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気づかない内にそこだけ別世界  作者: あちゃま
第3章 最強の探索
44/50

現実:実験

迷宮ダンジョンバトルは無事に終わった。結果はもちろん“勝利”だ。

……いや、あれを勝利といってもいいのかという疑問は残るが、システム上は勝利だから勝ちでいいのだろう。


バトルが始まったのに何故か冒険者は迷宮ダンジョン内に残っているし、いつの間にかその冒険者と開いてプレイヤーのモンスターが戦い始めちゃって、一向に次の階層に行こうとしないしで困惑ばかりだった。

だが今回はそんなバグが俺にとっては良い方向に動いたので黙って置いた。


後から運営に何か言われたとしても『あ、気付かなかったですぅー』とか言って免れようとか考えていない。そう、考えていない、思っているだけだ。


でも正直に言えば、やっぱり次の部屋にあったボス部屋には来て欲しかった。

せっかく前回のAランクの冒険者の時にもしかして……と思って変えた点の確認もしたかったのだが仕方ない。マスクデータという運営側からは詳細が明かされていないシステムの確認だったのだが、これは次の機会に確認する事にしよう。


今日一番やらなくてはいけないのは、やはり合成と進化だろう。


ちょっとミスってランク4(☆☆☆☆)の道具アイテムを6個迷宮ダンジョン内に配置してしまったがために、それ以来随分と高ランクの冒険者という名の侵略者がやって来た。

事前情報で高ランクの冒険者が多くやって来ることになる事は知っていたからいいのだ。最初はビクビクして攻略されちゃうかも……なんて思ったりもしたが全然そんな気配は無く、寧ろもっと強い冒険者に来て欲しいくらいには俺の迷宮ダンジョンは強いらしい。


迷宮ダンジョンマスターがモンスターになって自分で戦える様になった身としては、戦いたくない為これは嬉しい誤算だった。

他にも色々と誤算はあったのだが、中でも一番嬉しかったのはモンスターのレベルの上がり方が急激に変化したという事だ。


今までは訓練場フィールドと呼ばれる外部に出して一生懸命チマチマと上げていたのだが、迷宮ダンジョン内部に配置して冒険者とぶつけた方が経験値の獲得値的に考えて効率が良かった。


御蔭で迷宮ダンジョンの戦力が上がる上がる。


合成と進化をさせたまま倉庫で眠る状態になる事も少なくない。

ランクの低いヴォルフ悪鬼ゴブリンなどは進化させてもそこまで強くはならないので出番はたくさんあるが、高ランクのモンスターは階層が低い所に配置すると冒険者を全滅させてしまい、その後の運営に支障をきたしてしまうので出来ないという理由もある。

塩梅の難しい問題がそこにはあるのだ。


そんな状況の中、再配置リスポーンの事も頭に入れたうえで、それでも合成・進化させて損がない奴。それが先程も挙げたヴォルフ悪鬼ゴブリンだ。


何と言ってもこの二体は最初にストアで買える上、とにかく安い。この一言に尽きる。

ヴォルフ悪鬼ゴブリンともに購入に必要なDPダンジョンポイントは5ポイント。再配置リスポーンに必要な10ポイントよりも少ないのだ。


加えて進化させるとそれぞれが群れを率いるリーダーの様に統率するように行動する。

野生動物が群れのボスに付き従って行動するような行動を、このゲーム内でも再現しているという事だろう。つまりたった1匹でもヴォルフ悪鬼ゴブリンを進化させた大狼グランドヴォルフ悪鬼王ゴブリンキングがいるだけで効率的な殲滅を行ってくれるのだ。

迷宮ダンジョンを運営する側としては非常に楽が出来るシステムである。


だがここでふと、今まで考えた事も無かった考えが浮かんできた。


「そう言えば、大狼グランドヴォルフ悪鬼王ゴブリンキングだけを配置した場合はどうなるんだろうか。今までは当然の様にランク1のモンスターを配置していたけれども、もしも全てがランク2のモンスターだったら組織だった動きをするのだろうか?それとも個々で動き出すのか?」


