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第2話 メイドのスカート丈はロングが良いのかミニが良いのか……それはとても哲学的な問いだと思う

 万能メイドに必要な能力は何なのか?


 掃除? 洗濯? 料理?


 無論、この三つも必要だろう。

 というよりこの三つの能力はメイドとしての条件であり、万能メイドの条件ではない。


 では万能メイドに必要な能力とは何か。

 敢えて言わせてもらおう。


 それは戦闘能力だ。

 どんな敵からも主人を守り、屋敷に侵入した賊をお掃除する能力。

 万能メイドには必要不可欠な力。


 大概の創作物では、万能メイドは最強キャラの一角である。

 万能メイドが主人公になることはないため最強の座こそ譲ることにはなるが、最強()の一人である。


 作中で十指には入るだろう。

 作中、ということは作者が作り出した世界のすべてだ。


 つまり万能メイドを目指す上で、私は最低でも世界で十指の実力者にならなければならない。


 この世界には、勇者だとか聖女だとかいう化け物がいるらしい。

 そんな者たちに勝てるかどうかはともかくとして、一対一で互角に渡り合える実力を身につけなければ万能メイドとは言えないだろう。


 私は前世で多くの格闘技や武術を学んだ。

 しかし一発の銃弾に敗北した。


 勇者や聖女とやらがどれくらい強いのかは分らないけれど、多分銃弾の百発や二百発どうってことないに違いない。

 そういうわけで取り合えず銃弾に負けないくらい強くなろうと思う。


 この世界に銃弾があるかどうかは知らないけれど。


 さてどうすれば強くなれるのか。

 それは実戦あるのみだと思う。


 ぶっちゃけ、最近物足りない。

 お父様は筋肉ダルマ猫なのでかなり強いのだが、今はもう私の方が強い。

 お父様が雇った武術講師も大したことはない。


 もっと強い講師を連れてきてと強請っても「シャルロット、お前は女の子だろう?」と言われてしまう。

 いや、女の子だよ?

 女の子だけどさ、時代は男女平等でしょ?

 女も戦えなきゃいけないでしょう!!


 と言ったが、男女平等の概念はこの世界には新しすぎたらしく伝わらなかった。

 お父様は私には「普通のお姫様」になって欲しいみたいだ。


 まあ親の意向を完全に無視するのも親不孝だし、普通の〝万能姫メイド〟になろうとは思う。

 姫メイドが存在するのは分からないけど、姫騎士が存在するならメイドの上位互換として姫メイドがあっても良いはずだ。


 万能姫メイドならぬ職業に、〝普通の〟と付けて良いのかどうかはさておき……

 姫だろうが姫じゃなかろうが、弾丸で死ぬようでは話にならない。


 話は戻すが、実戦だ。 

 というわけで、私は夜の森にやってまいりました!


 夜の森!!

 なんか、テンションが上がる。


 ちなみに今、私はメイド服を着ている。

 着れなくなったドレスを改造して作った、自作戦闘用メイド服である。


 私にはまだ御仕えするご主人様、お嬢様がいない。

 が、私は形から入る方なのだ。


 やっぱりメイド服を着ると、メイドになった気分になれて楽しい。


 ちなみに皆様が気になっているスカート丈は、取り敢えず膝より少し上くらいだ。

 ロングにするべきか、ミニにするべきか。

 悩んでいる。


 さてさて、本日の相手はお屋敷近くの森に住み着いた蜘蛛の魔物だ。

 下半身が蜘蛛、上半身が人間の女性の魔物である。

 現代日本語訳的には、『アラクネ』が一番適切かもしれない。


 私は気配を消しつつ、森の中を慎重に歩く。

 森の中には所々糸が張られている。

 おそらく、この糸に触れると振動がアラクネに伝わり……私の存在がバレる。


 何でもアラクネは単体ではAクラス、群れ全体を含めればSクラスの非常に強力な魔物らしい。

 いくら私でも下手すれば死ぬ。

 だからできるだけ奇襲で倒さなければならない。

 ゆっくりと、身長にアラクネの巣に向かう。


 しばらく進むと不自然に開けた場所に出た。

 そこには巨大な蜘蛛の巣が張られていて、その中央にアラクネがいた。


 下半身は蜘蛛、上半身はすっぽんぽんの女性。

 ……恥ずかしくないのだろうか?

 まあでも知能とかはないらしいし、おっぱい丸出しでも恥ずかしさはないんだろうね。

 全裸を恥ずかしがる雌蜘蛛というのも、おかしな話だ。


 幸いなことにアラクネは出産の最中だった。

 アラクネの生態は蜜蜂に近い。

 雌の働き蜘蛛をたくさん産み、それを使役する。


 さすがのアラクネでも出産の時は無防備。

 つまり今がチャンスだ。

 私は剣に炎を纏わせ、飛び出した。


 そのまま無防備なアラクネの背中に襲い掛かる。

 が……


 プシュー!!


