知恵の輪と彼女
明日なんて待ち望んでない。明日なんていい日なわけがない。今日昨日がいい日だったから明日もいい日だなんて決めつけるのは間違っている。明日はきっと悪い日。ここまでうまくいっていただけ。ちょっとした連続。たまたまなのだ。たまたま今日まで今日があって、明日にも今日があった。そういうことがたまたまうまくいっただけ。それでも明日はくる。今日になる。いつのまにかの睡眠。僕はまだ今日を知らない。本当に今日は明日なのだろうか。カレンダーは教えてくれない。教えてくれるのは
「あのこだけだ」
「うまい棒うまい棒」
あのこがそういっているうちにうまい棒をあげないと。僕はポケットからうまい棒をさしだす。
「うまい棒うまい棒」
口で袋を開けて丸かじり。
「ぶうあいぼうぶうあいぼう」
「おいしいか?」
「いはあふておあはふへほ」
「はいはい」
そらはちょっとしたくもり。かぜはない。
「知恵の輪」
ちょっとしたアイテム。彼女がもってきた。
チャッチャッチャッ
知恵の輪解き解き解いている。知恵の輪わからずうごかない。
「むむむ」
「難しいでしょ知恵の輪」
「うるさい」
「もっと簡単なやつから始めなよそんな難しいのなんてそうは解けない」
「解けますよー」
それにしてもみればみるほど難解だ。知恵の輪? 本当に? 宇宙人が作った遺産じゃないの?
「諦めなよそれは知恵の輪ではない」
「知恵の輪ですー」
「そういうんだったら」
彼女は延々と知恵の輪を解き続けていた。
「もしも夏がきたとして」
「きたとして?」
「どこにいきたい?」
「スイカ割り!!」
「スイカ割りは場所じゃないよ」
「スイカ割りしようよいますぐ!」
「いますぐはむりだよ。夏にするものさ。スイカもないし」
「スイカ欲しい。スイカたべたい」
「はいうまい棒」
「いらないってば」
鐘が鳴る。下校の。
「あれ知恵の輪は」
「そんなのしんない」
「おいてきたのかよ」
「そんなのしらない」
あのこは足を速めた。
「まったくなー」
そらはくもり。今日は夕焼けがみえない。廊下も暗い。
「おーいうまい棒いらないのかー」
「うん今日はもういらない」
あのこは足早に去ってゆく。 仕方がないのでうまい棒を食っておく。