人形好きの新社会人
さぁ、新小説・・・! 我慢できずに話作っちゃいました・・・。
「ん・・・朝か〜」
季節の変わり目。私はベッドから降りてカーテンを開き、日の差し込む部屋に振り返る。
「みんなおはよう! 今日もいい天気だね〜」
ベッドや棚、机にテーブル、テレビ台の横等、大量に置かれた、私が大好きな人形達に日課の挨拶をする。
今日は4月1日。だんだんと暖かくなってきた今日この頃。今日から人生初めてのお仕事です!
「さて、準備しなきゃ」
クローゼットから新品のスーツを取り出し、着ていく。きっちり、かっちり。最初の印象が大事だからね!
「んーっ! 良し、行くぞぉ! 今は7時・・・?」
出掛ける準備も整い、いざ行こうとした所で、時計を見る。朝8時。・・・一時間も寝坊してる。
「あああ! はや、早く行かなきゃっ!?」
寝坊してるなんて分からなかったよおお!? 直ぐにアパートの一部屋を飛び出し、階段を降りる。
「おや、お出かけかい、ゆめちゃん」
その先にいたのは、朝の掃除をする大家のおばあちゃん。
「あ、大家さん! 今からお仕事です! 寝坊したので急いでてっ! それと、私の名前は夢に月って書いて夢月ですよ!」
「あらあら、ごめんなさいねぇ、ゆめちゃん」
またゆめちゃんって・・・。もういいや。
「あぁもう! それじゃ行ってきますね!」
「いってらっしゃい」
手を振って、走る。ううう! 間に合ってええ!
ーーーー☆
初出勤は無事終えた。何とか間に合い、汗をかきながらも、挨拶を終え、仕事の説明や色々仕事を教えて貰い、くたくたの帰り道。少し暗くなってきて、街灯もつき始めた。
「はぁ〜・・・疲れたぁ。早く家に帰ってみんなに癒してもらわなきゃ〜」
誰に言うでも無く、言葉に出す。住宅街だけど、この時間に人は殆どいない。
人がいた所で言うことには変わりないんだけど。
少し開けた通りに出て、信号待ちをする。
青に変わり、渡り始める。もうすぐ家に着く。少し早歩きになって・・・突然大きな声で呼び掛けられる。
「そこの人、危ない!」
「へ?」
後ろを振り返り、銀髪のお人形さんみたいな女の子が私から見て右の方を指さしながら、走ってくる。
その方向を見れば、大きなトラックがスピードを落とさずに迫ってくる。その瞬間、体が硬直してしまう。あ、え・・・? う、動いて、早く、このまま走れば避けるのは間に合うのに・・・!
バキバキバキ! と変な音と一緒にトラックの急ブレーキ音が聞こえる・・・だけどもう間に合わない。
「まに、あええええ!」
女の子が叫び、ドンッ! と体に横から衝撃が走り身体が浮く。そのまま大きく吹き飛ばされ、地面に落ちて転がる。
「あ、な、にが?」
トラックに轢かれなかった。誰かが私を助けてくれた。そこまで考えて、最悪の想像をしてしまう。最後の声からして、さっきの銀髪の女の子だ。私の、代わりに・・・!
「あ、ご、ごめ、ごめんなさい・・・ごめんなさいごめんなさい・・・!」
腰が抜け、その場で動けずに・・・とにかく謝る。私のせいで、あの子が・・・!
「はぁ〜・・・無事だった?」
聞こえるはずの無い声。思わず、ばっと顔を上げその声の主を見る。夕陽の光を反射して煌めく銀髪を持つ、人形よりも美しい、少女。その子が、五体満足で私に手を差し伸べてくれる。
「はぇ・・・な、何で? だ、大丈夫なの? 生きてるの?」
「え。あ、あぁ。大丈夫かどうかはわたしの台詞なんだけど・・・大丈夫だよ。それより怪我はない? 結構手荒に蹴り飛ばしたけど」
「蹴りっ!?」
「う、うん。脇腹の辺りをドロップキックしたんだけど」
な、なん!? 脇・・・言われてみれば凄い痛い!
しかも、腕擦りむいてる!
