表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上のピーセス  作者: 悠々楽々
二章
27/196

ありえぬもの

 頬を伝う冷たい感触に目が覚めた。


(ここは……)


 いつもとは違う草の天井。朝露に濡れた葉。濃い緑の匂い。やがて、テルスは寝ぼけながらも、不安だった夜を越えたことを理解した。


 隈笹で作られた籠の宿が魔物に壊されることもなく、テルスたちは朝を迎えることができた。籠の隙間から覗く森の景色はかなり明るくなってきている。日の出から一時間経つか経たないか、といった時間だろう。


 テルスは横になった姿勢で、パチパチと数回瞬きをする。徐々に意識が覚醒していく中、寝返りをうち仰向けになると、ルナと目が合った。


〈おはよう〉


「ん……おはよう」


〈快適に寝れたかな?〉


 眠気でぼやけたテルスの視界に、やけに赤い文字といたずらっぽく微笑むルナの顔が映る。


「……うん。枕が良かったみたい。ありがとう」


 いつの間にか、テルスの頭の下にはルナの膝があった。ルナと見張りを代ってテルスが眠りについたときは、外套が枕になっていたはず。どうやら、寝ている隙に枕がすり替えられていたようだ。


〈いえいえ、どういたしまして。私もお返しができて満足かな〉


 膝枕の仕返しに成功したことに満足したのか、ルナは笑みを零す。

 しかし、テルスが恥ずかしがりもせず体を起こすので、その表情はすぐに不満そうな唇を尖らせたものになった。


 朝が弱いテルスは体を起こそうとも、まだまだ寝ぼけていた。せっかくの浄化師の膝枕も、今は寝心地が良かったくらいにしか思っていない。気恥ずかしさが顔を出すのは、もう少し先のことのようだ。


 あくび混じりに体を伸ばすとパキポキと骨が鳴って体がほぐれていく。血の巡りが良くなり、ようやくテルスの思考も鮮明になってきた。


「ふわあ……俺が寝ている間はなんともなかった?」


〈虫の鳴き声が怖かったくらい。それ以外はゆっくりできたよ。この子も大分顔色が良くなってる〉


 テルスがシュウを見てみると、ルナが書いた通り顔色が良く、呼吸も昨日のように荒くはない。これなら穏やかな眠りといってもいいかもしれない。


「良かった。できれば、シュウが起きる前にここを出たいな」


〈そうだね。起きたら魔物だらけ、なんてトラウマになっちゃうよ〉


 ルナの文字にうんうんとテルスは頷く。自身も虫にたかられたり、体液を頭から被ったりと記憶に深い爪痕を残す体験をしているだけあって、確信に満ちた力強い頷きだ。

 そんな相棒の様子に返す文字もないルナはテルスを放置してバックパックの中身を確認する。


 非常食として入っていたパンはもう数個。水の残りも心許ない。


〈今日中に……なんとかしないとだね〉


「うん。俺はさっさと出て、ご飯をいっぱい食べたい」


 パン一個じゃ、やっぱ足りないし、とぼやきながらお腹を撫でるテルスが可笑しかったのか、ルナは小さく笑った。


〈あなたは緊張しないの?〉


「してるけど、なんくるないさーって思ってるだけ」


〈なんくるないさー?〉


「いや……あれ、何だっけ?」


 自分で言ったのに、どんな意味だかさっぱり思い出せない。そういえば前にも、なんとなく呟いた言葉が意味不明で、ルーンたちに笑われたことがあったっけ。


「ま、まあ、泣いても笑っても今日一日頑張ればいいって開き直ってるだけだよ。こういうときは、あまり思いつめない方がいいんだって。思いつめて悲観的になって、普段の実力が出せないよりかは、何も考えず馬鹿になったほうがいい……って昔、聞いたことがある」


〈誰から聞いたの?〉


「赤くてホラーなピエロさん」


〈へ、へえ。そういう人もいるんだね……あなたは強いな。私は浄化師なのに怖くてしかたないよ〉


 膝を抱きかかえ、白い少女は俯く。

 それはこの魔瘴方界(スクウェア)に入って、初めてルナが零した弱音だった。


「まあ、こんな虫だらけの森怖いのが普通だよ。さっさと出て、美味しいものでも食べよう。ほら、浄化師と一緒なら、高そうなのも食べられそうだし」


 白い少女はそんな下手な励ましに微笑んでくれた。

 それを見て、テルスは思う。あの赤いピエロも自分の恐怖を隠し通しておどけていたのか、と。真相はきっと分からない。だが、やっぱりあの人は凄い人だったのだと思うと、テルスの心に小さな熱が灯る。


