戦闘文官は出張中2
さてと、取り合えず。
クーシャと話でもするかな♪
「先輩！」
外に出るとワンコが...いやごめんニフィロ君がシッポふって...じゃないって...待っていた。
「ニフィロ君、休みだって言うのに悪かったね。」
なんとか撒こう。
「先輩！お供させてください。」
わー、ワンコ、素早い。
流石、現役警護官だよ。
「クーシャルーカと話そうかなと思って。」
私は言った。
「こっちです。」
嬉しそうにワンコ、いや、ニフィロ君が...いや、抱き上げようとしなくて良いからね。
「先輩は恥ずかしがり何ですね。」
結局妥協案として手をつないでます。
リュケさんはともかくダウリウス様あたりがなんかいいそうだな。
...もしかして前世で言うところの逆転ハーレム、略して逆ハー？状態？
私は全然望んでないよ。
なんでこんな平凡な容姿の女に求愛なんぞするかな？
あんたら優良物件何だよ。
私以外の女性にとってさ。
「おーい、ラズこっちだ。」
クーシャが手をふった。
ドーリュム本家の息子はやっぱり国王陛下に
近い位置が勤務場所だった。
「執務室すぐそこだ。」
私は思わず呟いた。
「陛下はヨウカン買いに行ってるけどね。」
...今、何て言った？...ヨウカン？！
「ヨウカン売ってるところあるの？」
ああ、食べたい！前世以来だよ。
「うん、ある、絶対に味覚音痴のお前が好きそうなところが。」
クーシャがニヤリとした。
「場所教えてよ。」
私が言った。
「いいぞ、その代わり久しぶりに手合わせしたいな。」
おい、あんた天槍の二つ名持ってたよね。
私はふつうの高等剣士なんだよ。
と言うかあんたがなにかというと
幼年学校から武術訓練の相手させられた
お陰で高等剣士なんだけどさ。
「先輩の剣技が見られるなんて。」
ワンコ、いやニフィロ君が目をキラキラさせた。
「じゃあそこの中庭で、話はつけてあるから。」
クーシャが言った。
なんかやることになってるよ。
「クーシャ、私は武器もって来てないよ。」
職場のロッカーにいれっぱなし。
「うん、そうだろうと思って修練場から取り寄せたから。」
私が使ってるのよりよっぽど良い剣渡されたよ。
「じゃあ始めようか。」
天槍のクーシャルーカに勝てるわけないじゃん。
戦闘文官ごときが。
「クーシャ、あとで正装弁償してよ。」
一応動き安いように上の長衣は脱いだけどね。
「そこにあるから着替えて帰ってね、やっぱりラズじゃないとつまんないや♪」
正装まで！なんて用意周到なんだ。
「先輩！素晴らしかったです！」
ニフィロ君がどさくさに紛れて抱きつきそうになったので回避した。
クーシャルーカは単なる悪友で恋愛対象じゃない。
クーシャはエリスディア王女に求愛行動とる予定だしね。
「パティスリー・イシカワ...イシカワ？ムリュフ精霊国の人かな？」
中を覗くと国王陛下がいた。
「陛下、今日、りっちゃんいないんですか？」
黒い髪の明らかに日本人っぽい人が言った。
日本人？
「律は妊娠中だから出せない。」
...律様ご懐妊！？
「え、妊娠したんですか？それはおめでとうございます。」
そうだねめでたいね。
「すみません、ヨウカンください～、ああ、せんべいもあるそれもください～。」
中に入ったら、どうでも良くなった。
だって、小豆のヨウカンが！せんべいが！
ああ、前世ぶりー！
「カザフ外務担当官、定期報告か、御苦労。」
陛下がヨウカンを待ちながら言った。
「ありがとうございます。」
陛下って王宮分館の役人まで把握してるんだ。
相変わらず麗しいなぁ。
「クーシャルーカがどうしても手合わせしたいと許可を出したが...そなた、文官なのに隙がないな。」
陛下に楽しそうに笑われた。
「恐れ入ります。」
陛下の後ろを見ると猛剣サルティーアスが警護についているのが見えた。
噂どおり、陛下の愛人って事はないよね。
クーシャのお兄さん、美形だな、
オレンジ色の瞳が綺麗、良いもんみた。
「陛下、商品です、そのうちりっちゃんのところ訪問しても良いですか？」
商品を陛下に渡しながら黒い髪に琥珀の瞳の店主が言った。
「ああ、むしろたのみたい、律は王宮から、当分出さない、ひまのようだ。」
出さないんだ。
「カザフ外務担当官、そのうち、そなたの剣技が見られるとよいな、定期報告、御苦労であった。」
そういって陛下はサルティーアス警護官を連れて帰って行った。
「お客さん、商品です、よく、せんべいと言う名前を...」
店主が怪訝そうな顔をしていた。
まあ、典型的なグーレラーシャ人から出る言葉じゃないよね。
「ああ、ヨウカン、せんべい。」
よく見るとシュークリームとか、シフォンケーキもある。
...今度の出張の時買いに来よう。
ニフィロ君の事は想定外だったけど。
今回の出張はこのヨウカンとせんべいだけでも価値があるな。
平和を噛みしめながら
デリュスケシに帰ってからたべようっと。
女王陛下(多分)と異世界人(確定)の
グーレラーシャの獅子新伝6とちょっとだけリンクしてます。(裏事情？です、こっちは表？)
よろしくお願いいたします。
