うそつき
はじめはちょっとしたうそだったんだとおもう。自分のよわさ。ごまかしとかそういうの。自分には耐えられないもの。そういうのに軽くついちゃったんだとおもう。わたしには無理だからって。そういえればいいのに。ふり。できるふり。そういうの重ねていっちゃった。逃げてもいいんだ。あきらめてもいいんだ。無理だっていえばいいんだ。それすらもできなかった。
わたしは重ねていった。連続。うその連続。そうしてるうちにいまがうそになった。だっていまはかこの地続きだから。いまの次はみらい。いまの前はかこだから。うそのつぎはうそ。うその出来事と過ごすことになった。ただうそをつく。そんな毎日。すべてうそ。うそに囲まれる。わたしはうそ。すべてがうそだから。つきつづけた。うそのなかだからうそじゃなかった。
うその笑い。うその泣き。うその怒り。うその嫌い。うその好き。うその蔓延。それすらもわからない。
そういう連続。果たしてわたしってだれなんだろう。全部知っているもの。わたしのせかいはわたしが作ったの。あれはとても面白い。だから笑う。あれはとても悲しい。だから泣く。あれはとてもひどい。だから嫌悪する。あれはとてもいい。だから好き。
わたし嫌だった。最初も嫌だった。だからうそをついた。でも結局はそういうこと。ずっとずっと嫌。
だからわたしはゆめをみた。見続けた。
でもそのゆめはわたしだった。
いや。いや。全部いや。生まれ変わりたい。死に絶えたい。いつまでもわたしはわたし。うそのわたし。うその関係。うそのせかい。ぜんぶそういうものなんていやなんだ。
どうやったら逃れられるの?
「わたしね。いつもなの。今度、今度こそはって。うそから逃れようと逃れたいからほんとのことするの。やってみせたの。でもやりきった。わたしはのがれられたなっておもってもさ。なにもおもわないの。そのときなにおもっているかしってる? ここは感動するところだ。響け、泣けって。それさわたしおもってるからさ。ああ、まだわたし。うそだって。わかっちゃう」
だからまたここに戻ってきた。うそつきだから。わたしだから。ゆめのなかに。