〈ふふ、まかせて……それにしても〉


 顔を上げたルナは先ほどの言葉が嘘のように明るい笑みを浮かべていた。

 そして、何かを思い出したのか不思議そうな表情を浮かべる。


〈あなたのマテリアルはいくつなの?〉


「あー……」


 マテリアルとは魔物の場合は危険度や強さを表すものだが、人の場合は基本的にそのマテリアルの魔物と同程度の強さを持つという意味で使われている。つまり、これを知ることでその人物がどの程度の魔物と戦うことができるか、という指標になる。


 よって、テルスはここで真実を言うわけにはいかない。なんていったって『ゼロ』だ。残酷すぎる真実を告げて、せっかく笑ってくれた少女を絶望の淵に叩き落すわけにはいかないのだ。


「……秘密。ここを無事に出れたら教えるよ。聞いたら多分、びっくりするだろうなあ……」


 乾いた笑みを浮かべ、テルスは言う。

 それはそうだ。仮にここから出れたとして、魔瘴方界(スクウェア)、それも王域から脱出した駒者ピーセスのマテリアルがまさかのゼロだなんて、誰も想像もしないだろう。


 まさか、五年前の方がマテリアルが高いとは。マテリアルはあくまで肩書。強さとイコールでないことが分かっていても、なんだか虚しい。こんなことなら、逆境に立ち向かってマテリアルを上げておけばよかったとテルスは後悔し始めていた。


 マテリアルの認定には、ギルドの認定官の前で指定された魔物を倒すか、複数人の証明と共に討伐の証である魔石を提出する二つの方法がある。


 後者はチームにも所属せず、複数の駒者(ピーセス)の友人がいないのでテルスには不可。

 前者については『死神憑き』と外に行く奇特な人間がおらず、何よりお金もかかるので断念したのだ。

 認定官を使う方法は少なくない費用がかかる。それに駒者(ピーセス)には認定官を守る義務がある。ソロのテルスでは認定官を守るためには護衛を雇う必要もあって、費用が余計にかさむのだ。


 そんな理由もあって、テルスはこの五年間マテリアルは飾りだ、と言い聞かせ、遠ざけ続けた。今にして思えば逃げだったのだろう。そして、逃げたつけはこういう時にやってくる。


〈そう言われると、なんだか気になるなあ。あれ、でもあのギルドにいた人たちは……〉


「ん、ギルドの人たちがどうかした?」


〈な、なんでもないよ。それよりも、せっかくだから色々と話したいな!〉


 宙に刻まれた赤い文字を慌てて消しながら、ルナは新たにそう文字を浮かべる。


「なら、ルナは……」


 王域を進む準備をしながら、二人はとりとめのないことを話していく。ルナと違いテルスは外に漏れないよう小さな声で話すため、たまに会話が途切れてしまう。それでも、この魔瘴方界(スクウェア)の中だけの相棒に二人して話しかけていた。

 それはテルスの少し気になった変な質問から、ルナのテルスへの素朴な疑問だったり様々だ。


 ここが最初で最後。

 二人がゆっくりと話す機会はもうない。


 この仮宿から出れば、無駄話をする余裕などない王域の探索が再開する。

 そして、たとえ全てが上手くいって王を倒し魔瘴方界(スクウェア)を解放したとしても、地方の駒者(ピーセス)であるテルスと貴重な浄化師のルナでは住む世界が違う。もう、こんな風に二人で話す機会はないだろう。


 だから、少しだけ。ほんのひと握りの時だけ、二人は仲間らしく語らっていた。











 時間と共に朝の光が満ちていく落葉の森。

 落ち葉を踏む足音にさえ、注意を払いながら二人は最奥へと進んでいく。その姿は迷彩柄の外套により森の景色によく溶け込んでいた。


 二人の間に会話はなく、夜の間は耳障りなほど聞こえていた魔物の声も聞こえない。ただ、静けさだけが森に広がっている。

 不気味なほどの静寂の中で、テルスは落ち葉が彩る獣道を、朝雫が滴る樹上を、魔物が隠れているかもしれぬ茂みを、一つ一つ警戒しながら進んでいく。


 枝葉の隙間から差し込む日差しを受けて、朝露の雫が森を輝かせる。魔物の住処とは思えぬほど幻想的な景色だ。黒い怪しげな胞子が浮かんでいようと美しい。

 

 しかし、どんなに美しかろうと、この魔瘴方界(スクウェア)をここまで進んできた二人にとっては醜悪な景色でしかない。


 落ち葉は、そのほとんどが擬態した虫型魔物だ。

 踏まぬようにと注意をしていても、道一杯に広がっている落ち葉の全てを踏まずに進むことはできない。足の裏に感じる不快な感触にも慣れ、侵入者に気づき足を這い登ってくる小型の虫にも驚くことはなくなった。


