遊園地
お気に入り登録が、また一件増えていました。なんだか、お気に入り登録数がすごいことになっていて、どう反応すればよいのやら・・・。登録してくださった方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録もそうなのですが、アクセス数もすごいです。読んでくださっている方、本当にありがとうございます!最後まで楽しんでいただけるよう、試行錯誤していますので、どうかよろしくお願いします。
さて、物語もかなり面白くなってきたのではないかと思います。そこで、そろそろ物語そのものに集中してもらうために、前書きを控えめにしていきたいと思います。(今までも、余計だった気がしますが・・・)
前書きは寂しくなりますが、本編は、予測不能の展開あり、涙ありで、今まで以上に盛り上がると思います(大した自信だな(笑))。「Ib ~不思議な美術館」を最後まで楽しんでいただけると幸いです。
メアリーが今の姿で動き回れるようになったのは、ほんの少し昔の話だ。ゲルテナの他の作品たちは、随分昔から動き回れるようになっていたにもかかわらず、メアリーだけは、ずっと絵の中で微笑んでいるだけだった。
ある日、メアリーは気がつくと、破れた絵の前で横になっていた。
「う・・・ん。・・・ここは?」
メアリーは、体を起こす。自分の身に何が起きたのか、よく分かっていなかった。メアリーの側に、一人の小さな青い鬼の人形が近づいてくる。
「ようこそ、メアリー。ようやく、動けるようになったんだね。僕たちと一緒に遊ぼうよ。」
メアリーは、その青い鬼と一緒に美術館を回った。メアリーにとって、見るものすべてが新鮮で、すべてが楽しかった。まるで、遊園地で遊ぶような日々を過ごしていた。それで充分だった。外の世界の存在に気がつくまでは―
「ねえ、ここ以外の場所もあるの?」
メアリーは、すっかり仲良くなった青い鬼と一緒に絵を描いているとき、そう尋ねた。
「うん、あるよ。最近はあまり来ないけど、僕たちはよく外の世界からお客さんを呼んで、一緒に遊ぶんだ。もうすぐ、招待できると思うから、メアリーも一緒に遊ぼうよ。」
メアリーは外の世界に憧れた。たしかに、この場所も楽しくはあった。けれど、メアリーはここにはないものが欲しかった。
あるとき、メアリーは知ってしまった。外の世界に出る方法を。それを知ると、メアリーはいてもたってもいられなくなった。しかし、外に出るためには、外からのお客さんが必要だった。
メアリーは、お客さんが来ることを心待ちにした。その日に備え、メアリーは、『ともだちのつくりかた』という本を何十回も読み返し、青い鬼と一緒にシミュレーションも重ねた。
そんなメアリーのもとに現れたのが、イヴとギャリーだった。メアリーが外に出るためには、二人も必要なかった。けれども、メアリーは二人をここに招待した。ひとりは、友達として。もうひとりは、自分と存在を交換する人として。
彼女は、この日をずっとずっと待ち望んでいた。イヴは、まさに彼女の友達としてふさわしかった。一緒に冒険をしてみて、彼女はそう確信した。
だけど、彼が邪魔だった。親でもないのに、いつもイヴの側にいて楽しそうにしている彼が許せなかった。イヴが彼のことを慕っているのも、嫌だった。けれども、メアリーは我慢した。どうせ、ここを出るまでのことだと自分に言い聞かせた。
おもちゃ箱の底。メアリーは、両手を地面につけ、動き出すことができなくなっていた。
(どうして?どうして、イヴはギャリーを選ぶの?どうして、私を選んでくれないの?どうして、約束を破るの?)
メアリーのもとに、小さな青い鬼が駆け足で近づいてくる。
「大変、大変!イヴたちが、あの部屋に入ろうとしているよ!」
メアリーはそれを聞くと、顔を上げ、血相を変えて走り出す。手には、パレットナイフが握られている。
あの部屋だけは。あの部屋だけは、たとえイヴでも入れるわけにはいかなかった。




