現実:始まりの始まり
「さーて、今日もちょこっと、やろうかなーと」
シフト制の休み、そのため休日は一般のサラリーマンのように土日などとは決まっていない。特別な用事がない場合は平日に休みが集中するのは確実である。普通のサラリーマンの友達とは段々と予定が合わなくなってしまうので、俺は自然と一人で過ごす事が多くなってしまう。
恋人なんてもちろんいないしね・・・・・・。
そんな暇で寂しい俺が時間を潰すもっぱらのモノはゲームである。
課金はしない、これは絶対である。どうしても形に残らないモノにはお金を出したくないのだ。でもゲームはしたいし、少しは人と絡みたい。同じ趣味を共にするような人と。
そこで俺はオンラインゲームに手を出した。パッケージだけ買えば一部のアイテム以外すべて遊べるというものに。
アクションなどの時間制限があるのは好きじゃないし上手くない。
RPGは好きだけど好きなゲームがなかった。
シミュレーションは好きだ・・・・・・よさそうなゲームがたまたま見つかった。よし、これにしよう。という何とも適当な感じで決めたのが始まりだった。
牧場経営や街経営、国経営など様々なものがあった中俺はダンジョン経営モノを選んだ。理由はRPG要素も少し入っていそうだったから。
ダンジョンと呼ばれる迷宮を多くのユーザーとライバル関係になりながら切磋琢磨し、最強のダンジョンを目指すというもの。
だが俺は別に最強もなにも目指していないし、何となくのヒマつぶしでやっているだけだから、正直どうでもいい。大体そういうのは課金している奴が最強になるし、加えて長時間やっている奴が強くなるのは必然だ。
課金もしていない、長時間もしていない(中時間くらいしか)俺なんかが最強になど最初からなれないのだ。
でも他の人と会話できるし情報交換の掲示板とかもある。欲しいモンスターは合成したり、トレードしたり、はたまた探索で探したりと様々。イベントもそれなりにあるし、色々な所とコラボなんかもしているし、ダンジョン運営だけじゃない要素も結構あって楽しい。
本体だけでも4万近くする据置型のゲームに近づき、起動ボタンをポチッと押す。そしてすかさずゲームヘッドを被る。
被って目を瞑るだけで一瞬にして催眠状態になり、五感全てを再現することが出来るようになった最新のコントローラーである。手でポチポチとボタンを押して操作するコントローラーは昔で話、今は念じれば何でも操作できる。
VRの技術も安くなったものである。
遠のく意識の中、俺は今日の目標をちょぴっと決めてみた。
「前回はヴァンパイアまで作ったから、今度はドラゴンまで行きたいな」