 そんな間抜けな音がして、気付いたら私は空中で宙吊り状態になっていた。

 周囲を見渡し状況を確認する。

 どうやら待ち構えていた兵隊蜘蛛に、糸で拘束されてしまったらしい。


 気付かれてたみたいだ。

 さすがAランクの魔物。

 

 卵を産み終えて、後ろを振り返ったアラクネさんと目が合う。

 ニターっと、アラクネは笑った。

 背筋にゾクゾクしたものが走る。


 これ、ヤバいぞ。洒落にならない。



 ………………

 …………

 ……



 なーんてね。

 対策は考えてある。


 私は炎の魔術を操り、糸を焼き払った。

 いくら頑丈でも火で燃やせば、どうということもない。


 スカートの中に手を突っ込み、隠してあったナイフを八本、両手の指の間に挟み、投擲。

 迫りつつあった八匹の兵隊蜘蛛を倒す。


 そして剣を抜き放ち、一気に距離を詰めてアラクネの首を斬る。

 女性の生首がコロコロと転がるのは少しホラーだ。


 よしこれで討伐完了……うん? まだ動いてるね。

 あ、そういえば下半身の方が本体だったっけ。


 私は下半身の蜘蛛の方を剣で切り裂く。

 するとアラクネの動きが止まった。


 親蜘蛛が死んだことで、今にも私に襲い掛かろうとしていた兵隊蜘蛛たちはあっという間にどこかに散っていく。

 薄情なものだ。




 


 さて、今回の私の目的はただ実戦経験を得るためだけではない。

 アラクネの糸を得ること、それが真の目的だ。


 「ふんふーふふふふ♪ ふんふーふふふふ♪ ふーふふーふ、ふんふんふん♪」


 私は某糸巻き巻きの歌を鼻歌で歌いながら、糸を回収する。

 

 有名な話ではあるが、蜘蛛の糸は非常に丈夫だ。

 糸の強度は同じ太さの鋼鉄の四、五倍。伸縮性はナイロンに匹敵するか、またはそれ以上。

 直系一センチもあればジャンボジェット機すらも捕まえられる。


 とはいえこれは普通の蜘蛛の話。

 普通の蜘蛛よりもアラクネは遥かに強い糸を生み出すことができる。

 事実、私は一時的とはいえ完全に緊縛されてしまった。なんかエロい。


 試しに引っ張ってみても、中々千切れない。

 とんでもない強度だ。

 

 これらの糸を回収し、錬金術を使って加工し……耐熱性を強化する。

 そうすれば絶対に切れない糸の完成だ。


 糸使いのメイドキャラ……は私の脳内ライブラリーには記録されていない。  

 が、それを抜きにしても糸使いはカッコイイと思う。

 

 まあカッコイイというのもあるが、実際持ち運びしやすいのも本当だ。

 巻いてしまえばコンパクトになるし、応用が効く。

 束ねれば鋼鉄よりも丈夫だから、攻撃にも防御にも使える。


 この糸でメイド服を作成すれば防御力は無論、糸すらも尽きてもう手も足も出ない……

 と思わせてからの逆転だってできる。

 まあその時は全裸になってしまうが、多少のサービスシーンは万能メイドのお勤めの一つだ。


 メインウェポンは箒剣。

 サブウェポンは投げナイフ。

 そして奥の手は糸。


 ……やばい、カッコよすぎる。

 私はニヤニヤと妄想しながら、帰り道を急いだ。



>>タイトル


作者はミニが好きです


>>つまり万能メイドを目指す上で、私は最低でも世界で十指の実力者にならなければならない。


まあそもそも作中登場人物がまだ十人に達していないという……


>>勇者や聖女とやらがどれくらい強いのかは分らないけれど、多分銃弾の百発や二百発どうってことないに違いない。


勝手な偏見と思い込み。だが、実際どうってことない設定です。


>>この世界に銃弾があるかどうかは知らないけれど。


原型は発明されていますが、魔法があるのと、まだロングボウやクロスボウの方が武器として優秀なのでメジャーではないです。


>>まあ親の意向を完全に無視するのも親不孝だし、普通の〝万能姫メイド〟になろうとは思う。

 姫メイドが存在するのは分からないけど、姫騎士が存在するならメイドの上位互換として姫メイドがあっても良いはずだ。


姫騎士も割と謎な職業。


>>糸使い


カッコイイよね、糸使い

隠れた実力者が使うイメージ

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