会話文エチュード『ところで私 ーー』
会話文エチュード。
詳しくは、2017/9/30 の私の活動報告へ。
終わりのフレーズだけを先に決めて、そこへたどり着くまでの会話文を考えるというエチュードです。
「降ってきましたね」
「何が?」
「雨ですよ、雨」
「……(天井を見上げる)」
「ぽつぽつと」
「うっ……」
「どうしました?」
「目に水が入った」
「(笑う)」
「あなたのせいよ」
「今度おいでのときは、修理しときますので」
「ところで、私……」
「あ、そうそう。お呼びしたわけですよね」
「そう」
「腕が立つとお聞きしたもので」
「……報酬は?」
「(指で金額を示して)これくらいで?」
「ふん……(考え込む)」
「うーん、それでは、こちらもお付けしましょうか」
「何、これ」
「最新型です」
「バタフライ?」
「はい」
「何に使うの?」
「もちろん、お仕事で」
「あ、そう……」
「お引き受けくださいますね」
「もちろん」
「では前金として、こちらのバタフライをお納めください」
「いいけど。ーー あなたも悪い人ね」
「そちらさんこそ」
「(静かに笑う)」
「それじゃあ、楽しみに待ってますので」
「(もらったばかりのナイフで、相手を突き刺す)」
「……どうして……」
「あなたに味方しようかとも思ったけど、やっぱり順番重視ってことで」
「……先を越されたか……、しかし、さすが……」
「恨まないでね。悪気があったわけじゃないから。(帰りかけるが、血のついたナイフを見つめて)ところで私……、あなたの勘違いを訂正しようか迷ってたんだけど……、私の専門は ーー」
「……なん……だっ……て……?」
「(軽く息をついて、短く)ところで私、スナイパーなの」