わたしも連れてって
「青い鬼の人形」と表現していますが、本当にこの表現でいいものか・・・。
鬼といえば、角が生えていて、虎の皮のパンツを履いているイメージが強いと思います。しかし、原作をプレイした方はお分かりかと思いますが、この人形はそんなことはありません。
でも、私の語彙不足のせいでしょうか。どうしても、「鬼」と表現するしかありませんでした。どれだけ考えても、ほかにいい表現が思い浮かびませんでした。
とりあえず、昔話によく見るあの鬼ではないということを、ここで伝えておきます。
ギャリーが扉をくぐると、廊下が続いていた。廊下の突き当りに、青い人形が置いてあった。近づいてみると、それはさっき部屋にたくさん置いてあった赤い目の青い鬼の人形だと分かった。
「また、この人形・・・。」
―こんにちは、ギャリー。わたし、ひとりでさみしいの。だからいっしょにつれてって―
どこからともなく、声が聞こえてくる。ギャリーは返事をすることなく、廊下を進む。廊下を進むと、また青い鬼の人形が置いてあった。ギャリーは振り返ってみるが、さっきの場所までは見えなかった。
―ねえ。どうして、つれてってくれないの?―
またしても、声が聞こえてくる。ギャリーは、気にせず先に進む。廊下の突き当りまで進むと、また青い鬼の人形が置いてあった。
―なんで、むしするの?わたしのこと、きらいなの?―
ギャリーはさすがに怖くなり、早足で先に進む。すると、進んだ先にまたしても青い鬼の人形が置いてあった。ギャリーは、立ち止まることなく人形の横を通り過ぎる。
―ねえ、あそぼうよ。ここ、おもしろいもの、たくさんあるんだよ―
(あの人形、いったいなんなのよ。)
ギャリーの足の動きはだんだん速くなり、気がついたときには駆け足になっていた。もはや、青い鬼の人形の横を通り過ぎたことにすら、気がついていない。
―わたしのおともだちも、たくさんいるんだ。しょうかいしてあげるね―
ギャリーは止まることなく走り続ける。廊下の角を曲がると、正面に扉が見えた。そこで、ギャリーは息を呑む。扉の前にも、青い鬼の人形がいた。
―えいえんに、ここにいろ―
「一体どこまで、ついてくるのよ。もう、いい加減にして!アンタの相手をしている暇なんてないのよ!」
ギャリーは、そう叫ぶと扉に近づく。青い鬼の人形が動き出す気配はない。
「こういうのには、関わらないのが一番だわ。」
ギャリーは、人形を扉の前からどける。人形が地面に投げ出されたとき、首がゆっくりとギャリーの方を向いた。ゆっくりと口が開く。
「つ れ て い け。」
ギャリーは小さい叫び声をあげ、扉に飛び込んだ。
イヴとメアリーは、狭い通路を通っていた。あまりにも狭いので、イヴを先頭にして一列になって進んでいた。
しばらく進むと、広い空間に出た。
「あっ、この絵なんだろう?」
メアリーが絵に近づく。海辺に男の人と思われる影が立っている絵だった。イヴは、絵のタイトルを見る。
『釣り人』
「釣り糸、垂らしているんだね。何を釣ろうとしてるんだろ?」
メアリーの言う通り、男の人は、釣り糸を海に垂らしているようだった。イヴが、その絵を見ているうちに、メアリーはさっさと扉に手をかけ、部屋の中に入ろうとしている。イヴは慌てて、メアリーの後を追いかける。
メアリーの後を追いかけて入った部屋の中は、何かがおかしかった。その部屋には彩がなく、薄暗いのとは、少し違った感じだ。
「なにここ。色がない!」
メアリーが驚きの声を上げる。なるほど。たしかに、この部屋は白黒になっている。イヴの胸ポケットに入っているバラの色も、白黒で表されている。イヴは、メアリーに指摘されるまで、この部屋が白黒になっているという考えには至らなかった。
部屋の真ん中には、大きな溝がある。そして、その溝に向かって、キャンバスと椅子が置かれていた。
「筆とパレットが浮かんでる・・・。」
「誰か、いるみたいだね。」
イヴとメアリーは、しばらく白黒の部屋を探索したけれど、大した発見はなかった。仕方がないので、二人は部屋の外に出る。