最悪の8種
広間でワクワクと待っていると、侵入者はとうとう現れた。
殆ど人間と変わらない外見もしているが頭には巻角が生えており、背中には翼膜も見える。
そして、なかなかに鋭い気配を放っている。
「面白い気配を感じて来てみればリッチか。
だがただのリッチではないな?」
そいつは嫌味ったらしくニヤリと笑う。
「一つ勝負をしないか?
お前が負けたら我の下僕となれ」
『お前が負けたら?』
俺の問にフンッと鼻で笑う。
「我が負けたら我がお前の下僕となってやろう」
微塵も負けると思っていない面でそう答える。
『お前を下僕にしても面倒なだけだ。
片方の角を貰おう』
俺がそう言うとソイツは気配を増大させ鋭さが増す。
人間と同じ肌色だったのかどんどんと赤黒く変色していく。
「あまり調子に乗るなよ?
ただの遊びと思っていたが辞めだ。
身の程を弁えぬ馬鹿は要らぬ。
散れ」
そう言って極大の魔法陣を出現させる。
どうやら彼にとって角はとても大事なようだ。
それにしてもこの魔法陣だ。
いきなり極大魔法とは凄い。
この辺り一体が消し飛ぶだろうな。
俺は悠然とそれを観察する。
「我の魔法に怖気づいたか?
ますます小物よ。
消えろ」
魔法は直ぐ様完成し魔法が発動する。
極大魔法を直ぐ様完成させるとは実力た申し分ないみたいだ。
リッチとなる前の俺に匹敵するか?
魔法陣から膨大な炎が吹き出しこの広間一体に広がり津波のように俺に押し寄せる。
『規模も威力も申し分ない。
これならば俺に多少はダメージを与えられるだろうな。
俺が何もしなければ』
俺も巨大な魔法陣を出し魔法を即座に完成させる。
俺の目の前の空間が歪み、黒い口を開ける。
迫り来る猛炎は空間に出来た黒い口に吸い込まれていく。
これでは埒が明かなと判断した侵入者は魔法を辞める。
『なんだ?もう終わりか?
次は俺が行くぞ』
異空間へと繋がるゲートを閉じて次の魔法を発動する。
居城を壊して元に戻すのは面倒くさいからなるべく壊さないようにコンパクトに行こう。
椅子に座っている俺の足元に魔法陣が現れ、魔法陣内に黒い影げ広がっていく。
そして、魔法陣内が黒い影で満たされた時そこから漆黒の触手が何本も生えてくる。
『沢山生えているが今回は一本だけでやろうか』
たくさん生えた触手を一本を残し影へと戻す。
そして残した触手は侵入者へと襲いかかった。
侵入者は翼を広げ高速で飛び回り触手を回避していく。
叩き落とそうと触手は正確に追い、それをスピードで躱しながら徐々に俺に迫ってくる。
『一本では余裕か。
流石だ。
では一本追加するぞ』
足元の広がる影からもう一本が生え侵入者に迫る。
それでも善戦する侵入者。
高速で繰り広げられる攻防についつい楽しく見入ってしまった。
楽しさの余り気持ちか滾り少し力が漏れ出る。
この広間に広がる俺の気配と魔力。
圧倒的な力を感じ取った侵入者は驚愕し一瞬で距離を取る。
『すまんすまん。
つい楽しくなってしまってな。
気持ちも落ち着いた。
再戦といこうか』
触手がゆらゆらと侵入者に迫る。
「ま、待て……。
なんだ今の力は……。
魔大陸の八王に匹敵する今の力はなんだ!!
何者なんだ!!」
侵入者は額から汗を垂れ流し俺に問う。
魔大陸とは俺達召喚された勇者組と邪神が死闘を繰り広げた所だ。
そこは俺達と邪神の戦いのせいで荒廃したと思うんだが……。
『少し気になる事が出来た。
その前にお前の質問に答えよう。
その後は俺の質問に答えろ』
侵入者は一回だけしっかりと頷いた。
『俺は見ての通りリッチだ。
名はワーズと名乗っている。
この地で5000年の眠りからついこの前覚めたばかりだ。
俺の力についてだったな。
それは種族によるものだとしか言えんな。
俺はリッチだが最終進化まで遂げている』
リッチとなって魔法の研鑽を積んでいた600年で俺は最終進化を遂げこの力を手に入れた。
この力を手に入れても俺の欲しいものは何の手に入らなかったけど、と自虐的な笑みが浮かぶ。
「最終進化……?
エルダーリッチということか。
どおりでその力を……」
『ん?何を言っている。
エルダーなど通過点でしかないぞ。
俺はリッチロードだ。
エルダーなどひと捻りしてくれる』
侵入者は赤黒くなっていた肌が元に戻り完全に戦意を喪失していた。
その様子に俺も聞きたいことが出来て余興なんてどうでも良くなった。
触手を引っ込めて魔法も解除する。
『質問には答えた。
次は俺の質問に答えて貰おう。
魔大陸は勇者達と邪神の戦いで荒廃しもう住める土地ではなくなったと思うが?』
「3000年程でで土地は再生し約2000年前から魔族たちは魔大陸に住んている……」
あぁなるほど。
確かにそれだけの時があれば再生するか。
これはうっかりしていた。
5000年ただ寝ていただけだからいまいち実感ないな……。
『次の質問だ。
魔大陸の八王とはなんだ?』
「……魔大陸を統べる圧倒的な力を持った8種の魔王だ。
魔大陸には8つの国があり八魔王がそれぞれ国を支配している。
人間共は最悪の8種と呼んでいる」
『ほぉ~。
俺が眠ている間にそんな事になっていたか。
その八魔王について詳しく教えろ』
「……第一の王【不死王ヴァンデッタ】このお方はヴァンパイアの頂点でノーライフキングとなった最初の魔王。
第二の王【暴虐のディグガ】このお方は悪魔族の頂点でデーモンロードとなった次の魔王。
第三の王【無慈悲のサヴァル】このお方は魔人族の頂点でデミカオスとなった魔王。
第四の王【強欲のゲーテナ】このお方は魔女族の頂点でデスウィッチとなった魔王。
第五の王【暴食のジュ】このお方は魔物を統べる王でエビルディザススライムとなった魔王。
第六の王【死王イムルル】このお方はアンデッドを統べる王でワイトキングとなった魔王。
第七の王【崩滅のガドヴェルド】このお方は亜竜を従える邪竜の魔王。
第八の王【隠匿のべギル】このお方は謎に包まれた魔王ですが実力は他の魔王に認められている列記とした最後の魔王です」
ふ~む。
なんとも遊び甲斐がありそうなメンツだ。
『で、コイツはただ魔大陸を支配しているだけじゃないんだろ?』
「その通り……。
お互いは不可侵としていても虎視眈々と互いを潰す機会を伺っていて、人間の住むこの大陸も狙っている……。
その目的は魔王それぞれで違うが……」
なるほど。
なら俺はかつての仲間が眠るこの大地も守らねはならない。
クク……ガキ共を教育してやらないと……。
体から力が少し漏れ出る。
それに侵入者の男は顔を青ざめて見ている。
『もう帰るがいい。
そしてお前の主に伝えろ。
この地を汚すものは容赦しないと。
遊んでほしければ相手にしてやると。
さあ行け!!』
侵入者は脱兎の如く逃げ出した。
さてどうしたものか。