 苔生した幹に張り付いているナナフシ型魔物が朝露に身を震わせ、茂みから唐突に昨日と同じく飛蝗型魔物が飛び出す。


 研ぎ澄まされた感覚とここまでの道程の経験により、擬態も大分見抜けるようになった。飛び出す魔物も不意を打たれなければ大した敵ではない。突撃する飛蝗型魔物にテルスは刀を振るい、両断する。そして、ナナフシ型魔物には近づかないよう離れて進む。


 しばらく歩いていると、草を揺らし、何かが近づいてくる音が聞こえてきた。

 明らかに対処できない数の足音にテルスが眉をひそめる。


「煙玉を使うよ」


 判断は一瞬。背後のルナに告げると同時に、テルスはポーチから取り出した煙玉を地面に叩きつける。さらに【道化の悪戯(ジョーカーズ・トリック)】で風を操って、発生した白煙を周囲に旋回させることで身を隠した。


 立ち止まるテルスとルナは息を潜めて、白煙の向こうの気配をうかがう。

 おそらく、物音に反応し近づいてきた魔物の群れは、殺虫成分を含む白煙を迂回するように過ぎ去っていった。遠ざかっていく葉の揺れる音を聞きながら、ルナとテルスは再び前へと進み始める。


 これで煙玉も残り六個。

 隈笹の仮宿を出る際と近づいてくる魔物の群れから身を隠すために、煙玉を二回使ってしまっている。いよいよ、煙玉の残数も心もとなくなってきた。


 この煙はあくまで魔物が嫌がるだけで、これだけで魔物を殺せるわけではない。とはいえ、魔物と戦うことを回避できるのはとても心強い。魔物側もいざとなれば白煙に突っ込んで襲ってくる可能性もあり、そもそも、あの隈笹の茂みに潜んでいた大蜘蛛の魔物のように効かないこともあって過信はできない。だが、あるのとないのでは大違いだ。


 それなのに、煙玉を始めとした残り少ない物資を使う機会は増していくばかり。


 使うことを躊躇ってもいられない。魔物の大群を相手にすることは難しく、王と戦うためには力を温存しておかなくてはいけない。倒れてしまっては本末転倒だ。効率よく進むためには、躊躇せずに使っていくしかない。


 物資や体力、魔力は減っていく一方で、不安や疲労だけが増えていく道のり。

 旋回している白煙が薄くなっていくのを名残惜しそうに見ながら、落ち葉が減った道を二人は歩いていく。


 数分後。

 旋回していた白煙が消え、見通しが良くなった獣道の向こうに影が現れる。

 二人の視界に入ったその影は一度見たものだ。


〈インセクタだね……どうする?〉


 仲間が巣に帰らなかったことにより、森の異変に気づいたのだろう。見回りの数が増えているのがその証拠だ。五匹で周囲を警戒しながら木槍を構え、インセクタたちは近づいてくる。

 このまま道の真ん中に突っ立っていたら見つかってしまう。倒すにしても正面から走っていけば、逃げられてしまう可能性もある。

 ならばテルスお得意の戦法が一番だ。


「隠れよう。ちょうど煙玉も使ってたし、周りの茂みに魔物はいない……はず」


 念のためナイフを投げて茂みを揺らすが、やはり魔物が飛び出す気配はない。

 すかさず草むらに忍び込み、インセクタが近づくのを二人は待つ。


「通り過ぎるまで待とう。背後から奇襲するから、前みたいにサポートよろしく」


〈分かった。今度は足元に気をつけてね〉


「……あれを思い出させないでほしいなあ」


 虫が、虫が、と体を這い登ってくる無数の虫の感触を思い出し、テルスは小さく震える。

 インセクタはゆっくりと獣道を歩いてくる。

 そして、テルスたちの前を通り過ぎ――



 立ち止まったインセクタたちを目にし、テルスは飛び出そうとした体をなんとか押しとどめた。



(あぶっ……)


 止まるのがあと少し遅ければ、インセクタたちにこの場所を気取られていた。

 インセクタたちはちょうどテルスたちが潜む茂みの前で立ち止まっていた。何かを感じようとしているのか、空を仰ぎ、四方を見回している。


(なんだ? 気づかれた?)


 テルスたちに気づいている様子はない。しかし、希薄な何かを確かめるように、インセクタは周囲を徘徊し始める。何が原因かは分からない。だが、このままではテルスたち三人が見つかるのも時間の問題だ。

 隣に視線をやると、ルナもテルスと同じ考えだったのか頷きを返す。


 インセクタたちはそれぞれ、少し離れた位置にいる。テルスは離れた位置にいる二匹を指差し、続いてルナを指差した。


――離れた位置のを頼む。

 

