エピローグ ~花言葉~
最終回です。挨拶は後書きに回します。
「イヴ、気をつけるのよ。」
「はーい。いってきまーす。」
お母さんに見送られ、イヴは家の門を出る。門の外には、相変わらずボロボロのコートを着たギャリーが立っていた。
「久しぶり、イヴ。はい、これ。」
ギャリーが差し出したものは、白いレースのハンカチ。あのとき、ギャリーの腕に巻いた、あのハンカチだ。イヴはそれを受け取ると、じっとハンカチを見る。
「これ、まだシミが付いてる。」
「ごめんなさい。頑張ったんだけど、これ以上はどうしても落ちなくて。やっぱり、ダメかしら?」
「これ、落とし終わってから返してよ。真っ白になるまで、受け取らないから。」
そう言ってイヴはイタズラじみた笑みを浮かべ、ギャリーに白いレースのハンカチを押し返す。
「それは、ちょっと時間がかかるわね。もうしばらく、イヴに会いに来ないとね。」
そう言って、ギャリーは微笑む。イヴもそれに合わせて微笑む。
「それじゃあ、行きましょうか。」
「ギャリー、ちょっとしゃがんで。」
ギャリーは、イヴの突然のお願いを不思議に思いながらもしゃがむ。ギャリーとイヴの顔の高さが同じくらいになる。すると、イヴはギャリーの頬に顔を近づけた。
「!!」
ギャリーは急な出来事に動揺し、思わず立ち上がる。イヴの唇が触れたところを、そっと右手で触れる。
「お礼。まだしてなかったから。」
イヴがギャリーを見上げ、微笑む。ギャリーも笑い返そうとするが、動揺のせいでぎこちない笑みになってしまった。
「あ、ありがとう、イヴ。さ、気を取り直して、行きましょうか。」
動揺を隠せないまま、ギャリーはイヴの手を取る。イヴはギャリーを見上げる。
「その前に、ちょっと寄り道していい?」
「いいけど、どこに?」
「いいから、いいから。」
イヴは、ギャリーを引っ張って目的地に向かって走り出す。
小さな家の二階。そこでクレヨンでお絵かきをしている少女がいた。少女には、いままで友達がいなかった。ずっとひとりで絵を描き、ときには小さな物語も書いていた。
けれども、最近、ようやく友達が出来た。かけがえのない友達。その友達との「ふたりだけの秘密」は透明で綺麗なビンの中にしまってある。ビンの中にあるのは、小さな黄色いキャンディー。
ほら。窓の外を見てみると、その友達がやってきた。家の呼び鈴が鳴る。少女は、お母さんが出る前に、一階に降りていく。
「いってきまーす。」
「気をつけるのよ。」と後ろでお母さんの声が聞こえる。少女は扉を開ける。庭に咲いているたくさんの黄色いバラがメアリーの目に飛び込んでくる。その黄色いバラの向こうにいるのは、若いお兄さんと少女のかげがえのない友達だった。
「迎えに来たよ、メアリー。」
イヴがメアリーに駆け寄る。メアリーは大きく頷くと、満面の笑みを浮かべた。
「ねえ、イヴ。マカロンってなあに?」
「このくらいの大きさの丸いお菓子なんだけど。とっても美味しいんだよ。メアリーも気にいると思うな。」
「二人共、はしゃぎすぎて転ばないようにね。」
イヴとメアリーは手を取りあい、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。それを後ろから見ていて、笑みが溢れるギャリー。
人が溢れ、太陽の光が眩しい午後の風景。通り過ぎた花屋では、三色のバラが風で揺れる。
情熱 奇跡 嫉妬
三色のバラの花言葉が織り成す物語
不思議な美術館での 不思議な物語
そして ギャリーのコートのポケットの中には
三人の笑顔が入っている
―了―
「Ib ~不思議な美術館~」を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
勝手ながら、この小説に主題歌をつけてみました。といっても、動画サイトを見てもらわなくてはいけないのですが・・・。タイトルは、以下の通りです。
『Ib -again- ver.96猫』
96猫さんという歌い手の方が歌っているものです。You Tubeで、「Ib again 96猫」で検索して頂ければ見つかると思います。この歌を聴きながら、物語を振り返っていただけると幸いです。
さらに、物語の最後にイラストを載せました。これは、私のオリジナルではなく、どこかで見かけたものを模写したものです。このイラストが、ギャリーのポケットの中身なのかどうかは、みなさんのご想像にお任せします。
ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。おまけコーナーは、また後日投稿します。
それではまた、再会の日まで。バイバイ!




