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覚醒世界のカタルシス  作者: 朝露 壱
第1章 ―Awakening―【覚醒】
7/26

Episode:06 Fools' thought 【愚者達の思い】

「とりあえず、極力ワープゾーンとかは使わない方が良いでしょう。他の街や村に行くにはモンスターが居るし・・・戦闘に慣れた後にしたほうがいい。今は近くの探索と情報収集を……」

「・・・そうだな。では、私は近くを探索をしよう」

「なら僕も探索を手伝います。一応、レベルは50ですし」


――【愚者達の宴会(フールパーティ)】ギルド基地、作戦室。

結局、アレ以来何も手がかりを得られず一日を過ごした俺達はギルド基地へ再び集まった。

愚者達の宴会(フールパーティ)】、現メンバーはサクラさん、ラルク、ミナト、マサト、俺の五人。

皆はどうやらレベルは上位の方で、一番高レベルなのはマサトとミナトさんで、どちらもレベル70。

マサトはどうやら探索係にはならないらしく、疲れたように溜息を吐いた。


「俺は悪いが、情報収集に回るぜ」

「じゃあ私も行くよ。一応このゲームで知り合い多いしさ。多分、巻き込まれてると思うし、心配だから見つけるのもついでに、ね」

「・・・じゃあ俺は、別行動で情報収集する」


「じゃあ行って来るわ」、と言ってマサトとサクラさんは先に出て行き、その後にラルクとミナトさんが出て行った。

とりあえず昼食――12時には間に合うように、と集合時間を決めた。

どうやら時間帯は現実(リアル)と変わらないらしく、コノ世界にも時計はいくつか設置されていた。

それにどうやらコノ世界の食べ物は俺が食べた時と同様に、味はちゃんとしていて不味くは無い。

だが、調理するにはどうやら相応の調理スキルが必要らしく、現在調理スキルを習得しているのはサクラさんだけということらしく、あまりにも不便すぎる。

俺が調理スキルを学ぶって言う手もあるが・・・コノ世界に来る前はいつも『兄貴』が家事全般をこなしていたから料理や家事に自信は・・・無い。


(まぁ、そのことはひとまず後にしよう)


俺も基地から出て外の空気を吸った。

昨日と比べると元気になった人は少なくなく、人々が街を歩く姿が多々見られた。

NPCノンプレイヤーキャラクターだった彼らもまた、自分探しの様な感覚で店を続けていたり、スキルを教えたりしているらしい。


(・・・そういえばあの時、あの歌はやっぱりあの銀髪の男が歌ってたのか・・・?そもそもアイツ、なん何だ?NPCか?それとも――)


