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ジャグリング

 今回の話では、私が作ったオリジナルの謎解きが出てきます。少し、強引なところもあるかもしれませんが・・・。よかったら、ギャリーと一緒に考えてみてください。ギャリーが絵を描いているという設定をうまく活かせたかなと思っています。

 ギャリーは、背中で扉を押さえつけていた。あの青い鬼の人形が追ってくるのではないかと心配だったからだ。

 しばらく押さえつけていたものの、青い鬼の人形が追ってくる様子はなかった。ギャリーは、胸を撫で下ろし、先に進む。

 さっそく扉が見えたので、ギャリーはその扉に近づき、ドアノブに触れる。触れた瞬間、ギャリーは咄嗟に手を引っ込める。

「なにこれ、冷たい。」

 ギャリーが触れたドアノブは、まるで氷のように冷たかった。あまりの冷たさに、ドアノブを握ることすら出来なさそうだった。仕方がないので、廊下を進むことにする。

 廊下を進むと、扉の横の壁に何かが寄りかかっているのが見えた。近づき、その姿がはっきりしたとき、ギャリーは思わず歩みを止めてしまう。そこにいたのは、青い鬼の人形。

―ずっと、あなたについていくね。わたしのおうち、すぐそこなの―

(いつの間に入ってきたのよ・・・。)

 ギャリーは、蒼鬼の人形を警戒しながら、となりの扉に入る。部屋には、七つの台座があった。台座は丸くくぼんでおり、なにかがはまっていたようだ。ギャリーは、部屋の奥の壁に貼ってある紙を見る。


 七つの色彩・・・絵の具玉を集めよ

 さすれば 部屋は色づき

 そなたの 架け橋となるだろう


「絵の具玉?そんなもの、どこにあるのかしら。」

 どうやら、この台座にはその絵の具玉がはまっていたらしい。ギャリーは辺りを見渡してみるけれど、それらしいものはなかった。

(他の部屋にあるのかしら。そもそも、絵の具玉って何よ?)

 ギャリーは扉を少し開け、外を伺う。青い鬼の人形は、同じ場所で静かに座っている。ギャリーは素早く扉を開けると、早足で廊下を進んでいった。

「あら。あれ、なにかしら?」

 ギャリーは、廊下に落ちている黄色いボール状の物体を見つける。近づいて、手にとってみる。その物体は柔らかく、少しでも力を込めるとすぐ潰れてしまいそうだった。わずかに、油絵具の匂いがした。

「もしかして、これが絵の具玉―あっ!」

 ギャリーが手にした絵の具玉が、パッと消えてしまった。

「これでいいのかしら・・・。」

 あの部屋に戻って確かめるべきだったのかもしれなかったけれども、ギャリーは、なるべくあの青い鬼の人形の前を通りたくなかった。ギャリーは不安を残しながらも、新しいと扉に入る。

「この部屋、すごく暑い!あまり長居できなさそうね・・・。」

 部屋の床からは、赤いガスがところどころ吹き出していた。どうやら、そのガスのため部屋が暑くなっているようだ。

(あそこに、何かあるわ―)

 ギャリーは、早足で床に刺さっているものに近づく。床に刺さっているのは、赤い傘だった。

(この傘、なにかに使えるかしら・・・)

 今までも、ここで手に入るものは何かに使えた。きっと、この傘も何かに使えるに違いない。ギャリーはそう思い、赤い傘を床から抜く。抜いたとき、紫色の球体が出てきた。

(これは・・・絵の具玉?)

 ギャリーがそれを手にすると、またしても絵の具玉はギャリーの手から消えてしまった。

(暑くなってきた。早く外に出なくちゃ!)

 ギャリーは赤い傘を持ち、部屋の外に出る。

「我、汝の助け、求む。」

 ギャリーが振り返ると、そこにはピエロがジャグリングしている絵があった。ギャリーは、視線を下に動かし、タイトルを見る。

『ジャグリング』

「我、悩む。赤い果実、黄色の葉、それともうひとつで、黒い雲を作りたい。汝、この謎、解けるか?」

 『ジャグリング』は絵の中で何色もの球をジャグリングしている。

「それだけ?訳分かんないんだけど・・・。」

「解けぬのなら、用はなし。汝、ここで彷徨うべし。」

「分かったわよ!解けばいいんでしょ!」

 ギャリーはそう言ったものの、皆目見当がつかなかった。果実と葉で、なぜ雲ができるのか。

「赤と黄色、そして、黒・・・。だとすると、もうひとつはたぶん、青ね・・・。」

 赤と黄色と青の絵の具を混ぜると黒になる。このなぞなぞは、色の合成について尋ねているのだ。

「問題は、青い何かよね・・・。」

 ギャリーは腕組をし、悩み始める。青いものといわれて思いつくものは、そんなに多くなかった。しかし、本当にそれでいいのか。ギャリーには、確信がなかった。

 ギャリーは、何気なく『ジャグリング』の隣の絵を見る。絵には、黒い猫に白い猫がかぶさり、その二匹がかぶっているところが灰色の猫になっている絵だった。

「絵の中で色が合成されている・・・。」

 ギャリーは、再び考える。赤い果実、黄色い葉、そして―

「―青い空。そして、それが重なったところに、黒い雲ができる。そうよ!それで、一枚の絵ができるじゃない!」

 ギャリーは、「青い空」と『ジャグリング』に教える。『ジャグリング』は、何か考え込んでいるのか、しばらく何も言わずにジャグリングを続けた。

「我、謎、解けり。感謝する。」

 『ジャグリング』はそう言うと、青色の球を絵の外に放り投げた。青の球は、音も立てずに床に落ちる。

「これ、絵の具玉?」

 ギャリーは、青の絵の具玉を拾う。絵の具玉を拾うと、あっという間にギャリーの手の中から消えてしまった。ギャリーは、廊下を進む。

 廊下を進むと、釣り糸に釣り針がついている絵が目に入った。ギャリーは、その絵のタイトルを見る。

『釣り針』

 よく見ると、釣り針が絵の外に出ていた。ギャリーは、窓から覗き込むようにして、絵の中から上につながっているかどうかを確かめようとしたが、やはり、絵の中は見ることができなかった。

「これ、ここにかかるかしら?」

 ギャリーは、釣り針に傘をかけてみた。すると、釣り針が素早く絵の中に入っていき、赤い傘も一緒に絵の中に入っていってしまった。

「え!?絵の中に入っちゃったわ。本当に訳分かんないことばっかり起きるわね。」

 ギャリーは、しばらく絵の前に立っていた。もしかして、赤い傘は手放してはいけなかったのではないか、と少し不安になったものの、赤い傘のことは諦めて、絵の具玉を探しにまた廊下を進み始めた。


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