語られる過去
そこは緑豊かな森の中
リスや小鳥達の柔らかな声が響き渡っている
木々の隙間から光がさしている所にある古い家
そこに歳若い白髪の母と
黒髪のまだ幼い少年がいた
「エイッエイッ!」
柔らかな光が差し込める庭で
子供が棒切れを振るっている
「あら、今日も剣の稽古してるの?元気ね」
家の中から母が子供の様子を見に出て来た
「あ、ママ!うん!僕、ママみたいに立派な狩人になるのが夢だもん!」
「ふふっアデンも男の子ねぇ。でも忘れてはいけませんよ?」
「狩りに呑まれてはいけない。自分に呑まれてはいけない。でしょ?」
アデンは教えを覚えていた事を自慢げに言った
「そうよ。もし、あの悪夢が、また世界を覆うような事が起これば、貴方は人を守る為に狩るの、お父さんのようにね」
「.....僕嫌だよ...パパみたいにはなりたくないょ!」
「...アデン、前にも話したけど...」
「だってパパは狩りに呑まれたじゃないか!だから僕もママも人里離れたこんな所で...パパは強くなんかない!パパなんて...!」
「...アデン」
しばらくの沈黙の中
風だけが吹き抜けていく
「時が来たのかも知れないわね」
「ぇ...?」
「パパが何故、悪夢に囚われてしまったのか...貴方も、もう知っても良いのかも知れないわね.....良いでしょう。アデン。こっちに来なさい」
「...うん」
親子は家の中に入り
使い古した椅子に腰掛ける
ロウソクに火を付けると
部屋の中は薄明るく光った
「....ママ?」
いつも明るく、笑顔の絶えない母の
難しそうな顔を見て、少し動揺するアデン
「...私達3人が出会ったのは、獣の臭いが立ち込める、長い夜の事だった...」