表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
懸け橋  作者: 子無狐
1/4

01

 白を基調とした室内は、病室らしい清潔さを感じさせる。

 ただ、あれからしばらくの年月が経つけれど、集中治療室の様な厳重さは今も変わらない。

 幾重もの手続きが必要なのは、慣れたとはいえ、痩せた身には辛く感じる。

 最新技術の発見と、過去技術の改良は、同じものではない。そう、この時は感じさせられる。

 過去をより良く甦らせることより、まだ見ぬ明日を切り開く力の方が、好ましく映るものなのだろう。

 高齢化社会となった今も――いや。

 そうなってしまった社会だからこそ、そうした想いや願いは、以前より強いのかもしれない。

 君の姿も、どちらかといえば、その過去の姿になるんだろう。

 白い部屋の奥深く、古いSF映画の様な電子機器がぽつりと置かれた、ベッドに似た場所。

 僕の重く不安定な足は、透明な自動トビラをまたぎながら、そこへと向かう。

「……久しぶりだね」

 呟いて、ベッドの近くに置かれた椅子にこしかけ、息を吐く。

 立ち続けるのは、今からの作業を考えると、酷だからだ。

 かすむことも増えた瞳で、君の姿をしっかりと見つめる。忘れないようにと願いながら、じっくりと。

 少しして、僕はゆっくりとその人型に、左手を近づける。

 動かない君の手を、シワが増えた手で、握りしめる。

 いつもと同じ、硬く、冷たい感触が、指先から伝わった。

 同時に……強烈な眠気が、僕の瞼を閉じさせる。

 今の、僕の身体から意識が抜けるかのように――ゆっくりと、意識が沈んでいく。




 こうして――僕は、君に会いに行く。

 冷たい温もりに、想いを乗せながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