ランクの低い冒険者を迷宮ダンジョンに誘導する為、彼らでも倒せるランクのモンスターを配置するのは当然だった。

侵入者である冒険者を撃退などしなければDPダンジョンポイントが手に入らないのだが、圧倒的に倒すとランクの低い冒険者は来なくなってしまい、高ランクの冒険者ばかりになってしまう。


強い冒険者しか来なくなってしまったら、より迷宮ダンジョンが攻略されてしまうリスク率が上がってしまい、攻略されたらゲームオーバーだ。もちろんゲームだからリスタートはあるが、それなりのデメリットがあるから正直なりたくはない。


高ランクの冒険者が来なくて、かといって低ランクの冒険者ばかりではない。その絶妙なバランスを保つためにも、ランク1のモンスターは必要だったのだ。


でも今俺の迷宮ダンジョンはいつの間にかSランク冒険者にも通用するようになっていたようで……ちょっと冒険しちゃおうかなーとか考えたって不思議じゃない。そう、男はロマンを求めているんだ。人生には多少のリスクも必要だ。


あ、でも自分で戦うのは勘弁して下さい。


そうと決まれば早速行動開始だ。

でもやっぱり、さすがに一層目からランク1モンスターを除くのはとても心配なので、逆に1層目はランク1モンスターだけにして2層目からは全てランク2モンスターにしてみようと思う。


1層目にはいつもの様にランク1モンスターのヴォルフ悪鬼ゴブリンだけではなく軟体生物スライム骸骨ワイトとという持っている限りのランク1モンスターを配置する。


そして持っているランク1モンスターを詰め込めるだけ詰め込んだ1層目の光景は……とにかくカオスな状況であった。


元々俺の迷宮ダンジョンは一般的に多い洞窟タイプである。城や塔何て言うのも洗濯出来たりはするが、やっぱり迷宮ダンジョンは洞窟だろうという俺の一存で決めた。それぞれのタイプにはそれぞれ利点もあれば欠点もあるのだが、俺の迷宮ダンジョンである洞窟タイプ。この欠点が今回のこのカオスな状況を作っていた。その欠点とは――――狭い事だ。


幸いな事にランク1モンスターというのは大きさ的にも全てのモンスターと比べても小さい。大きいモンスターというのは基本的に高ランクであり、実はモンスターの大きさに比例して強さも強くなっているのは裏設定だったりするのだが、俺が設定したのはランク1モンスター。兎に角ランク1モンスターは大きさが小さいのだ。

だがそんな小さいモンスターであったとしても、数がいると問題が出て来る。洞窟タイプの迷宮ダンジョンは狭いのだから数が多いとすぐに一杯になる。そしてすし詰め状態の出来上がりだ。


こう言ってはなんだが醜いモンスターがぎゅうぎゅうに詰まっているんだ。

ウジ虫とか蟻とか、そんな虫がうじゃうじゃいたら気持ち悪いだろう?そんな感じが今目の前で繰り広げられていた。


俺は黙って、そっと画面を2層目へと移したのは言うまでもない。だってこれはあくまでも前座なのだから。肝心なのは2層目からなんだ。


2層目には先程考えたようにランク2モンスターであるヴォルフ悪鬼ゴブリンの進化先の大狼グランドヴォルフ悪鬼王ゴブリンキングだけではなく、悪豚オーク狼男ワーウルフなどこちらも持てる限りのランク2モンスターを突っ込んでみた。

今までが10層までほとんどランク1モンスターで占めていた事を考えると明らかなオーバーパワーである。


だが知りたいという知的好奇心には勝てない。普段は鳴りを潜めている理系の血が地味にたぎってしまっているのだ。同ランクだけのモンスターでは一体誰が統率を取ろうとするのか、それを知りたいが為に。


あくまでも実験だけどさ。

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