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覚醒世界のカタルシス  作者: 朝露 壱
第1章 ―Awakening―【覚醒】
12/26

Episode:11 The omen of a black intrigue 【黒き陰謀の予兆】

――対立せし時が、来た。

闇と光。太陽と月のように二つは対立する。

この、【非現実世界】で、互いは何を見る。





「おはようございます。ソーヤさん」

「ジーアス、さん。おはようございます」


ジーアス・ブルグさんは宿屋の前で相変わらず変わらない着物姿のまま立っていた。

特に何をするでもなく、どうやらボォっと空を見ていたようだった。

俺はというと、デルタのことも気になるが情報がない以上、むやみに動いてもダメだろうということで、とりあえず武器や防具、薬草などアイテムの調達に向かっていた。

【アイリスタウン】の中では既に立ち直った人であふれていて、活気が戻ってきていた。


(良かった。――みんな、立ち直れてるな)


そんな風にタウンを歩いていると、ジーアスさんが見えたというわけだ。


「ジーアスさん。お久しぶりですね。えっと、どうですか?その、宿屋の方は」

「繁盛していますよ。お陰で助かってます。ソーヤさんのほうは何か進展が?」

「――いや。元の世界に戻る方法は、まだ」

「――そうですか。あの、良かったら宿屋に寄って行きませんか?気晴らしにでも」

「そう、させてもらいます」


俺は、ゆっくりと宿屋に足を向かわせる。

隣にはなぜか嬉しそうなジーアスさんが軽い足取りで歩く。


「さぁ、どうぞどうぞ」


俺が扉を開けるように促され、俺は扉を開ける。


――カランッ・・・・・・


「いらっしゃいませー!」


明るい声が目の前で弾けた。

がやがやと中は賑わっていて、お互い何か会話をしているようだった。

NPCノンプレイヤーキャラクターたちだった彼等は忙しそうに汗を流しながら、対応に追われている。


「ご注文は何か?」

「じゃあオレンジジュースで」


俺が席に座るとメイドさんらしき人が居れに近寄る。

俺はメイドさんらしき人が運んできたオレンジジュースを口に含む。

見渡すと見知らぬ職業(ジョブ)PCプレイヤーキャラクターたちがいた。


(あ、ジーアスさん、いつのまに)


ジーアスさんはいつの間にか俺の隣を離れ、宿屋の手伝いをし始めていた。

俺は邪魔にならないように無言でジュースを飲み続ける。

――この数日間で起きた出来事は、本当に信じられない出来事ばかりだ。

現実には実際ありそうにない出来事――。

でも、この世界は現実(リアル)ではない。

非現実世界――別世界なんだ。

今までの常識は殆ど通じない。

人殺しとも近いPK(プレイヤーキラー)だって容易く行えるこの世界では――。

そして、この世界に『死』は存在しない。

あのPK(プレイヤーキラー)のいうことが本当なら。

この世界で死ぬことは不可能だ。

そして――自らを『真理(ルール)を求めるモノ』だと名乗った男たちのこと。

――俺のことも知っていた、彼等は何者なのだろうか。

早くデルタを助けて、あの男たちからなぜ俺のことを知っているのか聞き出さなければ。


「・・・・・・早く」


カラン、とコップの中の氷が揺れ、音が鳴る。

俺は自分の手のひらを見て、またあのノイズを感じた。

自分の体が、ボロボロと脆く崩れる感覚に恐怖を覚え、俺は自然と身を震わせた。


「・・・・・・まだ、時ではない」

「え?」


トンっと、肩に誰かの手があたったかと思って振り向くと、そこには誰も居なかった。

再び手のひらを見ると、いつもどおりの身体だった。

身体にはノイズなんて走っておらず、恐怖も消えていた。


「――?」


俺が首を傾げながら手のひらを見ていると、後ろから誰かがまたポン、と手を置いた。


「ソーヤ。また会ったな」

「アオイさん……?」


アオイさんは俺の後ろから回って、俺と向かいにある椅子に座った。

カラン、と置かれる水が入ったコップ。


「どうだ。あれから」

「――何も進展はありませんでした。でも、この世界のルールというか・・・・・・規則というか。幾つかわかった……んです」

「規則・・・・・・?」

「第一に、この世界では人は死ねない。それはPCプレイヤーキャラクターNPCノンプレイヤーキャラクターも例外なく。モンスターも、同じく。倒しても倒してもどこからか溢れてくる。第二に、この世界ではレベルが存在するということ。表示はされていなくとも、なんとなく皆自分で自分のレベルが分かるはずです。そして相手のレベルも。第三に、この世界は、現実世界(リアル)であり、非現実世界であるということ」