「あぁ・・・怪我してるね。ごめんね。ちょっと動かないでね。消毒して、絆創膏を貼って・・・はい。応急処置。ひどい怪我ではないけど、念の為病院とかいってね? ドロップキックしたし身体に異常があるかもしれないし・・・ね?」
「あ、ありがとう・・・」
「運転手さんがいい人で良かったよ。そこで心配そうに待っててくれてるよ。事故になりかけたんだし、多少、慰謝料とか貰っていいんじゃない? わたし急いでるから、最後まで付き合えないけど、ごめんね! じゃあね!」
そう言って、走って立ち去る女の子。
お礼を言うことも出来ずにその後ろ姿を見送る。・・・あ。トラックの運転手さんにちゃんと怒らなきゃ。
慰謝料も貰えるなら貰おう。訴えるのは、こっちとしても負担があるからね。
ーーーー☆
アパートの一室。私の家へと帰り、ベッドへ倒れ込む。
「はぁぁぁ・・・さっきの子、凄い可愛かったぁ・・・お人形さんみたいで・・・やっぱり動いてる可愛いのもいいよね〜・・・」
ベッドから起き上がり、スーツを脱いで、消臭剤をかけてクローゼットに。週末にクリーニングに出さなきゃ。地面に擦れて、汚れちゃった。一応予備は準備してあるからいいけど・・・。
そこまでして、膝から崩れ落ちる。ここで完全に緊張の糸が切れた。はぁ・・・うう、生きてる。良かった・・・良かったよぉぉ・・・! あの子がいなかったら、そのまま・・・。
・・・考えるのやめよ。・・・助かったんだから。
「お風呂入ろっかな。明日も仕事だし」
脱いだまま、着替えを用意して、脱衣場へ。下着を外して、いざ、入ろうとした所で、インターホンが鳴る。
あれ・・・何か注文した覚えないんだけどなぁ・・・? 大家さんかな? 誰がいてもいいように服を着て・・・
「はーい」
「すいません、宅配でーす」
「はーい・・・」
宛先はここで合ってる。私の名前も糸永 夢月で、合ってる。
とりあえず、ハンコを押して、受け取る。
「ありがとうございましたー!」
「ありがとうございます〜」
がちゃん、と扉が閉まり、鍵を閉める。
とりあえず、開けるのは後にしてお風呂を済ませよう。
ーーーー☆
「ふぅ〜、ちょっとヒリヒリするけど・・・入らないと汗臭いからね。絆創膏取り替えよ」
救急箱を取り出して、絆創膏を貼り直す。
「さぁ、本題はこの箱なんだけど・・・何が入ってるのかなぁ〜っと」
ベリベリー! とガムテープを剥がして、ダンボールを開ければ、中には眼鏡のようなもの。
「なにこれ。ん、手紙?」
眼鏡の他に、封筒と本が一緒に入っていた。本にはVRグラス説明書と書かれている。うーん? VR・・・。あ。え? いやいや・・・。最近話題のゲーム、Destiny Origin関係かもしれない。いや、でも去年ベータ開始時に貰えなかったから、諦めてたんだけど・・・?
『抽選の結果、糸永 夢月様が新たなVR機器テスターとして、選ばれました! 第三陣開始後、同梱のVRグラスを装着し、【コネクト】と口に出して下さい。それにより、DOの世界へとご招待させていただきます! 尚、テスト期間は一ヶ月とさせて頂きますが、皆様のお声で改良させてもらうVRグラスを再度プレゼントさせて頂きます! 是非ともご協力下さい! 細かい設定などは同梱の取り扱い説明書をご覧下さい。それでも分からない場合は次の番号に───』
おお〜! 無料でゲームさせてもらえるんだ〜? しかも、その後も継続して出来るなんて・・・。運が良すぎるね! 命まで救ってもらって、抽選にも当たる。会社の先輩も可愛いし・・・なんて、奇跡的な日なんだろ!
DO・・・DOね!
元々応募した理由は、人形のモンスターがいるって言う話だったから・・・一目見たくて応募したんだっけ?
そっかそっか〜。この、第三陣っていつからなんだろ。・・・調べよう。
カチカチっと。うんと・・・4月1日から。・・・今日じゃん!? な、そ、そっかぁ。じゃあ早速設定しよう。
オンラインに繋いで、登録。性別、年齢、身長、体重・・・結構細かく入力する必要があるんだ。んと、あ、これで終わり? 後は、オンラインから外しても、この眼鏡? はちゃんと繋がったまま・・・か。機器側の設定に時間がかかるみたいだから、その間、序盤の情報を仕入れよう。こういうのはかなり大事だと思うからね。
さて、ふむふむ・・・ログイン直後は何も無い草原か、荒野に放り出されると。
それで、しつこくチュートリアルボタンが視界に入ってきて点滅し、押さないと光の強さがどんどん強くなってくると。・・・どうでもよくない?
