第一章‐13話
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攻撃のやりかたは、意外と簡単だった。
マーリンが言ったように、自分の中の光を掴む感覚がなんとなく分かると、想像する通りの攻撃ができた。
手をかざせば魔法陣が出てきて、光が思ったように敵を倒してくれる。
案外、楽だった。
でも、地上から自分に向かってくる光には驚いちゃった。
胸に向かってきた黒い光を、魔法陣が勝手に胸の前に現れて、守ってくれたけど、体を押し込まれた感じになって、気付いたら地面に倒れてた。
ジャンヌが西洋の鎧を着て、あたしのところに走ってきて、引っ張ってくれたから立てたけど、結構、体は痛かった。正直、泣きそうになってた。
いきなり救世主メサイアだと言われて、神様たちと会わされて、マーリンなんて男にイメージだとか言われて、なにも分からないっての。
それでもあたしの目の前で倒れてる人たちを見ると、こんな化け物になんか負けないって思って、あたしは立ち上がった。
「メサイア様、ここはお逃げください。こいつはまずいです」
あたしをかばうようにして前に立ったジャンヌが、後ろからみても緊張しているのが分かるくらい、抜いた剣は、軽く震えてた。
ジャンヌが見ている先に、あたしも視線を向けると、黒い煙の中から小さな男の子が出てきた。
え、なんで?
こんな化け物の中に子供がいる。すぐに助けなくちゃ。
あたしが走り出そうとしたのを、ジャンヌの手が止めた。
どうして、とジャンヌを見ると彼女の顔は汗をかいていた。暑いとかじゃない。この汗は危険を感じている汗なんだと思った。
男の子を見ると、上下黒のスーツ、黒いネクタイ、黒いオカッパの髪の毛。瞳も黒くて、日本人の10歳くらいにしか見えない子供。なにも怖いことなんてない。あたしはそう思ってた。
でもジャンヌは分かってた。子供の本当の怖さを。
ジャンヌが突然、
「うぁぁぁぁぁ」
なんて大声を出して子供に駆け寄った。
剣には雷が巻き付いていて、それがジャンヌの攻撃方法だった。
剣が子供に振り下ろされた。
なんで、子供を斬ったの?
驚くあたしはでもさらに驚く光景を前にした。
雷で光る剣を、子供の小さな指が掴んで、止めてた。
言葉なんて出るはずもない。おもいっきり振り下ろした剣を、10歳くらいの子供が指で掴んでとめたんだから、驚きを通り越してしまった。
ジャンヌはもう一度、子供から離れて今度は剣を横に構えて、踏み込んだように見えた。
でも、ジャンヌの体は見えない壁に衝突した感じで止まって、そのまますごい力で押し返された。
剣は握ってたけど、すごい力だったらしくて、ジャンヌは地面に叩きつけられた衝撃なのか、会って初めて見る苦痛の顔をしてた。
あたしは、何とかしないと、と思って手のひらを前に突き出した。イメージとしては光の玉がいくつも飛び出す感じ。
思ったように手のひらからいくつもの魔法陣が空中に、光で現れると、そこから光の玉が沢山出て、子供に向かって飛んで行った。
爆発が起こり、黒い煙が子供の周りを覆った。
あたしは撃退した?
そう思ったんだけど、黒い煙がすぐに消えると、子供は笑ってた。
「これでメサイアですか。笑わせますね」
子供の声なのに、随分と大人びた喋り方だ。
なんかイラ立ちに近い、あたしを妙に怒らせる顔に見えて、あたしは思わず飛んで子供に向かって近づいた。小さい頬っぺたをひっぱたくつもりだった。
けど、あたしの速さよりも子供の方が何倍も速かった。
あたしの上にまるで瞬間移動したみたく飛び上がると、あたしの背中に思い切り蹴りを入れてきた。
背骨が音を立てるのが分かった。
あたしは地面にすごい勢いで叩きつけられてた。コンクリートが砕けるほどの衝撃。
それでもあたしの体はまだ動けた。痛い、すごく痛いけど動ける。
立ち上がろうとした時、目の前に子供が立ってるのが見えた。
あ、あたし、もしかしたら死んじゃうかもしれない。
あきらめた時、子供が振り下ろした拳を止めた人がいた。
第一章‐14話へ続く




