墓参り
自分に不可視の魔法をかけて力を極限に抑え、微か感じた懐かしい気配の元へと向かう。
街の上空を飛び巨大な城が見えてくる。
『この5000年でここまで大きくなったか』
まだ勇者達と行動を共にしていた時、出入りしていた当時の城とは段違いだ。
その城を飛び越えて3つある塔の右に入る。
中に入るとより強く仲間達の気配を感じた。
大きな祭壇に3つの立派な墓石が並んでいるけどこれはフェイクだな。
感じる気配は地下からする。
入り口は検討付いているのだがどうやら仕掛けがあるようだ。
どうしたものかと考えていると勇者達とは別の僅かに魔力反応を感知する。
『鍵穴か。
これに専用の鍵を使い仕掛けを作動させて道を開くといった物か。
鍵は国王が管理しているだろうな』
まあ俺には関係ないけど。
鍵穴に俺の魔力を少し流して誤作動を起こして道を開ける。
『なかなかに複雑な仕掛けだな。
しっかり守られている』
ゴゴゴと音を立てて祭壇が動き地下へ続く階段が現れた。
神聖な空気が強烈に漂う。
チリひとつ無い真っ白な階段を降りて行き大きな両開きの扉が現れた。
扉には魔法陣が刻まれており固く閉ざされている。
この魔法陣を読み取るとこれも特殊な仕掛けがあるのがわかった。
『あるパターンの魔力をこの魔法陣に流す事によって扉は開かれる仕掛けか』
これは面倒な仕掛けだ……。
魔法陣を完全解析してパターンを割り出せる事は出来るけどこれは恐ろしく複雑で精密な魔法陣だ。
扉の前に浮かびその魔法陣を観察してわかった事は、これは神級に匹敵するもので迂闊に触れて良いものではなく、それを犯した者は時の檻に閉じ込められ、止まった時の中で死ぬ事なく永劫に囚われ続けるという。
まさに地獄だな。
これ程の魔法陣を組み上げられるんだ、ただの存在じゃないだろう。
魔法を研究しまくった俺は勿論この魔法陣に興味を持つ。
何としてでも完全解析して墓参りを果たそうと心躍っていると、何かが階段を駆け下りる音が聞こえてくる。
『夢中になり過ぎた……』
俺の悪い癖だ。
一度集中すると周りが見えなけなる。
改めて気配を探ってみるとこの塔は包囲されていた。
サクッと墓参りしてお暇しようと思っていたのに……。
階段を降りてきたのは白銀の立派な鎧を身に着けた集団だ。
多分王直轄の騎士団かなんかだろう。
その集団から一人の男が進み出る。
かなりの手タレだな。
隙が全く無い。
「黒衣の魔導師よ、ここは偉大なる御方が眠る場所。
ここを破壊する訳にはいかないんだ。
大人しく連行されてくれるよな?」
そう言って騎士は剣を抜く。
俺としても大切な仲間が眠るこの場所でやり合おうなんて考えていない。
転移して逃げてもいいがここは大人しく従おう。
『わかった。
付いて行こう』
男は素直に従う俺に頷くが、必死に抑える怒りと殺気が僅かに漏れている。
後ろに居る騎士達はそれを隠す様子は無いけど。
俺は空中に漂いながら騎士に連れられ塔を出るとかなりの数の兵士達が待ち構えていた。
その奥では魔導師達がかなりの数居て魔法を展開している。
この塔を包み込んでいる強力な結界はその魔導師達によるものか。
結界は表に出てきた俺を中心に集束して包む。
あれだけの魔導師が束になって作った結界だ、馬鹿にはできない。
『クックックックッ……』
思わず笑みが溢れる。
「何を笑っている」
さっきの騎士が笑う俺を睨みつける。
『済まない。
つい嬉しくてな』
俺の答えに怪訝な顔をする。
この国はちゃんと育っている。
俺達の第二の故郷、守った国がちゃんと大きくなっている事が嬉しくないわけない。
「このまま処刑場へ連行する。
無駄な抵抗はするなよ」
『安心しろ。
抵抗するつもりなど無い』
そうやり取りをしていると奥の兵士達がざわめく。
兵士の壁を分かち現れたのは虹色に輝く鎧を纏った男達3人と、その中心には豪華な衣装を身に纏った老人が一人。
俺れを取り囲む騎士達は現れたその者達を見て驚き跪く。
「そやつか、我が国の守護神たる勇者様達が眠る神墓に侵入した愚か者は」
「ハッ!!
