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金髪の少女と黄色いバラ

 またまた、お気に入り登録が一件増えていました!ありがとうございます。kouriさんの「Ib」の人気のおかげでしょうか。

 さて、今回は新しい登場人物が出てきます。これでようやく、物語が本題に入った感じがします。原作でも、ここからが見せ場だったように感じました。

 これから、どんな試練が待ち受けているのか。みなさんもイヴたちと一緒に、ワクワク、ドキドキしながら、物語を読み進めていただけると幸いです。

 二人は、部屋を出ると階段を下る。階段を下ると、左手に薄暗い廊下が続いていた。二人は、廊下を進む。

「イヴ、アタシ思うんだけど、アタシたち以外にも、ここに迷い込んだ人がいるんじゃないかしら。いや、これといった根拠はないんだけど―」

「私も、そう思う。」

「イヴも?なにか見つけたの?」

 イヴは首を横に振る。イヴも、根拠があるわけではなかった。けれども、イヴは何度か、誰かに見られているような感じがしていた。そして、その感じは作品たちのときとは違うものだった。

「あっ、これ、ミルクパズルじゃない?」

 ギャリーが、壁にかかってあった一枚の絵を見つけてそう言った。その絵のタイトルは、まさしく、『ミルクパズル』だった。

「ミルクパズルってなに?」

「ああ。ミルクパズルっていうのは、真っ白なパズルのことよ。絵が描いてないから、完成させるのが難しいのよ。もっとも、頭のいい人は、あっという間に完成させちゃうらしいんだけど。イヴもやってみたら?」

 イヴは、首を横に振る。絵のないパズルを完成させて、何が面白いのだろう、と思っていた。

「まあ、アタシは断然、絵のあるパズルの方が好きだけどね。だって、絵を完成させてこそ、達成感があるものでしょ。」

 イヴは、大きく頷く。ギャリーは、まさにイヴが今思っていたことを、そのまま口にした。

「あそこに扉があるわね。入ってみましょ。」

 二人は、扉に入る。部屋の正面には絵が飾ってあり、その絵の両側には本棚が並んでいた。赤が主体の絵は何が描かれているのか、よく分からなかった。二人は、正面の絵のタイトルを見る。

『決別』

「なんか、嫌な絵ね。」

 すると、突然部屋が真っ暗になる。隣にいる二人が互いの姿を確認できないほど、真っ暗になった。

「なに!?停電。イ、イヴ!そこにいる?」

「うん。」

「よかった。いい?じっとしているのよ。あっ、そういえば、アタシ、ライター持ってたんだ。これで―。」

 ギャリーがライターに火を点けると、部屋の中がギャリーを中心として、ほのかに明るくなる。そう思った瞬間、停電がなおり、部屋の中に光が戻る。

「・・・え?」

 イヴとギャリーの二人は目を疑った。部屋一面に、様々な絵の具で落書きをされていた。


 たすけて

   やめて    こわい

  しにたくない     いやだ

       だしてくれ


「な、何よ、これ!」

 ギャリーはイヴの手を引いて、慌てて部屋の外に出る。部屋の外に出ると、またしてもギャリーは自分の目を疑った。


 お客様に申し上げます

 当館内は 火気厳禁となっております

 マッチ、ライターなどの持ち込みは、ご遠慮くださいますようお願いします

 万が一、館内でそれらの使用をスタッフが発見した場合―


 いつの間にか、赤い絵の具で廊下の壁や床にそう書かれていた。左を見ると、赤い足跡が続いていた。ギャリーとイヴは、足跡を追ってみることにする。

「きゃ!?」

 ギャリーは何かにぶつかり、その何かは後ろに倒れた。

「ちょっと、大丈夫!?」

 床に倒れているのは、女の子だった。金色のウェーヴのかかった髪に、緑色の瞳をしていた。肌は陶器のように白い。緑のドレスを身にまとっている。首には、大きな青いリボンを巻いている。歳は、イヴと同じくらいだ。

「ごめんなさい。怪我ない?」

 ギャリーが女の子に手を差し出す。女の子は、怯えながらもその手をつかみ、立ち上がった。

「ねえ。アナタ、もしかして美術館にいた人じゃない?私たち、ここから出る方法を探してるんだけど―」

「えっと。私も外に出たくて、ここまで来たの―。」

 女の子は、戸惑いながらもそう答える。女の子の視線が定まらない。

「やっぱり!アタシ、ギャリー。それで、こっちの子はイヴっていうの。」

「私、メアリー。」

「ねえ。よかったら、一緒に行かない?みんなでいたほうが心強いし。」

 メアリーと名乗った少女は、イヴの方をじっと見る。メアリーは、イヴに近づくと、おそるおそる手を伸ばしてきた。

「よろしくね、イヴ。」

「よろしく、メアリー!」

 イヴはメアリーの手を握る。すると、メアリーは安心したのか、笑顔が浮かぶ。

「うん!」

「それじゃあ、決まりね。さあ、新しく仲間も増えたことだし、はりきっていくわよ!」

「おー!」

 ギャリーの掛け声に合わせて、メアリーが元気よく右手を上につき出す。メアリーも、ずっとひとりでこの奇妙な美術館を探索していたのだろうか。同じ状況にいたイヴは、メアリーが喜んでいる姿を見ると、同じようにうれしくなった。

 三人で廊下を進むと、水の入った花瓶があった。

「イヴ、バラ、花瓶に挿したほうがいいんじゃない?」

 イヴは、胸ポケットにささっているバラを見る。どことなく、元気がなくなっているようだった。イヴは頷くと、赤いバラを取り出し、花瓶に挿す。バラの色が鮮やかになった気がする。

「そういえばさ、イヴは赤いバラ、アタシは青いバラを持っているわけでしょ。ということは、メアリーもバラを持っているの?」

 ギャリーは自分の青いバラを花瓶に挿しながら、メアリーに尋ねる。

「うん、持ってるよ。黄色いバラ!」

 メアリーは、これが仲間の証と言わんばかりに、うれしそうに黄色いバラを二人に見せた。

「あら、ホントね。二人とも、しっかり持ってるのよ。バラは絶対に手放さないこと。他人に渡すのも、危ないからね。それから―」

「わー。イヴのバラは赤なんだね。私のバラは、黄色だよ。黄色好きなんだけど、ピンクも好きなんだ。あと青も!」

 メアリーは、笑顔でイヴに話しかけている。イヴもそれに対して、笑顔で対応している。

「人の話聞きなさいよ・・・。まあ、いいわ。」

 ギャリーにも、メアリーの孤独から解放されたうれしさが理解できた。だから、メアリーが話も聞かずに、楽しそうにイヴと話すのも仕方がないと思っていた。

―一体 どちらが正しいのか―

 ギャリーは、辺りを見渡す。

(今の声は?)

「どうしたの、ギャリー?」

 イヴとメアリーが心配そうな顔でギャリーを見上げている。

「なんでもないわ。さ、行きましょ。」

 ギャリーが先頭に立って進む。イヴとメアリーは、互いに手をつないでギャリーの後ろに続く。


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