南の滅亡3
「ごめんくださいっ!」
城門の扉を吹き飛ばした。
「明、返事待つ気ないのに聞いてどうするのよ?」
「……様式?」
美咲の疑問に百枝が答える。
「なぜ疑問系? っていうか、俺何でここまできたんだ…様式」
「ついさっきも言ったでしょ」
柚木は非戦闘員だ。
なぜここにいるかと言われたら、運がなかったと答えるしかないだろう。
「でも、愛しの彼女のもとに戻るわけにもいかないでしょ」
「そうだけどよ……」
決心は当然つかないだろうから、押し進めることにする。
「さて、こんなところに突っ立っていても狙われるだけよ。明、百枝、柚木はお姫様の救出よ。他は私と来なさい」
それから
「借りるわよ。天狼王」
美咲の、何を? という疑問には答えない。
現れたの白銀の狼。
渚が人の姿をとり、狼の頭を撫でる。
「そうかそうか、天月か、よい名をもらったのう」
「そんなおもしろいものの話は聞いてませんよ?」
「面倒だから知らせなかったのよ!」
明を美咲が警戒する。
「力量を見誤れば死ぬぞ」
「好奇心は人を殺しますからね」
渚も千花もそれぞれ忠告する。
まあ、主に明の心配より今起きている方に集中しろという意味での忠告なのだが。
「分かってますよ」
これで聞くなら世話はないわけであるが、今回は事の重大さもあってか素直に従った。
「逆にこれはこれで気持ち悪いな……」
皆の心を代弁する柚木。
ま、馬鹿だ。
「うぎゃ!」
明の拳骨を食らう。
「痛いな! 手加減しろよ!!」
「手加減してなかったら死んでるわよ。正門吹き飛ばしたとき見てたでしょ?」
そういえば、と顔が少し青ざめたように見えた。
何で、忘れられるのかが不思議だ。
……頭、壊れてるのかしらね?
「今、誰かになんかものすごく馬鹿にされたような気がするんだが」
「全員からなので何も問題ないですよ」
「そうかそうか……ってなるわけねえだろ! 明!」