《歌》に《銀髪の男》。

俺は思考をめぐらせて見たが、回答は出ず諦め、とりあえず情報収集というよりは街の探検らしき事をすることにした。

大広場まで来て、一度ベンチに俺は座った。

噴水から溢れる水に触れると冷たかった。

当たり前だけど――コノ世界では在り得ない事。

すると、あの宿屋。

俺がコノ世界に来た時初めて入った宿屋から、あの眼鏡に着物を着た長身の男が出てきた。


「あ・・・こ、こんにちは」


何となく俺は挨拶をすると、彼はぺこりと頭を下げて俺に近寄ってきた。

彼の表情は無表情で、やはりボォッとした印象を受ける。


「・・・大変ですね」

「あ、え、はぁ、まぁ。・・・あの、貴方はNPCだったんですか?」

「・・・はい。一応イベント用NPCでした。・・・今は、そういうデータは、無いんですけどね」


《データ》が無い今のNPCは人工知能に近い物ですね。と、彼は笑わずに呟いた。


「だけれどもそれも、AI(人工知能)も《データ》ですよ。貴方達は、NPCでもなくAIでもない、私達と同じ《人間》だと、思うんですけど・・・」

「・・・良く判りませんね。コレが、人間なんですか?不思議ですね。なんだか、可笑しいです」


彼は面白そうに笑うと、俺の方を向いた。

目の前に立っている彼はNPCではなく、本当に、生きている人間なのだと。

もう一度改めて確認させられたような気がした。

だから、笑うし、こうやってゲームみたいに同じ会話を繰り返さず、色々考えて言葉を選んで口に出す。


「面白いですね、風邪は凄く冷たく感じたり、暖かく感じたり、お腹が減ったり」

「は、ハァ、そうですか・・・」


俺には良く判らない感覚だが・・・彼は本当に楽しそうに笑う。

満足そうにもみえた。


「これから、どうするんですか?」


男に聞かれ、俺は誰に向けることも無く頷いた。


「今は生きる事だけを考えます」

「・・・なるほど。・・・頑張ってくださいね。私も出来るだけなら何か手伝いをしましょう」

「ありがとうございます・・・。そうだ、貴方の名前は?」


思い出したように俺は男に聞く。

まだ名前は聞いていなかった。

彼はフワッと笑う。


「私の名前は、ジーアスです。ジーアス・ブルグ」

「俺はソーヤ。・・・よろしくお願いします」


ジーアスさんが俺に手を差し伸べ、それを俺は握り返した。

――ガンッ

突然ジーアスさんと俺の間に槍が突き刺さった。

その槍はスキルの一つで、光り輝く魔力で形作られたモノ。

直ぐに粒子となって消え、その場所に鋼の鎧を纏った女性が立った。

手には武器となる銀色に輝く美しい装飾の長い槍。

槍を持っているところからして職業は【重槍使い(スピアマスター)】だろう。

女性は漆黒のロングの髪を一つに結い、美人と言う言葉が相応しい人だった。


「――貴様がソーヤか」

「・・・え?は、はぁ、そうですけど・・・」


突然名前を言われ、俺は戸惑いながら女性の顔を見上げた。

俺よりも明らかに年上。

鋭い、冷たさを放つ眼光に俺は怯む。


「我が【ナイトローズ】のギルドメンバーを侮辱した罰を受けてもらう」

(【ナイトローズ】!?)


ラルクが所属していたあのギルドか・・・ちょっと待て。ギルドメンバー・・・。


(ギルドメンバーって・・・あの時の三人組か!?)

「ちょ、ちょっまっ・・・」

「行くぞ!【雷撃】!」


長い槍に雷のエフェクトが付与し、俺を目掛け突かれる。


「う、ぉぉぉぉッ!?」


ソレを海老ぞりの体制で避け、瞬時に頭の中に陣を描く。

倒れそうになる体勢のまま、両手を彼女の目の前に広げる。


「【氷結の剣(アイスブレイド)】!!」


――ガギャァァァンッ

体を起き上がらせる反動で氷の剣を振り上げた。

振り上げた剣は彼女が攻撃を察知して、盾にするために胸の前で掲げた槍と摩擦を起こす。

火花が散り、交差する剣と槍が音を鳴らす。


「ク、ゥァ・・・」

「・・・ッ中々やるな・・・ッだがッ!」


再び槍にエフェクトが纏う。


(まずい・・・!)


「【炎撃の舞】!!」


――ズドォォォッ

目の前で炎が溢れ、焼かれるのは俺が魔力で造った氷の剣。

同時に俺の身体も焼かしてゆく。


「あっつ!?」

「終わりだ!――【雷撃】!!」


目の前に飛び散る閃光は、眩く輝き、俺の身を貫こうとする。

俺の頭に、瞬時に思い浮かぶ陣。


「――・・・【青い砲撃(ブルーブレイク)】」


蒼い粒子が両手に集まり、俺はそのまま両手を彼女に翳した。

――ズドォンッ


「――ッ!!?」


蒼い粒子は一閃となり、彼女に向かって放たれた。


(制御できないッ!?)


