01
白を基調とした室内は、病室らしい清潔さを感じさせる。
ただ、あれからしばらくの年月が経つけれど、集中治療室の様な厳重さは今も変わらない。
幾重もの手続きが必要なのは、慣れたとはいえ、痩せた身には辛く感じる。
最新技術の発見と、過去技術の改良は、同じものではない。そう、この時は感じさせられる。
過去をより良く甦らせることより、まだ見ぬ明日を切り開く力の方が、好ましく映るものなのだろう。
高齢化社会となった今も――いや。
そうなってしまった社会だからこそ、そうした想いや願いは、以前より強いのかもしれない。
君の姿も、どちらかといえば、その過去の姿になるんだろう。
白い部屋の奥深く、古いSF映画の様な電子機器がぽつりと置かれた、ベッドに似た場所。
僕の重く不安定な足は、透明な自動トビラをまたぎながら、そこへと向かう。
「……久しぶりだね」
呟いて、ベッドの近くに置かれた椅子にこしかけ、息を吐く。
立ち続けるのは、今からの作業を考えると、酷だからだ。
かすむことも増えた瞳で、君の姿をしっかりと見つめる。忘れないようにと願いながら、じっくりと。
少しして、僕はゆっくりとその人型に、左手を近づける。
動かない君の手を、シワが増えた手で、握りしめる。
いつもと同じ、硬く、冷たい感触が、指先から伝わった。
同時に……強烈な眠気が、僕の瞼を閉じさせる。
今の、僕の身体から意識が抜けるかのように――ゆっくりと、意識が沈んでいく。
こうして――僕は、君に会いに行く。
冷たい温もりに、想いを乗せながら。