押したら、体を動かし、慣れた所で訓練用ゴブリンが召喚される。地面に突き刺さっている筈のランダムな武器を拾い、戦闘に入る。どうしよう。中々大変そうだなぁ・・・。えっと・・・基本的なチュートリアルはここまでで、後は種族毎に変わってくると。例として妖精族は初期の戦闘能力が皆無なので、上記の戦闘チュートリアルは免除される(代わりに魔法を使って的当てゲームをする)・・・か。
因みにチュートリアルをはじめる前に痛覚設定などをする事をオススメする・・・。ふむふむ。痛いのは嫌だから、一番下にさげよう。
よし、こっから先は自分で頑張ろ。
他に何か見るものは〜。知っておいた方がいい有名クラン、二つ名持ちの勇姿を貼るぞっ! の二つが気になるな〜。クランって集まりの事だよね。
えっと、双翼騎士団、揺り籠、鶏肉キングダム、防人、竜の爪、DiceTable。
なんか、カッコイイのばかりだけど、鶏肉キングダムは、はっちゃけ過ぎだと思う。
ふむふむ・・・。
双翼はわかりやすく、協力しあうのが目的のクラン。多数のプレイヤーが属していて、大ギルドの一つ。
揺り籠は勇者に選ばれたプレイヤーが結成した身内クランで参加者は募っていない。へぇ〜。四人だけなんだ。
鶏肉キングダムは情報収集好きの集まるクラン。
ネットで調べても出てこない情報を知りたいのであれば、彼らを頼るべし・・・。ふむ。名前は変だけど、ちゃんとしたクランなんだね。
防人は傭兵みたいな運営。所属しているプレイヤー殆どがタンク系で、雇う事が出来るらしい。お金を払ったら、守ってくれるって事かな。へぇ〜・・・。
竜の爪は戦闘大好きクラン。ダンジョンボスの攻略については、彼らが一番詳しいだろう。ただ、強面のプレイヤーが多く、訪ねるのであれば、勇気を持とう。
えぇ・・・。まぁあまりお世話にならないかな。
最後にDiceTable。ユニーク種族、無属性精霊の【精霊姫】が集ったクラン。双翼騎士団の【戦姫】や無所属だった【狂華乱舞】を取り込み、末恐ろしいチームワークを見せるクランで、男プレイヤーは一人だけ・・・。なんて羨まけしからんっ!
追記:初心者応援を掲げ始めているので、頼るが吉。精霊姫にお近付きになれるチャンスだ!・・・か。
ふーん・・・凄い人なのかな、精霊姫って。
さて、じゃあ勇姿を見ますか。
まずは双翼騎士団のクランマスター【震天動地】フュエル。うぉあ・・・ごっついイケメン。爽やかでは無いけど、なんだろう。厳つくてカッコイイ人。好みは分かれるかもだけど、私はこういう人もいいなって思うなぁ。
んと、元双翼のエース、現DiceTable所属の【戦姫】セリア。はぁぁ・・・! 美女! 切れ長の赤瞳、輝く金髪に一束の黒いメッシュがかかってる。the騎士って感じの人! 真面目そうな彼女に壁ドンされたい・・・! いいなぁ。こんな人を引き抜ける精霊姫ってどんだけ凄いんだろ。
つぎ、鶏肉キングダムのクランマスター【ガリーナは世界を救う】ササミサキ。赤髪でごっつい大剣を持ってるけど、戦姫とはまた違ったイケ女! こんな人が、こんな変な二つ名なのかぁ・・・。笹岬じゃなくてササミ裂きなのかな。あと、ガリーナって何?
防人のクランマスター【攻城兵器】ガンテツ。この人は、震天動地よりもごつくって、筋肉が凄い・・・。鎧を着ててもその力強さを隠せてないなぁ。筋肉好きだったら、この人にメロメロだぁ。
孤高の吸血鬼、DiceTable所属の【狂華乱舞】アリッサ。コッチも金髪紅眼だけど、戦姫よりは可愛い系だね。顔に似合わず、肉弾戦特化でかなり強いみたい。うわうわ・・・どんなシーンなの? 殴られた狼がゴムみたいに伸びきってるけど・・・。この後どうなったの?
後は揺り籠メンバー【紅蓮の竜姫士】フレン。
おぉ・・・竜人ってこんな姿なんだ。可愛いけど、瞳孔が縦長で、まさに竜って感じ。大剣使いで、二刀流・・・? 絶対やばい人じゃん。あ、笑った顔可愛い。って精霊姫が投稿してるし!
最後にDiceTableのクランマスター【精霊姫】アスカ。
ユニーク種族の無属性精霊で、精霊の強みとプレイヤースキルによる近接魔法使い・・・って、あれ? 何処かで見たような・・・。
銀髪に碧眼。幼くも女を感じさせる整った顔。まるで人形みたいに可愛い・・・!
「あ、あああ! えええ!?」
思わず、叫んでしまったけど、ついさっき私を助けてくれたあの女の子だ! 少し大人びてるけど、絶対同じ人だよ! な、なんてこった。名前を聞けずじまいだったけど、お礼は言える! 設定も丁度終わったみたいだし、最初の目標はお礼を言うこと!
あと、出来ることなら、職業は人形使いとかそういうのがいいな。難しそうだけどね。
・・・緊張する。
VRグラスを掛け、横になる。
そして、言葉に出す。
「【コネクト】」
どうだったでしょうか。一話ではゲームを始めない。これは本編の日常VR生活! でもそうでしたねー。そして本編 と同じように書き溜めして、放出する感じで投稿しようと思います。
一部本編と関わるストーリーを想定してますので、ちょーっとこっちの投稿が増えるかも、知れません。
異世界物はどうした、というのはこう・・・あれは息抜きなので。こっちも息抜き、本編も息抜きですけどねっ!
詰まったら、別のを書く、そんな感じで進めていこうと思います。
今回、楽しんで読んでいただければ幸い!
本編の日常VR生活! もどうぞよろしくお願いします。