「止まれ、ッ」


しばらくするとその蒼い光は消え、何とか止める事が出来た。

俺は肩で息をし、何とか呼吸を整える。

(なんだ、さっきの・・・)

両手を見ながら、俺は身体に異常が無いか調べる。


「・・・貴様、なるほど。我がギルドメンバーを倒したというのも頷ける強さだ・・・名を名乗ろう。私の名は『アオイ』だ」

「・・・へ?」


そういうと彼女はフッと笑い、俺の顔を見た。


「・・・だが、仲間を傷つけた罰はしかと受けてもらう」

「あ、あの。そのことなんですが・・・。その、俺の友達が・・・」


俺は何とかこの人の誤解を解こうと、ラルクの一件を話した。

彼女は考え込むようにして、短く溜息を吐く。


「・・・そうだったのか。・・・すまなかった。私の管理不足だ。・・・なにぶん、ギルド内の治安は悪くてな・・・」

「・・・あ、えっと・・・とりあえずラルクは無事ですから」

「・・・コレはほんの謝礼だ。受け取ってくれ」


そういって手渡されたのは【傷薬】と【マナポーション】を各30個、それに10万ゴールドだった。

俺は慌てて彼女に付き返す。


「い、要らないですッこんなッ・・・」

「遠慮は要らない。【ナイトローズ】にはまだ資金は山ほどある。それにこの【傷薬】と【マナポーション】も腐るほどあってな。初期メンバーや初期レベルに手渡していたのだが・・・まだあまっていてな」


・・・俺は言葉を濁りながら、ソレを受け取った。

だけれど10万ゴールドは返した。

・・・皆に後で配ろう。


「それでは私は帰る。何か手伝う事があれば手伝おう。今度ギルド基地に遊びにでも来るといい」


そういってアオイさんは俺に【ギルド基地招待状】という物を渡すとスタスタとどこかへ消えていった。

ジーアスさんが近付いてくることに気付いた俺は安堵の溜息を吐き、身体の力が一気に抜け落ちるのを感じた。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。・・・一応」


俺は苦笑しながら答えた。

今日は色々とありすぎた。

ドッと疲労が出てきた様に感じてその場にへたり込む。










「・・・マサト君」

「・・・何ですか?」


仏頂面で無愛想のまま、マサトは振り向いた。

【草原カトラス】に来た二人は早足でフィールドの奥へと進む。

奥へ進むにつれ、段々と強敵が現れるがソレを難なく倒してゆく二人に数名居るほかのプレイヤー・・・今では人間、生きている存在になった者達が唖然としていた。

そんな光景を横目で見ながら、サクラは仏頂面で無愛想の彼に苦笑しつつ後を着いて歩いてゆく。


「何でそんなに、不機嫌なのか、なぁー・・・なんて。・・・皆と会ってから、ずっとだよね?良かったら理由、教えて欲しいんだけど・・・」


マサトは足を止め、それに驚いたサクラの方を振り向いた。

睨むようにサクラを見て、歯軋りをする。

手は拳に握られ、震えている。


「――ソーヤは俺の親友です。勝手に、色々吹き込まないで下さい」


サクラは苦笑しながら「怖いなぁ」と呟く。

それにしても色々吹き込むな、か。


「えぇと・・・。私、何か言ったっけ?その、ソーヤ君に」

「・・・言ったでしょう。ソーヤが言ってましたよ」


今度は本当に殺意を持っているような眼で睨むマサト。

サクラはその視線に顔を歪め、重い溜息を吐いた。


『マサトは本当にいい奴ですよ』


(ソーヤ君は、知らないんだよね。マサト君のこういうところ)


「・・・ソーヤ君の前ではそんな事言ったりしないんだ?」

「当たり前じゃないですか。ソーヤを傷つけることなんていうわけが無いじゃないですか」

「・・・何でそんなにソーヤ君に執着するの?・・・まさか!?」

「違いますよ。何考えてるんですか。・・・アイツは俺の親友です。大切な」


マサトは溜息を吐き、ゆっくりと歩き出した。


(ソーヤは俺が護らないと)

『――俺は想夜だ。正人っていうのか?宜しくな』

(・・・)


思い出した懐かしい記憶を仕舞い、前を向いて草原の中を進む。

その後に続くサクラは草道を進みながらマサトの顔色を伺った。


「・・・アイツは、親友です」










「・・・大丈夫なんでしょうか」

「何がだ?」


ラルクとミナトの二人は【西の海辺ニカイ】にやって来た。

タウンでの情報収集は多分、ソーヤさんがやっているみたいだし大丈夫でしょう。フィールドに繰り出しているPC・・・基、人を探しながら聞き出していっている最中、ラルクはフッと思ったことを呟いた。


