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崩壊  作者: かたち
崩壊
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崩壊

彼が外を歩くと街は一部が崩壊する。一歩一歩崩壊する。街は次第に歪んで歪んで少しずつ纏められていってそのうちに街はなくなる。残るのは彼の自宅だけ。彼の自宅は一軒家。彼の親が身を絞って建てた。彼はそこで育ちそこで大人になった。彼はその家で衣食住、生活している。彼はあまり家からでない。平穏。それすらわからないぐらいの。ただ起きてただ食ってただ寝る。彼の生活。彼の平凡。彼は彼。だれしもが彼をしらない。だから彼はいない。街には彼はいない。彼には街はいない。それが彼という人物だった。



 昨日からはわたしの目には街がみえない。あの高いビルとか雑にしちゃっかに生えている電線とか。ああいうのがわたしにはない。空にはなんかへんな生き物が浮いてるし。なにあれ? おきあがりポロン? 簡単にいうと化物。難しくいうとわたしには語彙はない。そういうものがまばらに浮いていた。

 「どうしようかな?」  

わたしは学校なんてどうでもいいじゃないの? そういうこと思っていたり。すこしこの街変だ。そんなところにいているんだからそれぐらいのことおもってもいいよね。わたしは踵を返し家にかえることにした。人はただ歩いていた。街の流れは確かに今日もまた昨日の続き。でもさ、街は変だよ? 人はあまり変わっていないのに。  



窓から見るそらは確かにそらだった。あおくひろくおおきくて。家の手の届くてっぺんとは違う。おおきくてあおすぎて。わたしには途方もなくおもえた。この部屋でさえ生きていこうとおもうとつらいのにどこまでもどこまでもおおきなそらにわたしを耐えさせる空間などあるのだろうか? むりだ。むりだ。無理だ。そらなんてもう見ず。ただ天井。



 わたしはしょうゆをすしにかけてみた。しょうゆとすしはあっている。それは確かなハーモニー。このためにしょうゆはうまれすしはすしたらしめた。さあ入れすし口の中へ。

 すしはわたしの口に入るまえに確かなものをみた。街。街が消える瞬間。でもだれもそれをしらない。すしは興奮した寿司屋の雰囲気に呑まれてひとりの客に丸呑みされたのだから。それに街はだれも気づかないくらいだれにも忘れられているのだから。街はわずかに消えわずかに歪みわずかに変容しわずかに交錯し街になった。寿司屋は儲かっている。客は口にすしを運ばせる。すしはにぎられはこばれくわれゆく。



 昨日から寝ることについて考えている。寝るということを信じられない。消える。わたしが消える。断絶。わたしとわたしとの。昨日と今日。今日と明日。ほんとうにわたしなのだろうか。あなたはわたし? そんなこと認められない。だれもそうだと言えるわけがない。わたしたちは眠りによって死ぬ。わたしたちは何度も死に何度も生まれた。わたしは繋がれて繋がれてわたしに生きているかのように伝える。あなたはいきていますよ? そんなことを気づかないように見せびらかす。わたしは怒る。それをしている謎のあなたに。わたしを殺すな わたしを生かすな わたしたちに干渉するな わたしはここにいるぞ

忘れるな てね。



ほっぷすてっぷじゃんぴんぐー。街に降りしきる小雨を横にわたしはそういうことをしていた。街のアスファルトってそういうことにあっているのね。車と街とアスファルト。わたしは飛ぶよじゃんぴんぐー。



 あああくび。わたしのくちからあくび。してはいけないぞ。そういうこともなくおおきなくちからおおきなあくび。あくびはおおきくのびやかにとんでいく。そらへとそらへととんでいく。わたしはあくびにつられてそらをみる。

「あっ」

 あくび。おおきなあくび。いっぱいの。横を見る。あ、とむさん。あ、横綱さん。あ、大臣さんも。みんなつられてあくび。おおきなあくび。あくびは空中に伸びていく。飛んでゆく。そらは次第にあくびになった。



 汽笛が鳴っている。かえるが鳴いているのだろう。そう勘違いしていたときもあった。わたしは地面に鞄を置き線路を見上げた。

「おおい雲よ」

 あの電車はどこまでゆくのだろう。わたしたちがしらないいつか思い出す鉱物。わたしたちを乗せて。記憶を焦がし廻り。電車はいつの日かみえなくなる。



「昨日から飛行機雲が消えないのです」

 そう話すのは街一番の神経質よっさん。どうやら畑いじりの際そらにいきる飛行機雲に魅せられていつまでも頭の端にその飛行機雲が生息しているそうだ。

「あたまの端にですね、そうほんと消えるか消えないか、そういう微妙な、、、そう! ほんとに微々たるごとく残像のようで。忘れたい忘れない。みたみてない。そういうことのとんぼ返りで。ほんとにどうにかならないもんですかね。ほらっ!! またわたしの頭かすめた!! どうにかしてください!!」

そうはいってもなー。

「なんですかあなたは! わたしが相談しているのですよ困っているのですよ!! ちゃんと親身になってですねー、ああっあめが欲しい。おいしいあめ。あめがあれば飛行機雲も、、消える」

あめちゃんねー

「そうです。あめ。あめをかってきてください。それも極上の」

極上もくそもあったもんじゃないよ

「飛行機雲、飛行機雲~」

よっさんそらをみて

「はい?」

 そらの飛行機雲は霧散したよ。だからねよっさんのも大丈夫だよ。

「そうですか」

そうですそうです。

「うん確かにそう考えると大丈夫なきがした。すっとおちた」

そりゃあよかった。

「うん。大丈夫だ。大丈夫だ」

うん大丈夫。大丈夫だ。



 






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