目玉焼き
わたしは目玉焼きをくえなかった。しんでしまったからだ。
そうなっていたらわたしはどれだけ報われない少女として注目されたんだろう。どうでもいいけど。
あのあとわたしは実際気を失ったわけだけど死ぬまではいかず気のいい船乗りさんに発見されて救われたわけ。よかった。よかった。
でもすべてがいいわけでもなく。あの死闘の末いただいたおいしい卵は目玉焼きにならなかったの。気を失ったときに落としてしまって…。
じゃあいつたべたの目玉焼き? ってなるんだけど。あれはわたしは長い昏睡の末めを覚ました時です。知らない天井…。そんなとこにいて。目の前に
「目玉焼き!!」
そうつぶやく前にくっちまったよ。仕方ないよね。条件反射ってやつだ。仕方ない。
「目玉焼きは栄養があるのですよ」
へーそうなんだ。それをきいたのはいつだっただろう。わすれちゃったなー。仕方ない。おいしかったんだから。もうそれしかでなくて。
とにかくくえてよかったよ。ほんとによかった。ばんばんざいってやつ。
「あなたもなかなかやるわね見直したわ」
「てへへー」
わたしのあさごはんは目玉焼き。毎日おいしく目玉焼き。
「これでおとうさんもむくわれるってことだわ。むすめがやりましたわ。おとうさま」
「はいはい」
おいしい。こんなものがくえるなんて。しあわせ。
「毎日たべおうねおかあさん」
「それは勘弁」
「おとうさんも喜ぶからさ」
「そういうんだったら」
わたしのあさごはんは目玉焼き。これからは。毎日ね。




