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第一章-1話


 18歳の夏、俺は『天宮賢治』は引きこもりから脱することになった。


 中学生の時、剣道の試合で脚を捻挫して休んだ夏から、俺は学校に行かなくなった。


 何が原因ってわけでもない。ただ脚を怪我してから家でアプリゲームをしてたら、ハマった。


 それで家から出なくなり、気づけば中学が終わり、高校に入学しないで、そのまま18歳になった。


 両親はそのうちなんとかなる、と思ってるみたいだけど、俺は正直、なんにもやる気がしなかった。


 家でPCゲームで遊んで、そこの仲間と楽しんでるのが性に合ってる。


 親はまだ元気だし、なんとかなるだろうって思ってた。


 でもうるさいのは1つ下の妹『天宮美沙希』だった。


 兄貴の俺が言うのもなんだが、あいつは美人だ。長い黒髪と白い肌。お袋に似たのか、胸もデカい。


 高校でそれなりに人気があるらしく、家の前で告白されてるのを、二階から何度か見たことがあった。


 そんな人気の妹はしっかりしている。俺にガミガミ言ってくるんだから、ウザい。


「またゲームばっかりして。いい加減、外でなよ」


 その日も勝手に部屋に入ってきて、徹夜してゲームしていた俺の頭に響くうるさい声で行ってきた。


 俺はイライラしながらヘッドホンをつけ、妹が学校に出かけるまで、知らないふりをした。


 でもそうもいかない状況になったのだ。


 俺の部屋の窓が割れて、突風が吹き込んできた。


「な、なんだ?」


 ヘッドホンを外して窓を見ると、部屋の内側に爪を引っ掛けた、不気味な巨大な生き物が翼を上下させ、俺の部屋を複数あるキモい目で物色していた。


「なんだよ。マジかよ、マジかよ!」


 叫んで逃げようとした時、耳を刺すような悲鳴をあげ、化け物はくちばしみたいなものを開くと、鳴き声を上げて、伸ばした舌で俺の体を弾き飛ばした。


 剣道でもこんな痛みなんか感じたことがない。


 パソコンがまだ動く机に体を打ち付け、俺は息が一瞬できなくなった。


 そんな俺にはお構いなしで、怪物は伸ばした舌を部屋の入り口に立ってた妹に伸ばす。


「馬鹿、逃げろよ!」


 いつも嫌なやつ。妹なんていらないと思ってたのに、俺の口から出たのは、妹を逃がそうと必死になる声だった。


 青く短い制服のスカートがはためき、妹はそれを抑えている。


 逃げたくても怖くて逃げれないように見えた。


 俺はとっさに背中も遺体のも忘れ、自分でも驚いたことに、飛び跳ねで妹の体を掴んでいた。そのまま廊下に倒れ込んだ俺たちに向かって、伸びる舌。


 起き上がって逃げようとしたその時、俺たちの目の前に不思議なものが現れた。


 真っ白な光。そうとしか言えない光は、俺と妹の体に迫ってきた。


 何かが起こった。俺はそう確信した。ジェットコースターに乗ったみたく、重力がなくなったと思った次には、コンクリートの地面に俺たちは倒れていた。


「お兄ちゃん……」


 震える妹が俺のトレーナーを掴んでいた。


 その手を掴んで落ち着かせながらも、俺は自分の心臓が弾けそうになるほどドキドキしているのを感じた。


 それを落ち着かせるために、まず俺たちがどこにいるのかを確かめた。


「……学校」


 思わず俺はつぶやいた。


 目の前にあるのは俺が知っている近くにあるどの学校とも違う、巨大な建物だったが、間違いなく学校の作りをした真っ白な建物が見る限りどこまでも並んでいた。


「よくご無事で」


 突然、倒れていた俺たちに声をかけてきた。


 妹の腕を引っ張り立たせた俺は、妹を後ろに庇って、声の人物の方を見た。


 そこには見たことのない白い制服と金色の長い髪、瞳が赤い女が立っていた。年は俺と同じぐらいに見える。


 すると白い脚をアスファルトにつけて、まるで西洋の騎士のように頭を下げた。


「お待ちしておりました、救世主メサイア様」


 そして声に合わせたように、空から翼を羽ばたかせた、女子高生が何百人と降りてくると、膝を付き、俺たちを囲んだのだった。


次回へ続く

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