処刑場へ移送中で御座います!!」
「そうじゃな。
神域たるこの場を汚すわけにはいかん。
じゃが先ずは何者か検めてからじゃ。
その者、何処の国の者だ」
何処の国のものと言われても……、今は秘境に住んでるし秘境はギリギリロイツェン王国の国内だし、この体になる前もロイツェン王国に属していたし……。
なんと言うべきか……。
やましい事は……今は特に思いつかないし素直に答えるか。
『ロイツェン王国だ』
そう答えると俺の側に居る騎士達がギリリt奥歯を噛み締め怒気を表す。
「我が国の民と言うか」
老人は鋭い目つきになり重い空気を発する。
「ではこの神墓には何をしに参った」
『墓参りだ。
ついでにずっと渡せなかったものを供えにな』
「墓参りか。
確かにここには勇者様方御身が眠っておられる。
じゃがここは代々王家の人間しか入れぬ決まり。
どうやって侵入したかわからんが貴様が来ていい場所では……な……」
怒気を膨れ上がり興奮する老人は突然怒気を収め呆然とする。
その様子に騎士と兵士は困惑する。
だけど俺はそんなの気にしていられなかった。
微かだった勝治の気配が巨大になり近くに感じる。
居る。
そう確信して必死に探す。
突然に頭の中に声が響く。
『弘樹……久しぶりだな』
これは紛れもない勝治の声だ。
神聖な気配が俺を包み込む。
『来るのがおせーよ。
俺達がどれだけ待ったと思ってる。
王には伝えといた。
直接俺達の眠る墓に来てくれ。
そうすればゆっくり話せる』
そう一方的に言って気配は途絶えた。
俺は呆然とし、老人は魔導師たちに命令して俺を包んでいた結界を解除させる。
結界が解かれると老人は俺の前に達、跪いた。
「陛下!?何を!?」
俺以外のその場にいる全員が驚愕する。
『皆が驚いている。
立って欲しい。
勝治に俺の事を聞いたかもしれないが畏まられても困る』
「申し訳ありません!」
老人改め、王は直ぐに立ち上がる。
「直ぐに勇者様の墓前にご案内致します!
お前達は付いて来なさい。
他の者達は通常業務に戻りなさい。
この御方はワシの客人じゃ」
虹色の鎧の3人だけを付いて来るように言って騎士と兵士、魔導師達を解散させる。
「早速行きましょう」
王と3人が前を歩き俺はその後ろをついていく。
階段を降りて例の扉の前に立つと、3人は扉に手を付け魔力を流し始める。
すると、扉の魔法陣が輝き始めガチャンガチャンと動き始める。
どういう仕組みだ?と観察していると王が教えてくれた。
「彼らは勇者様方の子孫でございます」
『マジで!?』
驚きマジマジと見てしまう。
確かに彼等の魔力を注意深く感じていると本当に極僅かだけど勝治、橙子、尊の気配を感じる。
彼等が子孫か……。
感慨深い。
しばらくその感情に身を任せていると、魔法陣がガチャンと大きな音を立てて扉が開いた。
ギギギギと軋む音を立てながらゆっくりと開いていき、物凄い巨大で神聖な気配が漏れ伝わってくる。
『ん?』
最後に勝治達とあった時ここまで気配大きかったっけ?
疑問に思いながらも扉を潜り中に入っていく。
神聖な空気に満ちた空間だ。
不浄となってしまった俺には少し辛いと思っていたら巨大な気配は抑えられ和らいだ。
勝治達が眠る部屋の中は淡い空色に輝き、棺は神々しさを放っている。
棺の周りには豪華な品物やかつて勝治達が使ってい武具や道具が安置されていた。
3人はそれぞれの棺の前で跪き祈りを捧げ、王もその後ろで祈りを捧げている。