「・・・僕、あまりマサトさんのこと、気に入りません」

「・・・何故だ?」

「なんていうか――何か、かくしてそうなんですよ。ソーヤさんの言う、まるで本当に《優しい人》なんて――」

『馬鹿じゃねぇの?ありえるわけがねぇだろ!お前の友達?ふざけるなよ!アハハッ・・・』

「・・・存在する訳が、ないんですよ」

「・・・私は悪い奴には思えないけどな。彼は本当にソーヤを大切に思っているはずだ」

「そんな事、何故判るんですか?」

「判る。彼の行動を見て居ればな」


マサトさんの行動を、見ていれば?


「・・・ソーヤが言っていただろう?彼がソーヤがコノ世界に来た時、現実世界で色々調べてくれていたと。・・・ソレほど友達思いの人間が悪い人柄だとは思わないがな」









「えぇっと。・・・どうしたんだ?」


俺は物凄い不機嫌なマサトに声をかける。

サクラさんは何が面白いのかヘラヘラ笑っている。

後ろでミナトさんとラルクは二人で何かを話し合っているようだった。

――午後12時。

調度お昼。

とりあえず俺は食材を買った後でギルド基地に来たのだけれど、既に全員集まった後で俺が最期だった。


「・・・別に。何でもない」

「・・・そ、そう?」


俺は苦笑し、食材をテーブルの上に置いた。

食材は野菜と、タウンで開かれているバザーの肉類。

それに【ミネラルウォーター】が何本か。


「サクラさん。調理お願いして良いですか?」

「もっちろん!」


不機嫌なマサトに対し、サクラさんは超ご機嫌で楽しそうに調理を始める。

調理スキルを開き、スキルを選んでいるようだ。


(何があったかは知らないけど、なんかギスギスしてるなぁ・・・)


ポケットから【傷薬】を一個取り出して俺はソレを飲んだ。

アオイさんとの戦闘で火傷や怪我が出来てしまった。

傷が回復してゆくにつれ、俺は同時に【マナポーション】も口に含んだ。


「・・・こんな時、《兄貴》が居たらなぁ・・・」

「・・・え?ソーヤさん、お兄さんなんて居たんですか?」

「え?・・・うん、まぁ」

「・・・俺、初めて知ったんだけど」

「うん?言ってなかったっけ?」

「・・・」

「・・・ぶふっ」


突然サクラさんが笑ったので俺は驚いて振り向いたがサクラさんは平然としていた。

・・・マサトのほうを見ると今まで見たこと無い程顔を歪めてサクラさんを睨んでいた。

・・・本当、二人で行動していた時何があったのだろうか。


「どんな人なんだ?」

「・・・えぇと。家事全般はこなすし、それに頭も良いし、容姿も完璧で・・・それに、警察官だし」

「け、警察の方なんですか?」

「っていうか年幾つなんだ?結構離れてるのか?」

「え、あ。まぁ・・・。年は20なんで」


そうか、マサトにまだ言ってなかったのか。


(まぁ、あまり話したくないしなぁ・・・今のも、ポロリと言っちゃったみたいなものだし・・・)


兄貴は容姿端麗で頭脳明晰、更に運動神経が良く料理や家事も難なくこなすほぼパーフェクト人間な訳だが、性格は宜しくない。

無口で無愛想だし、何を思っているかわからない。

弟の俺でさえあまり兄貴が喋るところを余り見た事がない。

怒鳴ったり、泣いた所とか、大声を出す瞬間なんて――。


『――想夜ッ!』

「・・・?」


ズキン、と頭が痛んで、俺は頭を抑える。

幸い頭痛は直ぐに治まり、然程辛いものでもなかった。


―――ザザッガガッ・・・


ノイズの様な音が聞こえて、俺は顔を歪める。

ノイズは直ぐに収まったが、やはりあの、不可解な身体の歪みを感じた。


(・・・本当に、このまま、このままだったら)


このまま、だったら?

どうなるんだろう。

・・・俺はその考えを振りかぶって、無理矢理意識を皆との会話に集中させた。

今回はグダグダになりすぎてます(汗)

次はちゃんとした文章になるようにします。

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