覚醒の時1
チート開放です
ご注意ください
自分の中で多くのものが目覚めた。
「麻奈花も人のことを気にしすぎなのよ」
過去も、現在も……もしかしたら、未来もかもしれない。
「あ、あの? 浅葱さん?」
心配そうに声をかけてくる千花。
「違うわよ、私は青よ。……いつまで、そのままのつもり? 起きなさい、ナギサ。いえ、ミギワ」
力が大きすぎるが故に仮初めの名を持つ者。
「相変わらず、ずいぶん荒っぽいのう」
現れたのは青一色のドレスを身にまとった女の子。
「時間がないわ」
「分かっておるよ」
「『解け 天ノ鳴弓』」
「まったく、神使いの荒い奴よの」
それには矢はない。
それは形作るもの。
それは今の心の形。
『轟け これは神のごとき怒り也』
知っている。
『貫け これは神のごとき叫び也』
自分のことを。
『天を穿つその矢を』
私は、俺で、僕で、我で……
『ともたる私はここに放つ』
神とともに歩むものなのだ。
放物線を描くことなく一直線に飛び去る矢。
その放たれた矢は、自分の目でとらえられることはできないが私は知っている。
これは、必ず届く、と。
矢が飛んで行ったであろう先では爆音が轟き、そこを中心に辺りは光に覆いつくされる。
例え、どんなに遠く深く離れていようと。
例え、どんなに堅固なところにいようと。
光に触れた魔物から消失していく。
しかし、それが人を害することはない。
しかし、それが大地を焼くことはない。
「翼出てますよ」
戻ってきた力が抑えきれてないのだ。
「牙狼……すまないな」
「いえ、大丈夫です。あれがししょ……いえ、父上ですね?」
天ノ鳴弓、それは人の形をした神器であった。
「私が目覚めると直前に返しに来ていたのだな」
記憶を失って倒れていたあの日。
「心配性すぎるのですよ……さよならも言わせてくれないのですか……」
未だ整理のつかない記憶の中にも今悲しむだけのものは存在する。
「ここは任せます」
翼を広げる、今の私は、渚の力を使うことができる。
この時、私の不注意であるが、校舎に残るものに見られており、後にこれは天使降臨と呼ばれるものとなる。
まあ、それはまた別の話。
「そして、恐らく、あなた達も会えないのでしょうね」
神器となった者たちを思う。
「『降魔の柄』」
紅く彩られた柄。
「『切り裂く刃は劫火のごとく天を焦がす』」
涙が零れる。
「『纏え』」
だが、止まらない、それは神器に人格を与えた、私の罪の贖罪だから。
「『ともたる私は至高の刃を求む』」
だが、止まれない、それは自分を守ってくれた、彼らへの冒涜だから。
薙ぐ
ただそれだけ。
ただそれだけで、魔物は地に伏し、塵に還る。
そう、彼らにも謝らなければならないのだろう。
「あまり深刻に考えるものではないぞ」
「わかっている」
「わかっておらぬから、そなたは泣いておるのじゃろう?」
歯を食いしばって、命を刈り取る。
「美咲、起きなさい。柚木も」
「お前誰だ? こんなきれいな奴に名前覚えられるようなことした覚えねえぞ……あ、これは夢か……翼? 天使か死んだのか?」
美咲が少し顔を上げる。
「ずいぶんと様変わりしたわね、翔。そっちは、あの剣ね?」
「え? え? ちょっと待って、俺置いてけぼり! こいつ、あれか? あれなのか? ……変態め!」
「髪をほどいただけよ。大して変ってはいないわ」
ホントは知っている。
とても大きく変わっているということを。
読んでいただきありがとうございます
そろそろ着地地点を模索中です。
残念なことにならないように善処いたしますのでもうしばらく拙作におつきあいください。