 その意図を理解したのか、ルナはこくりと頷く。テルスは指を三本立て、一本ずつ折っていく。


 三……二……一……

 ゼロ。


 勢いよく茂みを飛び出したテルスはこの魔瘴方界(スクウェア)での最初の戦闘と同じく、魔法で身体を強化し、最速でインセクタたちに奇襲を仕掛ける。


 一閃。


 ひと振りで二匹のインセクタを斬ったテルスは、さらに振り返ったインセクタへと刀を突き出す。本来ならば届かない距離。しかし、【道化の悪戯(ジョーカーズ・トリック)】で覆った鋒から魔力が伸び、インセクタの頭部を貫いた。


(ソードペアっと……)


 テルスの魔法【道化の悪戯(ジョーカーズ・トリック)】は魔力を纏わせた対象の威力、リーチなどを満遍なく補助する魔法。遥か彼方まで届くわけではないが、ある程度間合いを伸ばす効果がある【魔刃】と相まって、かなりの距離まで刀身を伸ばすことが可能だ。


 茂みを出てから約二秒。三匹のインセクタを屠ったテルスは相棒の様子を確かめようと振り向く。

 ちょっと心配していたテルスの視界に入ったのは、ルナの手から伸びた【閃手】に貫かれている二匹のインセクタの姿だった。


(えええ……)


 驚くテルスをよそに【閃手】は消え、インセクタはのたうちながら瘴気へと変わっていく。

 テルスも分かってはいたが、あっさりとインセクタを倒したルナを見て改めて思う。この少女は強い、と……あと、なんか怖い。


〈大丈夫だった?〉


 道を塞ぐようにインセクタの死骸はのたうち回っている。下手に近づくこともできず、瘴気へと変わり切るまでの間、テルスとルナは静かに話し合う。


「問題ないよ。虫沼も無かったし。これでまたインセクタはしばらく気にしなくていいか……というか【閃手】ってあんな風にも使えたの?」


〈手を形成する魔法だから手でできることは可能かな。貫手にして貫いたり、手刀で切り裂いたり、手の平を広げて受け止めたりできるよ〉


(……手……手って何だっけ? えーと凶器?)


 自身の右手を眺めながら「手ってそんなことできたっけ?」と頭を悩ますテルスに今度はルナが尋ねる。


〈テルスの魔法も、見たことがないけどオリジナルだよね?〉


 オリジナル。それは文字通り『自分で作った術式』を意味する。

 テルスとしては、この質問には首を振るべきか、頷くべきか悩むところだ。


「うーん……元の魔法をくっつけて、使いながら削ったり、付け足していったら、いつの間にかこんな魔法になってたからなあ……自分で開発しました、とは言いづらい」


 【道化の悪戯(ジョーカーズ・トリック)】は【強化】と【形成】の魔法が土台になっている。魔力を込めたものを強める魔法と、魔力で武器などを象り攻撃する魔法。どちらも形を持たない無属性らしい魔法であり、無属性の人間が使う代表的な魔法だ。


 まだ無垢で幼かったテルスは「この二つをくっつけたら強いんじゃない?」と思いつき、無理矢理くっつけて使い、気に入らない所を切ったり、繋げたり、付け足したりと先生にもらった魔法の教科書を片手に試行錯誤を続けた結果……まったく別物の魔法となっていた。


 そんな紆余曲折を経て、【道化の悪戯(ジョーカーズ・トリック)】は対象と同じ形に魔力を纏わせ、補助する魔法となった。


 【強化】と同じで元がなくては使用できず、【強化】と違い対象を強くするというより不足を補うような効果。

 【形成】と同じで魔力で何らかの形を象るが、【形成】と違って元の何かがなくてはいけない。


 【強化】と【形成】。どちらの色も残っているが、すでに別物。空のように澄んだ蒼と、海のように深い碧を混ぜて、まったくべつの青ができてしまったように異なっている。


〈オリジナルなんて、そんなものだと思うよ。私の魔法も分類としてはオリジナルに入るけど、ほとんど形成の魔法と変わらないかな。違いなんて浄化の効果があるくらいだと思うよ〉


「そっかー。それより、自分で言うのも何だけど、よくあの合図で分かったね。そっちの方が驚いた」


 そう言って、指を折っていくテルスの手を目にしたルナは薄く微笑む。


〈分かる、分かる。カウントダウンとしては、むしろ分かりやすいかな〉


「そうかなあ。俺はいきなりやられても、何してんだろうこの人ってなりそうだ。どうせなら、サインでも決めとく? こう、人差し指を立てると、こっちに来い、とか」


〈うーん、この場で覚える時間はなさそう。もうインセクタも瘴気へと変わりきったみたいだし、先に進……警戒して〉


「警戒?」


 ルナは何かを見つけたようだった。疑念と困惑が浮かぶルナの視線を追い、数十メートル先に立っているそれを見つけた瞬間、


 隣のルナと同じくテルスの思考は疑念に覆い尽くされた。


(ひ、と……?)


 魔物の領域である魔瘴方界(スクウェア)の、それも中心の王域に、人が立っていた(・・・・・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