俺の言葉に、納得するような表情で、そして暗い表情で何かを考えこむようにうつむいた。

この世界はゲームの世界そのままだ。

ゲームシステムも存在し、モンスターを倒せばちゃんとアイテムだって散らばる。


「なるほどな。この世界にはいくつか縛りがあるということか。――アウローラ・カオス・オンラインのゲームシステムに逆らうことは出来ない、ということか」

「はい。自由に行動することはできるんですが――多分」


まだ試してないことも多いけど、きっとそうだと思う。

アオイさんは席を立ち上がると、俺の頭をポンポン、と撫でた。


「まぁ、何にせよ君一人で背負い込むことはない。ギルドの仲間も居ることだし、私も居る。存分に頼ればいい」

「――ありがとうございます」


俺は少しだけ俯き加減にお礼を言った。

コレは嘘じゃない。

本当に。アオイさんにも、マサトにも――皆に感謝している。

そうだ。感謝しているんだ。俺は。

ならなんで――こんな、死にそうな顔してるんだ・・・・・・?


「大丈夫か、ソーヤ」


アオイさんの声にハッとなって、俺はガタン、と席を立ちそうになった。


「え、あぁ、大丈夫です。少し、気分が悪くなっただけですから」


俺は苦笑して、席に座り直した。

――依然、俺の顔は死にそうな表情をしている。

必死でソレを隠すようにして、俺は何か話そうと口を開いた時だった。


「――アンタがソーヤ?」


突然名前を呼ばれて、俺は頭上を見上げる。

アオイさんの背後に立って、俺を睨むように見る少女――PCプレイヤーキャラクター

彼女は腰に双剣を装備していた。――双剣士(ツインソード)か。

レベルは――・・・・・・43。


「えぇっと・・・・・・。君は?」

「――本当に憶えてないんだ」


(え?憶えて、ない?)


っていうことは、俺が記憶を失っている三年間の中で出会った人――?

彼女は突然、ブルブルと震えると、目頭に涙を浮かべた。


「ひっくっ・・・・・・」

「え、え、ちょっ・・・・・・!?」


突然のことに俺は驚いて、とりあえず彼女が泣かないように思考を巡らす。


(ど、どうすればっ・・・・・・。あぁぁ、くそっ・・・・・・こういうのは兄貴のほうが向いてるんだよっ・・・・・・)


「と、とりあえず落ち着け――」

「コレが落ち着いてられるかっつぅのぉ!アンタ、アンタぁ・・・・・・」


ポロポロと瞳から雫が零れ落ちていく。

アオイさんが不思議そうにこちらを見ていて、周辺の客も皆視線を向けていた。

・・・・・・正直、今ものすごい恥ずかしい。

近くのガラスを見てみると俺の頬がほんのり赤くなっていた。


「お、なぁに泣いてんだぁ?お前」


ひっく、と、肩に手を添えられ後ろを思いっきり見ると、そこにいたのは酔った男だった。


(酒臭っ!?)


見ると右手に酒が入っているコップを持っていた。

その後ろの席――机の上には幾つもの空になった酒の瓶。

俺は後ろに一歩下がって、酒臭さを避ける。


「せっかくっ・・・・・・。アンタをようやく見つけれたと思ったのにッ・・・・・・。記憶喪失とか意味分かんない!!そ、ソーヤのッ・・・・・・バァァァカァァァァァァっ!!」


