にわとりとわたし
「どうしようかな」
うじゃうじゃいるよにわとりさん。わたしのまわり。くわれる運命ってやつ。
「わたしをくわないでにわとりさん」
「それは無理な相談」
「どうして」
「あなたに食わせるたまごなんてない。あなたにはしんでもらう。食わせてもらう」
「いや」
「無理」
「目玉焼きくわせて」
「はっ?」
「目玉焼きくいたいくいたいくいたい」
目玉焼きくいたい。それしかない。わたしに朝を。朝食を。目覚めの一撃を。
「目玉焼きくいたいくいたいくいたい目玉焼き~~~~」
くいたいくいたいくいたい。くわせてよ~~。
「目玉焼き目玉焼き目玉焼き~~~」
「無理な相談っていってるだろーーーー」
いたっ。頭かじられた。
「目玉焼きくいたいよくいたいよ」
いたい。うでかじられた。
「目玉焼き目玉焼き目玉焼き」
いたい。あしかじられた。
「目玉焼きがくいたいくいたい」
かじられる。くわれる。わたしがどんどんなくなっていく。せかいにいなくなっていく。
「目玉焼き目玉焼き目玉焼き目玉焼き~~~~」
わたしのからだはすこしだけ。せかいにすこしだけのこっている。放置。観察?そんな感じ
「目玉焼きくいたいよ」
「それでも」
「目玉焼きくいたい」
「のか」
「くいたい」
「…」
「目玉焼き目玉焼き目玉焼き」
「目玉焼きくいたいか?」
「目玉焼き」
「いままでそうやってくってきたんだ。そんな気軽にくってきたんだ。なにが目玉焼きだ。たまごはおまえらの飯じゃない。わたしたちの生命ばかにするな。わたしたちは生きているんだ。しっかりと」
「目玉焼きだっていっしょだよ」
「はっ?」
「目玉焼きだってもうくわれなくなった。いきれなくなった。目玉焼き撲滅委員会のせいで食えなくなった。どういう理由で食えなくなったかしってる? こっちをみているようで気持ちが悪いだからですって 目玉が。馬鹿にすんなよ。庶民の朝の食事、こころの癒し。それをそんな理由で禁止されてたまるってか。わたしはくう。絶対くう。死んでもくう。目玉焼きくう。目玉焼きだって生きているんだ。絶対に。わたしたちのなかに。根強く。絶対的に。食わせろよ。食わせてくれ。お願い。お願いです。食わせてよ目玉焼き」
「だからといって…」
「わたしにくわせて目玉焼き!!」
「…」
「食いたい食いたいよ~。もう何年。食ってないんだよ。お父さんは連れられて行ったし。目玉焼きぐらい気軽に食べていいだろ。なにが死刑だ。ふざけんな。目玉焼きはおいしんだ。屈しない。屈しないぞ。くうまでは」
スッ
「!!」
たまごをあげよう ひとつだけ
「目玉焼き…」
これが最後だ。くいたきゃくえ。
「目玉焼き!!」
…。
目玉焼きたちが去っていった。わたしはたまごとふたりっきり。
「目玉焼き…」
そううまくいったらいいのですが。たまご撲滅委員会は甘くない。衛星映像みはってる。
「目玉焼きつくるもの地の果てまで追い詰める」
それがモットー委員会。絶対絶対許さない。
「わたしたちあの小娘が目玉焼きとか禁止用語をつぶやいたときいた瞬間ぞっとしましたわ。まさかまだそのことばをしっているものがいるなんて。もうこれは追放しないと。宇宙まで放り出したというのに。なんていうありさま。宇宙船墜落させてにわとりまで説き伏せるとは。敵もなかなかやり手。でも舐めないでくれまし。わたしたちには宇宙からのレーザというものがありまして。さあ死になさい。目玉焼きをつくるものなら」
でもかれらがそれをみることはできなかった。にわとりたちが本部を襲い全滅しちまったのだから。このニュースはせかいを覆い人々は歓喜に包まれた。目玉焼き。目玉焼きがくえるんだってね。でもたまごは? にわとりさんたちがたまごをくれた。すこしだけ。街中に。手紙も添えて。
「目玉焼きぐらいなら許してやることもないです」




