攻撃されました
どれくらい時が経ったのか知らないけど久しぶりの人である事には違いない。
わざわざ秘境の奥のこの居城に来てくれたのだ。
もてなしていやらねば。
この部屋に積もりに積もった埃を魔力で集め空中で燃やし、聖魔法で空気を清浄化する。
序に瘴気も祓われた。
ちょっとした演出もあってもいいかもしれないな。
『さあ準備は整った』
椅子に座っったまま肘掛けに肘をついて人間を待つ。
段々と近づいて来る生命力に気持ちが高ぶる。
そして、遂にこの部屋の前までやってきた。
大きいなドアがギイイイと軋む音をさせながら開く。
中に入ってきたのは4人の人間だった。
重鎧を身に纏い大きな盾を構え辺りを警戒するのを先頭に、その後ろには鎧を纏い剣を携える騎士風の男。
その後ろには白衣の聖職者風の女が一人と黒いローブに大きな杖を持った初老に見える男。
杖の先端から魔法で明かりが灯されていて、パーティーの周囲を明るくしている。
全員が部屋に入ってきた所で俺の魔力で扉を閉め、火の魔法で室内全体を明るくする。
人間達はこの様子に直ぐに反応を示し、警戒を深め奥の椅子に座る俺を睨みつける。
『よくぞ来てくれた人間よ。
歓迎しよう』
俺の纏う黒衣から黒い陽炎が立ち上がる。
どうだこの演出。
黒衣のフードの中でニヤリと顔が歪む。
すると、後ろに居た大きな杖を持つ男が呪文を唱え魔法陣を展開する。
発動した魔法陣の形状からして爆炎の魔法だ。
重鎧の男は白衣の女と杖の男を守る様に立ちはだかり、騎士風の男はいつでも動けると言った様子だ。
『ほぅ。
血の気が多いようだ。
良いだろう。
少し遊んでやろう』
直後に魔法が完成し、魔法陣から巨大な炎の玉が現れ俺に向かってくる。
俺は椅子に座ったままその炎の玉を見て、避けもせずにこの身に受ける。
俺を中心に炎の玉は爆ぜて熱と爆風が襲う。
中々の威力があるが俺には一切のダメージが無い。
賢者だった頃のスキルとリッチと変化し進化した種族の特性で一定以下の魔法のダメージは無効化されるのだ。
荒れ狂う炎と暴風か収まり視界が開けると、目の前には剣を振り上げた騎士が居た。
一瞬の隙に剣は俺の頭目掛けて振り下ろされる。
それを干乾びた細腕で受け止める。
「な!?」
騎士の男は剣を止められた事に驚愕した。
『なかなかにいい戦法だ。
思い出すなぁ……』
俺がまだ人だった頃、世界を救う為に戦いに明け暮れていた時、俺の魔法で先制攻撃をして仲間の勇者が2撃目をすかさず叩き込むなんて戦いをした事もあった。
それが通用したのは邪神側の下級幹部程度だったけど。
そう思っていると、俺の周囲が白い神聖な光に包まれる。
これは確かアンデッド特攻効果のある神聖結界だったか。
多少チリチリするものの特に気にするほどではない。
普通のリッチ程度ならこのこの特級聖魔法結界で跡形も無く消滅しただろうが進化を遂げている俺としては問題ない。
それに賢者だった頃のスキルもあるしそれも相まって本来弱点となる聖魔法は俺の弱点とはならないのだ。
『ふむ、中々に熟練された良いパーティーだ』
剣を放し神聖結界の中で彼等に問いかける。
俺の様子に人間達は呆然としていた。
『まだ遊ぶか?』
俺の余裕な様子に騎士風も男は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「バケモノめ……。
まだまだこれからだぁぁぁぁ!!」
騎士風の男は直ぐに俺から距離を取り何やら魔法を発動するようだ。
剣に白い光が集まっていき、剣自身が発光する。
杖の男もさっきの爆炎の魔法よりも大きな魔法陣を展開している。
確かあの魔法陣は火竜のブレスとも称される火の極大魔法だったか。
白衣の女も巨大な魔法陣を展開している。
確か邪滅の光矢だったか?
中々に良い魔法だ。
てかこいつらはレベルが高いな。
最初に魔法が発動したのは白衣の女のだった。
魔法陣から無数に大きな光の矢が出現し、波状攻撃してくる。
光の矢は俺を貫き串刺しにする。
次に騎士風の男が神々しく輝く剣を俺に向かって横薙ぎに一閃とする。
すると、眩いばかりの光がこの広い空間を埋め尽くさんばかりに輝き襲い掛かってくる。
その光は俺を包み黒衣を剥がしていく。
最後に杖の男の魔法が発動し、魔法陣から青白い炎が竜のブレスのように襲い掛かってくる。
俺を包み座っていた椅子を溶かし、後ろの壁も溶かして貫通する。
この死んでる体に熱さを感じさせるような猛烈な炎だ。
椅子が溶けてしまった事で体制を崩し床に倒れてしまった。
魔法が止み床などが炎で燻っている中、黒衣が剥がされ串刺しの傷跡が残り全身が干乾びている俺がそこに倒れているのを見て人間達は歓喜する。
「よし!!
これで依頼は達成だ!!」
「こんな秘境の奥にこんなダンジョンが発見されるとはな。
強力なモンスターが大量発生する前で良かったぜ」
「早く帰って報告しましょう」
「そうだな。
さっさとコイツを解体して魔石を持ち帰ろう。
奥の手を使ってやっと倒せたんだ、いい魔石が手に入るだろうよ」
意気揚々と相談している背後で俺は魔力を纏い黒衣にし宙に浮き上がる。
『残念だけど魔石はあげられないなぁ』
俺の声に人間達は振り向き一気に絶望の顔となった。
「死んでないのかよ!!」
「もう魔力は底をついてますぞ!!」
「私もです!!
回復魔法を少し使えるくらいしか……」
「クソッ!!
力が温存されてるのは俺だけか……。
俺が食い止めるからお前たちはに……げ……」
俺は取り敢えず闇魔法の影操りで人間達の影に干渉して拘束する。
麻痺の効果を付与して。
『お話をしましょうか』
黒衣のフードから覗く俺の歪な笑顔のに人間達は恐怖した。