――ドガンッ


「ぐっふっ!?」


脇腹に見事に足蹴りがヒットした。

・・・・・・物凄く痛くて涙が出そうになったが、俺は我慢して顔を上げる。


「――本当、ごめん」


彼女はもう涙腺が崩壊しそうなくらいで、うぐっという声が口から漏れた。

謝って、何もならないことはわかりきっている。

けども俺が言えるのは、今の俺が出来ることは謝ることしか無い。

あるいは、俺が出来ることは、現実(リアル)に戻るために情報を集めること。

今は、ソレしか出来ない。


「そんなことより飲めよお前ら!おら!俺がおごってやるからよっ!」

「い、いえ。遠慮する・・・・・・」


ガシッと肩を組んでニヤニヤと笑う男の手にはやはり酒が入ったコップ。

再びアオイさんを横目で見るとアオイさんは俺を見て楽しそうにニコニコ笑っていた。

っていうか、アオイさん助けて下さいよ・・・・・・。


「――そうかぁ。残念だなぁ――。仕方ねぇ。帰るぞぉ」

「え、でもっ・・・・・・」


俺は二人を引きとめようと思って手を伸ばしたけどすぐに人ごみの中に消えてわからなくなってしまった。

何だったんだろう。あのふたり。


「ソーヤ。私は先に帰るぞ?」

「あ、はい」


アオイさんもまた、帰っていった。

俺は一人で席に戻る。

――なんだか、ドッとつかれた気がする。

デルタのこと――みんなのこと。

それにこの世界のこと、そして、自分の三年間の空白の記憶。

現実世界と、非現実世界。

いろんなことを考えなくちゃいけない。

デルタを助けるために動かなくちゃならない。

早く情報を手に入れて、行動しなくちゃいけないはずなのに。

俺はゆっくりと目をとじる。

疲れのせいで、意識は自然と闇に沈んでいった。









「――ソーヤ。本当に記憶失ってたね」


彼女は悲しげに、帰り道を歩きながら呟いた。

現実と切り離された非現実の世界は最早現実とさほど変わらない感覚になってきていた。

――この世界では戦闘は当たり前。魔法も当たり前。PK(プレイヤーキラー)だって当たり前になってきている。

この世界では人は死ねない。死んでも生き返る。――痛みだけを残して。

彼女が言った、ソーヤと呼ばれる懐かしいPCプレイヤーキャラクターを思いおこす。

青年は、三年間の記憶を失いこの世界に再び足を踏み入れていた。

もう、踏み入れるべきではないはずの――この世界に。

キオクを失ったがゆえの行動なのだろうが――・・・・・・。

手のひらを拳にして握り締める。


「悲しいね」

「――あぁ。・・・・・・そういえば『リーダー』が例の奴を捕まえたって言ってたな。――確か。『Δ(デルタ)』つったっけ」

「もう捕まえちゃったんだ。早いねぇやっぱりリーダーは」


――カチャンッ


「そこの二人。止まれ」


背後から冷たいものが当てられる。

ソレは見なくても判る――白銀に輝く拳銃だった。

そしてその拳銃を向けているPCプレイヤーキャラクターは良く知っていた。


「――おいおい。俺達が何したってんだ?」

「とぼけても無駄だ。――一年前のあの事件。貴様らが引き起こしたものだとは当に情報が入っている!!答えろ!私の兄は――何を企んでいる!!」


怒声に耳を塞ぎたくなった。

彼女は怒りに震えているのか、拳銃がカチャカチャと音を鳴らす。


「――そんなもん、自分で考えなさいよ」

「――黙れ」

「恐いねぇ・・・・・・。そんな顔したら、可愛い顔が台無しだぜ?」


――ズドンッ


「っ!?・・・・・・がっ・・・・・・」


――ドンッ


回し蹴りをし、彼女の脇腹にヒットしたケリで彼女は軽く吹き飛び、壁に激突する。

砂煙が上がり、彼女を包む。

ヒュゥッというか細い息が聞こえた瞬間、その砂煙の中で何かがキラッと光った。


「!ヤッベ・・・・・・!」


――ズがァァンッ


「ぐっぅっ!?」

「――【魔弾・光弾】」


金色の光が飛散し、ソレは全て命中した。

吐血し、急いで治療魔法を展開させる、男は歯ぎしりした。


「おい!お前ら何をしている!」

「――チッ・・・・・・。逃げるぞ」


転移アイテム、【転移の巻物】を使い、男と少女は消えた。

――拳銃を握る彼女はもうろうとしながら、近寄る人物を見た。


「大丈夫か!?」

「――っ」

「動くな。今知り合いの医療術士(ヒールマスター)を呼ぶ」


遠くの相手とコンタクトするために使うアイテム、【携帯電話】を使い、誰かと会話をする男らしき人物。

しばらくして、違う男が近寄ってきた。

直ぐにスキルを発動し、桃色の粒子がふわりと飛散し、傷を癒していく。


「――貴方は?」


恐る恐る、彼女は男に聞いた。

男は――何も映さない表情で、名前を伝えるために口を開いた。


「――ギルド【愚者達の宴会(フールパーティ)】メンバー、ミナトだ」

最近文が短いのは時間が若干足りないのと、グダグダなのは自分の力不足です・・・・・・。

もっと勉強をしなければ・・・・・・。

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