テトリスとあのこ
僕たちは変わらない。昨日も今日も明日も。それが嘘だとは思えない。思えないから不安にある。不確かなんだ。証が欲しい。だれかください確かな証。僕には必要なんです。確かな証。ないから。昨日も今日も明日も。それをわかっているんだ。だから僕は勝手にそうとは違うものに証を預けてそして確かなものにしてしまう。それがそれと知ろうともせず。忘れようとする。なにもかも確かなものに預けて忘れちまう。終わらせちまう。そんなこと叶うわけないのに。次にいくことなんてできない。明日にいけることなんてできない。
「明日の日付しってるか?」
「しらない」
うまい棒。
「カレンダーとかあるだろ」
「そんなのありません。暦はわたしが食べました」
「そんなのまで食っちまったのかよ」
「えっへんなにをかくそうわたしの胃袋四次元です」
「それは便利というか残酷というか」
口にうまい棒。今日もまた彼女はうまい棒を食っている。日付なんてしらない。ただ昨日から連続して遭遇し続けているなにひとつ変わらない今日という日々。僕は日常を暮らしていた。
「ひまかな」
「ひまですか」
「ひまですな」
「じゃあテトリスやろうテトリス」
「テトリス」
「そ。」
ゲームボーイで対戦だ。テトリステトリス。どちらが強い。あちらが強い。
「テトリス強いひとっておいしそうだね」
「食っちゃだめだよ俺も君も」
「だれもひとを食うなんていってないわしっけいしちゃう」
「冗談にきこえないよ」
「でもほんとうにおいしそうだなー。一度は拝見したいもんだ」
「本気じゃん」
「もう始まっているよテトリス」
「ああブロックが~」
「油断したものが負けると言う事です」
「くそくそ~」
「チェックメイト、チェックメイトー」
「あああ~」
「あなたはおいしくないね残念ね」
「もう一度もう一度」
「機会というものは訪れたときにものにしないといけないのです」
「もういっかいもういっかい」
「だめです」
「そんな」
鐘が鳴る。下校の。
「そういえば今日はあまりうまい棒くわなかったな」
「あまりおなかすいてなかったのです」
「いいかわるいかよくわからんな」
「そういう日もあるのです」
「じゃあおれが食おうっと」
「だめです。それわたしのです」
「いいじゃん。どうせ食べないんだろ」
「食べます食べますから」
「じゃあ」
「今日はいりません」
「えっ」
「それは明日の分です。決して食べてはいけませんよ」
彼女は目を預けながら歩んでいった。外は昨日と変わらずくもり。明日もまたくもりだろうか。