。アモンはそれでも無傷であたしの目の前に瞬間移動してきた。
子供の顔とは思えない黒い影がついた怒った顔であたしを睨んで、黒く染まった光で包まれた手を、あたしの上に振り上げて、叩きつけてきた。
魔法陣のシールドで悪魔のパンチを防ぐ。
だけどこの力はなに?
魔法陣が体を守ってくれているのに、痛い。
体中の骨が音を立ててるのが分かる。
これってヤバイんじゃない。
あたしも何とかして攻撃しないと。そうイメージした時、魔法陣から光が広がった。
子供の顔が一瞬、苦しそうになったから、これで攻撃を、と思った。でも無理だった。
あたしの力はまだ完全なものじゃないみたい。
悪魔のパンチは魔法陣にひび割れを入れ、今にも砕けそうになる。
「メサイア様からはなれろぉ」
叫んでジャンヌが雷をまとった剣で飛び掛かる。でも悪魔は開いているもう片方の腕を振り上げると、衝撃波がジャンヌの体を吹き飛ばして、東京駅の壁に突っこんでいった。
あたしはジャンヌが心配だったけど、自分のことで精いっぱいだった。
このままだとマジでヤバイ。
思った時、魔法陣はガラスのように砕け、あたしは無防備になった。
「もう、ダメだ」
黒く歪んだ光に包まれた悪魔の拳が、あたしの頭めがけて降りてくる。あきらめの言葉を言った時、突然、目の前が真っ赤に染まった。
何がおきたのか、あたしは消えたのか、そう思っていると、昔、よく見たあの背中があたしの前に立っていた。
お兄ちゃんがそこにいた。
エクスカリバーを鞘から抜き、炎をまとった刀を悪魔に向けていた。
抜けたんだ。
お兄ちゃんは剣道をしてたあの頃のように、エクスカリバーを構えて、あたしを守ってくれる。
「美沙希、逃げれるか」
ボロボロになった学ランを見ればわかる。立っているのもきっと辛いんだ。それなのにあたしのことを気にかけてる。
「お兄ちゃん……」
泣きそうになるあたしの声に、お兄ちゃんは叫んだ。
「逃げれるなら、ここから離れろ。俺がこいつを斬る」
お兄ちゃんのたくましい声に、あたしは逃げようとした。
だけど逃げなかった。
あたしは救世主。あたしが逃げればきっと神様たちだって怒る。
あたしは逃げずに手のひらを必死に前へ突き出した。
せめてお兄ちゃんの助けになれば。
魔法陣が手のひらから空中に出た。あたしはお兄ちゃんが勝つイメージをする。きっと悪魔を倒してくれる。信じた。
すると魔法陣から光が溢れ出て、お兄ちゃんの体を包み込んだ。
途端にエクスカリバーから吹き出していた炎が光を増した。
悪魔はこの光を嫌がったのか、お兄ちゃんから離れて行く。
お兄ちゃんは逃がさない、とばかりにジャンプして子供の姿をした悪魔を追いかけた。
エクスカリバーの炎が空気を燃やしていた。
お兄ちゃんが戦っている。
嬉しい気持ちもあった。でも不安もある。
お兄ちゃんがあんなにボロボロになって、戦っている。
ゲームばっかりやって、部屋の掃除もしなかったのに。今は悪魔なんて化け物と戦っているんだ。
第一章‐16話へ続く




