マカロン
この話のサブタイトルは、最後の最後まで悩みました。『マカロン』か『おもちゃ箱』か。
『パンドラの箱』の次が『おもちゃ箱』というのも面白いかな、とも思ったのですが、最終的に『マカロン』にしました。このサブタイトルにした意味はあります。しかし、残念ながら、今、述べることはできません。
次回から、ついにクライマックスです。原作をプレイした方の方が「え!?」と驚く展開かもしれません。もちろん、原作をまだプレイしたことのない方も、十分楽しめると思います。
そうかあ。ついにここまで来たかあ。長かったなあ。でも、ここまでの過程も重要だったんだよなあ・・・。
二人がクレヨンでできた道を歩いていると、また家が見えてきた。家の扉は凍りついているようだった。
「これじゃあ、入れないわね・・・。」
ギャリーが、ふと視線を下に向けたとき、自分の足元だけ明るくなっていることに気がついた。上を見ると、いつの間にか、クレヨンで描かれた太陽が空に昇っていた。ギャリーはもう一度、自分の足元を見る。
「この太陽の光、利用できないかしら・・・。」
ギャリーが、考え込む。その言葉を聞いたイヴは、扉の氷を溶かす方法を思いついた。イヴは、先ほどの鏡を取り出すと、太陽の光があっているところに置く。角度をうまく調節し、扉に当てる。扉の氷が溶け始め、水蒸気が出始める。
「なるほど、鏡を利用したのね!さすが、イヴ。やるじゃない!」
褒めるギャリーを、イヴはまっすぐ見つめる。
「ギャリー、気付いていたでしょ。」
「そんなことないわよ。アタシ、全く気付かなかったわ。それより、少し時間が掛かりそうね。」
ギャリーは、咄嗟に視線をそらす。明らかに、嘘だった。ギャリーは、イヴに花を持たせたかったのだろう。
「そういえば、メアリーって、なんであんなに執拗にアタシたちを追いかけてくるのかしら?ただからかっているようにも思えないし・・・。いまいち、彼女の目的が分からないわ。」
ギャリーが首をひねる。イヴは、それに対して何も答えなかった。
「ねえ、イヴ。アタシ、この間、マカロンがとっても美味しい喫茶店見つけてさ。」
「マカロン?」
イヴは聞いたことのない単語に、聞き返さずにはいられなかった。
「ハンバーガーみたいな形のお菓子よ。そこの喫茶店のマカロンさ、甘さが控えめですごく美味しいの。きっと、イヴも気にいると思うわ。ここを出たら、いつか一緒に食べに行きましょ。いや、絶対に行きましょ!約束よ!」
イヴはそれを聞いて、心が温かくなる。ギャリーは、本当に優しい。いつも、私のことを気にかけてくれる。もし、彼に出会っていなかったら、私は『ある少女の末路』と同じ運命をたどっていたに違いない。彼には、何度も助けられた。
ありがとう、ギャリー。大好きだよ。
「あっ、溶けたみたいね。行きましょ、イヴ。」
ギャリーが、イヴの手を取る。イヴは急に恥ずかしくなり、思わずギャリーの手を弾く。
「どうしたの、イヴ?」
ギャリーは不思議そうに動揺しているイヴを見る。イヴは、心を落ち着かせると、ゆっくりとギャリーの手を取った。
部屋の中には、何もなかった。部屋の真ん中に小さな鍵がポツンと置いてあるだけだ。時計もないのに、時計の秒針の音が部屋に響いている。ギャリーは、部屋の中央に行き、鍵を拾う。
「『おもちゃ箱のかぎ』って書いてあるわ。」
「この先に、おもちゃ箱があるのかもね。」
「そうじゃなきゃ、困るのよね。」
ギャリーが、イヴのところに戻ってくる。すると、イヴは誰かの視線を感じた。イヴが辺りを見渡していると、ギャリーも辺りを見渡していた。
「誰か、いるよね。」
「イヴもそう思う?」
「誰だろう?」
「分からない。でも、これだけ奇妙なことが起きている場所なんだから、視線を感じるのも特に変わったことじゃないのかもしれないわね。」
「幽霊とか?」
「やめてよ、イヴ。アタシ、幽霊苦手なのよ。」
そこで、二人は顔を見合わせ、笑う。いつの間にか、視線のことなど忘れてしまっていた。二人はそのまま部屋を出る。
さらに先に進むと、またしても家が見えてきた。今度の家は、扉にハートのマークが書かれていた。二人は、家の中に入る。
家の中は、大きな箱が置いてあるだけだった。箱には、張り紙が貼ってあった。
『おもちゃ箱』
「これが、おもちゃ箱ね。」
ギャリーは、さっき拾った鍵を使い、おもちゃ箱を開ける。おもちゃ箱を覗き込むと、そこには深い闇が広がっていた。随分深いようだ。
「底が見えないんだけど。これ、どれだけ深いのよ。」
「行ってみれば?」
ギャリーとイヴは振り返る。そこに立っていたのは、緑のドレスを着た少女。少女は無表情のまま、立っている。
「メア―」
二人はメアリーに突き飛ばされ、おもちゃ箱の中に吸い込まれていった。




